第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)09

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:高村浩司(健康科学大学 理学療法学科)

[O-NV-09-2] 下肢中等度麻痺を有する脳卒中患者の歩容に影響する要因について

奈川英美1,2, 対馬栄輝2, 石田水里3, 上川香織4, 原子由1, 岩田学1 (1.弘前脳卒中・リハビリテーションセンター, 2.弘前大学大学院保健学研究科, 3.鳴海病院リハビリテーション部, 4.弘前市立病院リハビリテーション科)

Keywords:脳卒中患者, 歩行観察, 歩容

【はじめに,目的】

脳卒中片麻痺患者(脳卒中患者)における歩容の逸脱の程度は10m歩行時間,バランス,麻痺側下肢への荷重量,足関節底屈筋の痙性,下肢麻痺の程度が影響する(奈川ら,2014)。中でも特に,下肢に比較的重度の麻痺を有する脳卒中患者では歩容の逸脱の程度が大きいと考えるが,逸脱の程度と歩行能力や身体機能との関連は異なる可能性がある。今回,歩行可能な症例のうちでも下肢の麻痺が比較的重度と考える下肢ブルンストロームステージ(下肢Br.S)がIIIである脳卒中患者の歩容に影響する身体機能を検討した。


【方法】

対象は回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中患者17名(男性12名,平均年齢62.4歳,発症からの平均経過期間119.2日)とした。下肢Br.SIIIで,初発もしくは陳旧性の脳梗塞(または脳出血)を有するが無症候の脳卒中患者,装具・補助具使用を問わず近位監視~自立で20m以上歩行可能な者,かつ歩行に影響する他の神経・運動器疾患,疼痛を有さない者を対象とした。測定項目は,下肢感覚障害の有無,下肢Modified Modified Ashworth Scale(MMAS),Berg Balance Scale(BBS),下肢荷重量,下肢筋力,10m歩行時間,歩容とした。下肢感覚障害は,麻痺側足底の表在感覚と,麻痺側下肢各関節の深部感覚を測定した。下肢MMASは,麻痺側股関節屈曲筋・伸展筋・内転筋,膝関節屈曲筋・伸展筋,足関節底屈筋を測定した。下肢荷重量は,立位で左右下肢への最大荷重量を計測し体重で除した。10m歩行時間は,16m歩行路を最大歩行速度で歩行させ中間10mの歩行時間を計測した。下肢筋力は,麻痺側股関節屈曲筋・伸展筋・外転筋,膝関節伸展筋,足関節底屈筋に関して徒手筋力測定で3以上か否かを記録した。歩容の評価は,歩容評価表を用いた。日常生活あるいは歩行練習時に使用する装具・補助具を使用させ,10m歩行路を1往復させた。中間5mで矢状面・前額面から歩行を撮影した。検査者1名が歩行映像を観察し,事前に信頼性を確認している歩容評価表(奈川ら,2015)を用いて評価した。歩容評価表は25項目で構成され,合計点は25~72点となり,点数が高い程正常からの逸脱が多いと判断できる。統計的解析は,歩容評価表合計点を従属変数,その他の測定項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った。


【結果】

対象者の歩容評価表合計点は平均46.3±7.3点であり,10m歩行時間は26.9±10.9秒であった。重回帰分析の結果,10m歩行時間(標準偏回帰係数b=0.97),非麻痺側下肢荷重量(b=0.46),足関節の深部覚障害(b=0.39)が選択された(p<0.05)。


【結論】

下肢Br.SIIIの脳卒中患者では,歩容の逸脱は歩行速度低下を反映し,非麻痺側下肢荷重がより多く可能で,下肢深部覚障害を有する患者ほど,歩容の逸脱の程度は多いことが明らかとなった。