[O-NV-09-3] 脳卒中専門病院における褥瘡対策の実態調査
―理学療法士の褥瘡対策への関わり方の検討―
キーワード:脳卒中専門病院, 褥瘡対策, 理学療法士
【はじめに,目的】
褥瘡対策は,医療の質保証の指標の1つとして位置づけられている。そのため,理学療法士も医療スタッフの一員として取り組むべき課題と考えられる。しかし,尾崎らのリハビリテーションスタッフを対象にした褥瘡に関する評価スケールの理解度調査では,その理解度は低いことが判明している。このことは,理学療法士の褥瘡への関心が薄いことを表すものである。そこで,今回脳卒中専門病院である当センターで計画された褥瘡対策の内容を調査し,理学療法士の関わり方の一助とすることを目的として検討を行った。
【方法】
対象は,平成25年4月1日から平成26年3月31日までに当センター回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)に入棟し,入棟時の「褥瘡対策に関する看護計画書」(以下,計画書)が確認できた脳血管障害患者126名(男性76名,女性50名。平均年齢68.0±11.6歳)とした。調査項目は,計画書に記載されたベッド,車イスでの褥瘡対策の内容,危険因子の有無(①ベッド上での自力体位変換,②イス上での姿勢保持•除圧,③病的骨突出,④関節拘縮,⑤栄養状態低下,⑥皮膚湿潤,⑦浮腫),同時期に評価されたFunctional Independence Measure(以下,FIM)とした。検討は,ベッドまたは車イスでの褥瘡対策の有無を従属変数,年齢,FIM運動項目合計得点(以下,FIM-m),FIM認知項目合計得点(以下,FIM-c),前述の7種の危険因子の有無を独立変数としたロジスティック回帰分析で行った。なお,車イスでの対策は,除圧クッションの使用は一般的であるため,それ以外の対策を計画したものを集計した。独立変数の年齢,FIM-m,FIM-cは,対象群の中央値以上を「0」,中央値未満を「1」と代入した。各危険因子の有無は,無しは「0」,有りは「1」とした。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
ベッドでの褥瘡対策が計画されたものは84名(66.7%),除圧クッション以外の車イスでの対策を計画されたものは74名(58.7%)であった。褥瘡対策の立案に関連する因子の検討では,ベッドでの対策には,ベッド上での自力体位変換(OR=11.9),イス上での姿勢保持•除圧(OR=5.96),皮膚湿潤(OR=5.14)が選択された。車イスでの対策では,イス上での姿勢保持•除圧(OR=6.96),皮膚湿潤(OR=5.65)が選択された。
【結論】
本調査の結果から,回復期病棟での褥瘡対策を立案に関連する因子は,対策を施す姿勢での動作能力と皮膚湿潤の有無であった。動作能力が選択された要因は,脳卒中の発症により,運動麻痺を呈することで動作能力が低下したことが関与している。皮膚湿潤については,多汗,尿・便失禁などが関与し,特に脳卒中では尿失禁の頻度が高いとされる。そのため,急性期治療の時点から,起居動作や座位バランス能力を向上させ,排泄動作の獲得に向けたADL練習を実施することで褥瘡対策の立案数減少に繋がる可能性が示唆された。
褥瘡対策は,医療の質保証の指標の1つとして位置づけられている。そのため,理学療法士も医療スタッフの一員として取り組むべき課題と考えられる。しかし,尾崎らのリハビリテーションスタッフを対象にした褥瘡に関する評価スケールの理解度調査では,その理解度は低いことが判明している。このことは,理学療法士の褥瘡への関心が薄いことを表すものである。そこで,今回脳卒中専門病院である当センターで計画された褥瘡対策の内容を調査し,理学療法士の関わり方の一助とすることを目的として検討を行った。
【方法】
対象は,平成25年4月1日から平成26年3月31日までに当センター回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)に入棟し,入棟時の「褥瘡対策に関する看護計画書」(以下,計画書)が確認できた脳血管障害患者126名(男性76名,女性50名。平均年齢68.0±11.6歳)とした。調査項目は,計画書に記載されたベッド,車イスでの褥瘡対策の内容,危険因子の有無(①ベッド上での自力体位変換,②イス上での姿勢保持•除圧,③病的骨突出,④関節拘縮,⑤栄養状態低下,⑥皮膚湿潤,⑦浮腫),同時期に評価されたFunctional Independence Measure(以下,FIM)とした。検討は,ベッドまたは車イスでの褥瘡対策の有無を従属変数,年齢,FIM運動項目合計得点(以下,FIM-m),FIM認知項目合計得点(以下,FIM-c),前述の7種の危険因子の有無を独立変数としたロジスティック回帰分析で行った。なお,車イスでの対策は,除圧クッションの使用は一般的であるため,それ以外の対策を計画したものを集計した。独立変数の年齢,FIM-m,FIM-cは,対象群の中央値以上を「0」,中央値未満を「1」と代入した。各危険因子の有無は,無しは「0」,有りは「1」とした。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
ベッドでの褥瘡対策が計画されたものは84名(66.7%),除圧クッション以外の車イスでの対策を計画されたものは74名(58.7%)であった。褥瘡対策の立案に関連する因子の検討では,ベッドでの対策には,ベッド上での自力体位変換(OR=11.9),イス上での姿勢保持•除圧(OR=5.96),皮膚湿潤(OR=5.14)が選択された。車イスでの対策では,イス上での姿勢保持•除圧(OR=6.96),皮膚湿潤(OR=5.65)が選択された。
【結論】
本調査の結果から,回復期病棟での褥瘡対策を立案に関連する因子は,対策を施す姿勢での動作能力と皮膚湿潤の有無であった。動作能力が選択された要因は,脳卒中の発症により,運動麻痺を呈することで動作能力が低下したことが関与している。皮膚湿潤については,多汗,尿・便失禁などが関与し,特に脳卒中では尿失禁の頻度が高いとされる。そのため,急性期治療の時点から,起居動作や座位バランス能力を向上させ,排泄動作の獲得に向けたADL練習を実施することで褥瘡対策の立案数減少に繋がる可能性が示唆された。