第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)12

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:松﨑哲治(専門学校 麻生リハビリテーション大学校 理学療法学科)

[O-NV-12-1] 急性期脳卒中患者における誤嚥性肺炎発症の予測モデル作成

原田真二, 公文範行, 福田真也, 浦谷明宏, 船越剛司, 馬井孝徳, 小野明弘 (倉敷中央病院リハビリテーション部)

Keywords:急性期脳卒中, 誤嚥性肺炎, 予測モデル

【はじめに,目的】

脳卒中急性期の合併症は死亡や重症化の原因となり得る。誤嚥性肺炎(以下肺炎)はその1つであり,肺炎発症リスクの判断は早期に行う必要がある。しかし,肺炎発症に関与する因子を述べた論文は散見するが,多くは因子の探索に留まっている。本研究では急性期脳卒中患者の肺炎発症に関与する因子を明らかにし,肺炎発症の予測モデルを作成しその精度について検討することを目的とした。

【方法】

研究デザインは後ろ向き観察研究とした。対象は2014年1月~2014年12月までに当院脳外科・脳卒中科に入院し,脳梗塞または脳出血と診断されリハビリテーションを施行した493例のうち,選定・除外基準を満たす360例とした。解析方法はまず,入院中の肺炎有無を従属変数とし性別,半球,疾患,出血性梗塞有無,入院中の神経学的症状増悪有無,脳卒中再発有無,脳卒中既往歴有無,呼吸器疾患既往歴有無,経鼻栄養有無,喫煙歴有無にはX2検定を行い,年齢,入院前modified Rankin Scale,開始時Japan Coma Scale(以下JCS),開始時National Institute of Health Stroke Scale(以下NIHSS),開始時上下肢上田式片麻痺機能テスト(以下上肢12Gr,下肢12Gr),Functional Independence Measure(以下FIM)運動項目,FIM認知項目,藤島嚥下グレード(以下嚥下Gr),にはMann-whiteny検定を行った。次に有意差を認めた変数でSpearmanの順位相間係数を用い相関係数の絶対値が0.8以上のものを除外し,選別したものを独立変数,肺炎発症有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。統計解析ソフトはSPSS Statistics 20を用い,有意水準を5%未満とした。

【結果】

解析者360名のうち肺炎発症群44例と未発症群316例であった。単変量解析の結果,疾患,脳卒中再発有無,開始時JCS,開始時NIHSS,上肢12Gr,下肢12Gr,FIM運動項目,FIM認知項目,嚥下Gr,経鼻栄養有無でP<0.01,出血性梗塞有無でP<0.05と有意であった。ロジスティック回帰分析の結果,予測変数として上肢12Gr(オッズ比(以下OR)95%信頼区間(以下95%CI)1.034-1.270),入院中再発有無(OR95%CI 1.845-18.237),経鼻栄養有無(OR95%CI2.684-22.262)が採択された。肺炎発症予測モデルとしてHosmerとLemeshow検定結果はP=0.45で適合性が高く判別的中率も89.2%と良好であった。また,感度18.2%,特異度99.1%,陽性的中率72.7%,陰性的中率89.7%,陽性尤度比19.15,陰性尤度比0.83となった。得られた予測式としてscore=-5.147+(0.136)×上肢12Gr(麻痺無しは13)+(1.758)×再発有無(有:1,無:2)+(2.045)×経鼻栄養有無(有:1,無:2)であった。その後p=1/(1+exp(-1×score))にてp<0.5が肺炎有,p>0.5が肺炎無となる結果となった。

【結論】

本予測モデルは特異度99.1%,陽性適中率72.7%であり肺炎発症の確定診断に有用であり予測モデルとしても良好な結果であった。今後は本モデルを用い肺炎発症確立の高い患者を識別し,重点的な介入や病棟との情報交換が可能であると思われる。