第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)10

Sat. May 28, 2016 1:40 PM - 2:40 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:大槻利夫(上伊那生協病院 リハビリテーション課)

[O-NV-10-5] 軽度認知障害を有する高齢者における歩行と白質病変の関係

土井剛彦1,2, 島田裕之1, 牧迫飛雄馬1, 堤本広大1, 中窪翔1, 牧野圭太郎1, 鈴木隆雄1,3 (1.国立長寿医療研究センター, 2.日本学術振興会, 3.桜美林大学加齢・発達研究所)

Keywords:歩行, MRI, 白質病変

【はじめに,目的】

認知機能と歩行能力は密接に関連しており,軽度認知障害(mild cognitive impairment:MCI)や認知症を有する高齢者に歩行能力の低下が特徴としてみられる。さらに,白質病変などにみられる加齢に伴う脳構造変化が歩行能力と関連することが近年報告されている。しかし,MCI高齢者における歩行能力と白質病変との関連性については明らかにされていない。本研究では,MCI高齢者の歩行能力低下を顕著にする同時課題(dual-task:DT)歩行を測定し,白質病変との関連性を検討した。

【方法】

本研究はNational Center for Geriatrics and Gerontology-Study of Geriatric Syndromesの参加者の中からMCIと判明した高齢者に対しリクルートを行い,対象者は歩行測定ならびにmagnetic resonance imaging検査を実施した560名とした。歩行条件は通常歩行とDT歩行の2条件で,高齢者の歩行能力として重要とされている体幹安定性を評価するharmonic ratio(HR)を歩行指標として用いた。HRは3軸加速度計により歩行時の体幹加速度を測定した後に3方向各々算出し(前後,垂直,側方方向),値が大きいほど安定性が高い事を意味する。白質病変の評価は,Fazekas scaleを用いて脳室周囲病変ならびに深部皮質下白質病変を評価した。いずれの評価においてグレードIIIと評価された者はsevere white matter lesion(WML)群とした。共変量として生物・医学的特性に加え,遂行機能を評価するSymbol Digit Substitution Task(SDST)を評価した。

【結果】

対象者を白質病変の程度に基づきnon-severe WML(n=451,平均年齢:73.2歳)とsevere WML(n=109,平均年齢:75.9歳)の各群に群わけした。3方向のHRが通常歩行に比べDT歩行時に有意に低下した(p<0.05)。DTによる歩行変化は白質病変と関連性がみられ(p<0.05),共変量(年齢,性別,教育歴,服薬数,高血圧,MCIのsubtype,脳萎縮,歩行速度,SDST)にて調整した混合分析においても側方方向のHRと白質病変の関連性が有意であった(p<0.05)。

【結論】

MCI高齢者における歩行能力低下の関連要因として白質病変が関連することが示唆された。認知機能障害を伴う高齢者における歩行能力低下に対して,脳画像を用いた評価を考慮することが重要であると考えられる。