[O-NV-09-1] 脳卒中者における二次課題の難易度と異なる指示がDual Taskの成績に及ぼす影響
年齢をマッチングした健常者との比較
キーワード:二重課題, 脳卒中, 歩行
【はじめに,目的】
Dual task(DT)においてどちらの課題を優先させるかといった戦略は,DTを転倒予測等に用いる際に重要である。パーキンソン病患者はposture second strategyを用いることが報告されているが,脳卒中者では明らかではない。本研究は脳卒中者,健常者を対象に二次課題の難易度と異なる指示がDTに及ぼす影響を分析する。
【方法】
対象は脳卒中者26名と年齢をマッチングした健常者26名とした。一次課題はTimed Up & Go Test(TUG),二次課題は安静座位にて30秒間,90から100の間の数字から3または7ずつ引く減算課題(serial 3's:S3,serial 7's:S7)とした。DTは減算課題を行いながらのTUGとし,2種類の減算課題の難易度(S3,S7)および2種類の課題の優先順位づけの指示(「歩行と減算課題の両方ともに集中して下さい」(no priority:NP),「主に減算課題に集中して下さい」(cognitive priority:CP))を合わせた4条件,DT3N(S3,NP),DT3C(S3,CP),DT7N(S7,NP),DT7C(S7,CP)で実施した。TUGは時間を,減算課題は1秒当たりの正答数を採用した。さらにDT試行時の自覚的な注意配分を0から10の11段階の多段階評価尺度にて測定した。また,DTの課題の難易度の違いによる変化率を100×(S7-S3)/S3,指示の違いによる変化率を100×(CP-NP)/NPとして算出した。統計処理は脳卒中者と健常者の群間比較にMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
脳卒中者は男性18名,女性8名,年齢は69.2±12.0歳,罹患期間は2098.1±1909.5日,健常者は男性8名,女性18名,年齢は69.2±12.3歳であった。TUG(秒)は脳卒中者,健常者にてそれぞれST(single task)で17.6±7.6,9.1±1.5,DT3Nで20.8±10.0,11.0±3.2,DT3Cで21.6±10.7,11.0±3.0,DT7Nで22.7±11.2,11.1±2.8,DT7Cで23.7±12.5,12.0±4.6ですべての条件で群間に有意差を認めた(p<0.001)。正答数(回/秒)はS3のSTで0.33±0.15,0.44±0.18,DT3Nで0.30±0.20,0.42±0.23,DT3Cで0.27±0.18,0.43±0.19,S7のSTで0.17±0.12,0.23±0.15,DT7Nで0.15±0.11,0.29±0.17,DT7Cで0.15±0.11,0.23±0.18でS7のSTとDT7C以外で群間に有意差を認めた(p<0.05)。注意配分はいずれの条件も群間に有意差を認めなかった。TUGの変化率(%)は脳卒中者,健常者にてそれぞれDT3N-7N間では10.1±11.6,1.8±10.4(p<0.001),DT3N-3C間では2.7±6.8,0.8±7.8(p<0.05)で群間に有意差を認め,DT3C-7C間では10.1±17.0,7.7±15.2,DT7N-7C間では3.8±10.7,7.1±17.2で有意差を認めなかった。
【結論】
脳卒中者,健常者ともに二次課題の難易度が上がった場合,二次課題に注意するように指示した場合に,TUGの時間が増加する傾向にあったが,群間比較にて有意差を認めたことから,脳卒中者においてより歩行の安定性を優先するposture first strategyを用いる傾向が強いことが示唆された。一方両群ともにposture second strategyは認められなかった。ただし,脳卒中者の維持期の方が多かったことは本研究の限界である。
Dual task(DT)においてどちらの課題を優先させるかといった戦略は,DTを転倒予測等に用いる際に重要である。パーキンソン病患者はposture second strategyを用いることが報告されているが,脳卒中者では明らかではない。本研究は脳卒中者,健常者を対象に二次課題の難易度と異なる指示がDTに及ぼす影響を分析する。
【方法】
対象は脳卒中者26名と年齢をマッチングした健常者26名とした。一次課題はTimed Up & Go Test(TUG),二次課題は安静座位にて30秒間,90から100の間の数字から3または7ずつ引く減算課題(serial 3's:S3,serial 7's:S7)とした。DTは減算課題を行いながらのTUGとし,2種類の減算課題の難易度(S3,S7)および2種類の課題の優先順位づけの指示(「歩行と減算課題の両方ともに集中して下さい」(no priority:NP),「主に減算課題に集中して下さい」(cognitive priority:CP))を合わせた4条件,DT3N(S3,NP),DT3C(S3,CP),DT7N(S7,NP),DT7C(S7,CP)で実施した。TUGは時間を,減算課題は1秒当たりの正答数を採用した。さらにDT試行時の自覚的な注意配分を0から10の11段階の多段階評価尺度にて測定した。また,DTの課題の難易度の違いによる変化率を100×(S7-S3)/S3,指示の違いによる変化率を100×(CP-NP)/NPとして算出した。統計処理は脳卒中者と健常者の群間比較にMann-WhitneyのU検定を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
脳卒中者は男性18名,女性8名,年齢は69.2±12.0歳,罹患期間は2098.1±1909.5日,健常者は男性8名,女性18名,年齢は69.2±12.3歳であった。TUG(秒)は脳卒中者,健常者にてそれぞれST(single task)で17.6±7.6,9.1±1.5,DT3Nで20.8±10.0,11.0±3.2,DT3Cで21.6±10.7,11.0±3.0,DT7Nで22.7±11.2,11.1±2.8,DT7Cで23.7±12.5,12.0±4.6ですべての条件で群間に有意差を認めた(p<0.001)。正答数(回/秒)はS3のSTで0.33±0.15,0.44±0.18,DT3Nで0.30±0.20,0.42±0.23,DT3Cで0.27±0.18,0.43±0.19,S7のSTで0.17±0.12,0.23±0.15,DT7Nで0.15±0.11,0.29±0.17,DT7Cで0.15±0.11,0.23±0.18でS7のSTとDT7C以外で群間に有意差を認めた(p<0.05)。注意配分はいずれの条件も群間に有意差を認めなかった。TUGの変化率(%)は脳卒中者,健常者にてそれぞれDT3N-7N間では10.1±11.6,1.8±10.4(p<0.001),DT3N-3C間では2.7±6.8,0.8±7.8(p<0.05)で群間に有意差を認め,DT3C-7C間では10.1±17.0,7.7±15.2,DT7N-7C間では3.8±10.7,7.1±17.2で有意差を認めなかった。
【結論】
脳卒中者,健常者ともに二次課題の難易度が上がった場合,二次課題に注意するように指示した場合に,TUGの時間が増加する傾向にあったが,群間比較にて有意差を認めたことから,脳卒中者においてより歩行の安定性を優先するposture first strategyを用いる傾向が強いことが示唆された。一方両群ともにposture second strategyは認められなかった。ただし,脳卒中者の維持期の方が多かったことは本研究の限界である。