[O-NV-08-6] 神経疾患患者に対するバランス評価指標の検討
キーワード:バランス評価指標, 絶対信頼性, 歩行能力
【はじめに,目的】
神経疾患患者は神経系の病変に起因する種々の機能障害によりバランス能力の低下をきたしやすい。そのため,多くのバランス評価指標がバランス能力の評価に用いられている。しかし評価指標の,神経疾患患者に対する尺度特性は明らかでないものもある。本研究では,3つのバランス評価指標について,絶対信頼性および歩行能力との対応の観点から検討することを目的とした。
【方法】
神経難病を主体とする神経疾患患者51名(パーキンソン病31名,パーキンソン病以外のパーキンソニズム5名,多発性硬化症4名,その他11名)を対象に,functional reach test(FRT),最速でのtimed up and go test(TUG),姿勢安定度評価指標(IPS)の測定を2回ずつ行った。絶対信頼性は,Blant-Altman分析および最小可検変化量(MDC)を用いて検討した。また,functional ambulation category(FAC)による歩行能力と各バランス評価指標との関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
FRTの平均値は1回目:23.9±7.2 cm,2回目:24.4±6.9 cm,TUGの平均値は1回目:10.4±3.8 s,2回目:9.4±3.8 s,IPSの平均値は1回目:1.37±0.38,2回目:1.36±0.38で,TUGにおいて1回目と2回目の測定値の間に有意差を認めた(p<0.01)が,FRTとIPSには有意差が認められなかった。Blant-Altman分析おいて,TUGに固定誤差と比例誤差が認められた。MDCは,FRT:6.6 cm,TUG:4.0 s,IPS:0.34であった。FACによる歩行レベルとのSpearmanの相関係数は,FRT:0.52(p<0.01),TUG:-0.75(p<0.01),IPS:0.55(p<0.01)でいずれも有意な関連性を認めたが,TUGとの関連性が最も強かった。
【結論】
FRTとIPSは固定誤差や比例誤差がなく,絶対信頼性の高い評価指標といえる。最速でのTUGには固定誤差と比例誤差が認められ,1回目より2回目の課題の遂行時間が短くなる傾向があること,測定時間の長い領域で信頼性が低くなる傾向が示された。2回目の遂行時間が短縮するのは学習効果などの影響が考えられる。TUGにおいては,測定回数や代表値の設定,課題の遂行時間が長い場合の結果の解釈に注意が必要である。FACに基づく歩行レベルとの関連性はTUGが最も強かった。これは課題の類似性による思われる。FRTとIPSは重心移動レベルのバランス能力を反映する評価指標である。歩行のようなより動的な動作には,予測的に姿勢を調節したり,支持面を準備したりする能力が要求されるので,FRTやIPSではそれらの影響がとらえきれず,関連性が低くなったものと考えられる。
神経疾患患者は神経系の病変に起因する種々の機能障害によりバランス能力の低下をきたしやすい。そのため,多くのバランス評価指標がバランス能力の評価に用いられている。しかし評価指標の,神経疾患患者に対する尺度特性は明らかでないものもある。本研究では,3つのバランス評価指標について,絶対信頼性および歩行能力との対応の観点から検討することを目的とした。
【方法】
神経難病を主体とする神経疾患患者51名(パーキンソン病31名,パーキンソン病以外のパーキンソニズム5名,多発性硬化症4名,その他11名)を対象に,functional reach test(FRT),最速でのtimed up and go test(TUG),姿勢安定度評価指標(IPS)の測定を2回ずつ行った。絶対信頼性は,Blant-Altman分析および最小可検変化量(MDC)を用いて検討した。また,functional ambulation category(FAC)による歩行能力と各バランス評価指標との関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
FRTの平均値は1回目:23.9±7.2 cm,2回目:24.4±6.9 cm,TUGの平均値は1回目:10.4±3.8 s,2回目:9.4±3.8 s,IPSの平均値は1回目:1.37±0.38,2回目:1.36±0.38で,TUGにおいて1回目と2回目の測定値の間に有意差を認めた(p<0.01)が,FRTとIPSには有意差が認められなかった。Blant-Altman分析おいて,TUGに固定誤差と比例誤差が認められた。MDCは,FRT:6.6 cm,TUG:4.0 s,IPS:0.34であった。FACによる歩行レベルとのSpearmanの相関係数は,FRT:0.52(p<0.01),TUG:-0.75(p<0.01),IPS:0.55(p<0.01)でいずれも有意な関連性を認めたが,TUGとの関連性が最も強かった。
【結論】
FRTとIPSは固定誤差や比例誤差がなく,絶対信頼性の高い評価指標といえる。最速でのTUGには固定誤差と比例誤差が認められ,1回目より2回目の課題の遂行時間が短くなる傾向があること,測定時間の長い領域で信頼性が低くなる傾向が示された。2回目の遂行時間が短縮するのは学習効果などの影響が考えられる。TUGにおいては,測定回数や代表値の設定,課題の遂行時間が長い場合の結果の解釈に注意が必要である。FACに基づく歩行レベルとの関連性はTUGが最も強かった。これは課題の類似性による思われる。FRTとIPSは重心移動レベルのバランス能力を反映する評価指標である。歩行のようなより動的な動作には,予測的に姿勢を調節したり,支持面を準備したりする能力が要求されるので,FRTやIPSではそれらの影響がとらえきれず,関連性が低くなったものと考えられる。