[O-NV-08-4] 筋ジストロフィーの臨床試験におけるアウトカムメジャー研究
~1)評価手順書の作成と評価者研修の実施~
キーワード:筋ジストロフィー, 運動機能評価, 研修
【はじめに,目的】
筋ジストロフィーは,筋萎縮と筋力低下が進行する遺伝性疾患で,近年は小児期に発症するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象にエクソンスキップ,リードスルーなどの新しい治療が開発され,その安全性,有効性を検証する臨床試験が行われている。筋ジストロフィーの臨床試験では,目的とする治療の結果を示す手段(アウトカムメジャー)として,理学療法士による運動機能評価が重要である。現状では6分間歩行が用いられることが多いが,治療効果を反映する鋭敏な指標かは疑問である。そこで我々は,筋ジストロフィーの臨床試験において6分間歩行に代わり信頼性,妥当性の高いアウトカムメジャーを作成する多施設共同研究を計画した。本演題では,研究実施にあたり,選定した運動機能評価の手技の統一を目的に,評価手順書の作成と評価者研修を実施した内容を発表する。
【方法】
本研究の対象は,自力で床からの立ち上がりおよび歩行が可能な6歳以上12歳未満のDMD男児とし,過去の文献のレビューを行い,多施設で実施可能な客観的な指標として6分間歩行以外に,床からの立ち上がり,Timed Up & Goテスト(TUG),10m走行/歩行,2分間歩行,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた定量的筋力評価(股関節伸展・屈曲,膝関節伸展・屈曲,足関節背屈・底屈)を選定した。各項目の測定手技や順序を定めた評価手順書を作成し,手技の習得のための評価者研修を実施した。
【結果】
評価手順書は,検査の目的,注意点,検査環境,実施要員,測定手技について,写真入りで詳細に作成した。実際の臨床試験の経験を踏まえ,疲労,集中力低下などの交絡因子の影響を減らすため,本研究は評価を午前午後に分けて実施することとした。対象をランダムに2群に分け,まずA群は6分間歩行,B群は2分間歩行,その後床からの立ち上がり,TUG,10m走行/歩行を行う。十分な休憩をとり,A群は2分間歩行,B群は6分間歩行,その後定量的筋力評価の順とし,評価は1時間程度で実施できるよう工夫した。手順書の方法は,別研究で評価者間信頼性の検討を行い,1項目を除き高い信頼性を得た。以上を踏まえ,2015年5月に評価者研修を開催し,14施設21名の理学療法士,医師が参加した。評価手順書の各項目を解説し,4名ずつのグループで模擬患者に手技を実施,習得した。参加者の手技はチェックリストで細かく確認し,手順書通りの評価が可能な評価者を試験で認定した。
【結論】
筋ジストロフィーの臨床試験では,多施設で運動機能評価の手技の統一をはかるために詳細な評価手順書が必要であり,評価者研修で実際に手技を確認し習熟することは,評価の質を高める。現在,上述の運動機能評価を被験者が日をあけて2回行い,再テスト信頼性,併存的妥当性,臨床的に有意な最小変化量(MCID)を求め,筋ジストロフィーの臨床試験において適切なアウトカムメジャーを探る研究を実施中である。
筋ジストロフィーは,筋萎縮と筋力低下が進行する遺伝性疾患で,近年は小児期に発症するデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象にエクソンスキップ,リードスルーなどの新しい治療が開発され,その安全性,有効性を検証する臨床試験が行われている。筋ジストロフィーの臨床試験では,目的とする治療の結果を示す手段(アウトカムメジャー)として,理学療法士による運動機能評価が重要である。現状では6分間歩行が用いられることが多いが,治療効果を反映する鋭敏な指標かは疑問である。そこで我々は,筋ジストロフィーの臨床試験において6分間歩行に代わり信頼性,妥当性の高いアウトカムメジャーを作成する多施設共同研究を計画した。本演題では,研究実施にあたり,選定した運動機能評価の手技の統一を目的に,評価手順書の作成と評価者研修を実施した内容を発表する。
【方法】
本研究の対象は,自力で床からの立ち上がりおよび歩行が可能な6歳以上12歳未満のDMD男児とし,過去の文献のレビューを行い,多施設で実施可能な客観的な指標として6分間歩行以外に,床からの立ち上がり,Timed Up & Goテスト(TUG),10m走行/歩行,2分間歩行,ハンドヘルドダイナモメーターを用いた定量的筋力評価(股関節伸展・屈曲,膝関節伸展・屈曲,足関節背屈・底屈)を選定した。各項目の測定手技や順序を定めた評価手順書を作成し,手技の習得のための評価者研修を実施した。
【結果】
評価手順書は,検査の目的,注意点,検査環境,実施要員,測定手技について,写真入りで詳細に作成した。実際の臨床試験の経験を踏まえ,疲労,集中力低下などの交絡因子の影響を減らすため,本研究は評価を午前午後に分けて実施することとした。対象をランダムに2群に分け,まずA群は6分間歩行,B群は2分間歩行,その後床からの立ち上がり,TUG,10m走行/歩行を行う。十分な休憩をとり,A群は2分間歩行,B群は6分間歩行,その後定量的筋力評価の順とし,評価は1時間程度で実施できるよう工夫した。手順書の方法は,別研究で評価者間信頼性の検討を行い,1項目を除き高い信頼性を得た。以上を踏まえ,2015年5月に評価者研修を開催し,14施設21名の理学療法士,医師が参加した。評価手順書の各項目を解説し,4名ずつのグループで模擬患者に手技を実施,習得した。参加者の手技はチェックリストで細かく確認し,手順書通りの評価が可能な評価者を試験で認定した。
【結論】
筋ジストロフィーの臨床試験では,多施設で運動機能評価の手技の統一をはかるために詳細な評価手順書が必要であり,評価者研修で実際に手技を確認し習熟することは,評価の質を高める。現在,上述の運動機能評価を被験者が日をあけて2回行い,再テスト信頼性,併存的妥当性,臨床的に有意な最小変化量(MCID)を求め,筋ジストロフィーの臨床試験において適切なアウトカムメジャーを探る研究を実施中である。