[O-NV-09-6] 在宅脳卒中者における生活空間に関連する因子
―Life Space Assessmentにおける活動範囲別検討―
キーワード:生活空間, 脳卒中, 活動範囲
【はじめに,目的】
退院後の脳卒中者では,経時的に日常生活動作(ADL)能力の低下を引き起こす可能性が高いことがこれまでに報告されている。近年,在宅脳卒中者のADL能力低下を予防する因子として,身体活動量が挙げられている。この身体活動量の評価指標としてLife Space Assessment(LSA)がある。LSAは,身体活動量を生活空間といった概念で捉え,活動範囲(住居内,自宅周囲,近隣,町内,町外),活動頻度,自立度によって得点化するものである。これまで,在宅脳卒中者を対象にLSA総得点に関連する因子として移動能力,心理的因子などが報告されている。しかしながら,生活空間に関連する因子は,活動範囲毎で異なることが推察される。そこで,本研究の目的は,在宅脳卒中者の生活空間に関連する因子を活動範囲別に検討することとした。
【方法】
対象は,当院外来リハビリテーションに通う在宅脳卒中者の内,杖や装具の使用は問わず歩行が自立または監視により可能な43名とした(65.7±8.4歳,男性29名・女性14名)。調査項目は,LSA各活動範囲得点(住居内,自宅周囲,近隣,町内,町外),日本語版Euro-QOL(EQ)の効用値及びVisual Analog Scale(VAS),Modified Fall Efficacy Scale(MFES),Lubben Social Network Scale-6,Barthel Index(BI),老研式活動能力指標(老研式),快適歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),Functional Reach Test(FRT),30秒間立ち上がりテスト(CS30)とした。統計学的解析は,LSAの各活動範囲得点とその他の調査項目の関連性を検討するため,Spearmanの順位相関係数を算出した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
住居内の得点は,快適歩行速度,TUGと有意な中等度の相関(r=0.4~0.7),MFES,BIと有意な弱い相関(r=0.2~0.4)を認めた。自宅周囲の得点は,MFES,老研式,快適歩行速度,TUG,FRTと有意な中等度の相関(r=0.4~0.7),BI,CS30と有意な弱い相関(r=0.2~0.4)を認めた。近隣の得点は,EQのVAS,MFES,BI,老研式,快適歩行速度,TUG,FRT,CS30と有意な中等度の相関(r=0.4~0.7)を認めた。町内・町外の得点と各調査項目との間には有意な相関はなかった。
【結論】
本研究結果より,住居内の得点は,特に歩行能力が関連しており,自宅周囲・近隣の得点は,歩行能力に加え,転倒恐怖感や地域における活動能力が関連していることが示唆された。しかし,町内・町外の得点は,各調査項目との間に相関を認めず,歩行能力・転倒恐怖感・地域における活動能力等の対象者個人の能力や心理面の関連は少ないことが考えられた。また,本研究の対象者が居住する地域では,長距離移動の際に,公共交通機関よりも自動車を利用することが多く,地域性も関与していることが推察された。本研究結果は,生活空間を活動範囲別に捉えることの重要性を示唆すると共に,生活空間拡大を図る上で考慮すべき情報であると考えられる。
退院後の脳卒中者では,経時的に日常生活動作(ADL)能力の低下を引き起こす可能性が高いことがこれまでに報告されている。近年,在宅脳卒中者のADL能力低下を予防する因子として,身体活動量が挙げられている。この身体活動量の評価指標としてLife Space Assessment(LSA)がある。LSAは,身体活動量を生活空間といった概念で捉え,活動範囲(住居内,自宅周囲,近隣,町内,町外),活動頻度,自立度によって得点化するものである。これまで,在宅脳卒中者を対象にLSA総得点に関連する因子として移動能力,心理的因子などが報告されている。しかしながら,生活空間に関連する因子は,活動範囲毎で異なることが推察される。そこで,本研究の目的は,在宅脳卒中者の生活空間に関連する因子を活動範囲別に検討することとした。
【方法】
対象は,当院外来リハビリテーションに通う在宅脳卒中者の内,杖や装具の使用は問わず歩行が自立または監視により可能な43名とした(65.7±8.4歳,男性29名・女性14名)。調査項目は,LSA各活動範囲得点(住居内,自宅周囲,近隣,町内,町外),日本語版Euro-QOL(EQ)の効用値及びVisual Analog Scale(VAS),Modified Fall Efficacy Scale(MFES),Lubben Social Network Scale-6,Barthel Index(BI),老研式活動能力指標(老研式),快適歩行速度,Timed Up and Go Test(TUG),Functional Reach Test(FRT),30秒間立ち上がりテスト(CS30)とした。統計学的解析は,LSAの各活動範囲得点とその他の調査項目の関連性を検討するため,Spearmanの順位相関係数を算出した。有意水準は全て5%とした。
【結果】
住居内の得点は,快適歩行速度,TUGと有意な中等度の相関(r=0.4~0.7),MFES,BIと有意な弱い相関(r=0.2~0.4)を認めた。自宅周囲の得点は,MFES,老研式,快適歩行速度,TUG,FRTと有意な中等度の相関(r=0.4~0.7),BI,CS30と有意な弱い相関(r=0.2~0.4)を認めた。近隣の得点は,EQのVAS,MFES,BI,老研式,快適歩行速度,TUG,FRT,CS30と有意な中等度の相関(r=0.4~0.7)を認めた。町内・町外の得点と各調査項目との間には有意な相関はなかった。
【結論】
本研究結果より,住居内の得点は,特に歩行能力が関連しており,自宅周囲・近隣の得点は,歩行能力に加え,転倒恐怖感や地域における活動能力が関連していることが示唆された。しかし,町内・町外の得点は,各調査項目との間に相関を認めず,歩行能力・転倒恐怖感・地域における活動能力等の対象者個人の能力や心理面の関連は少ないことが考えられた。また,本研究の対象者が居住する地域では,長距離移動の際に,公共交通機関よりも自動車を利用することが多く,地域性も関与していることが推察された。本研究結果は,生活空間を活動範囲別に捉えることの重要性を示唆すると共に,生活空間拡大を図る上で考慮すべき情報であると考えられる。