[O-NV-12-5] 脳卒中患者におけるHALⓇ単脚型装着の有無による歩行パフォーマンスの差異
Keywords:脳卒中, HAL, 歩行
【はじめに,目的】
脳卒中患者の歩行練習において,Hybrid Assistive LimbⓇ福祉用(以下,HALⓇ)の効果的な使用法は不明である。例えば,短下肢装具の装着は非装着時に比べ歩行速度やcadence,エネルギー効率を改善することが知られているが,HALⓇに関して同様の研究は少ない。結果,現状ではHALⓇを使用した場合にどのような歩行練習が可能になるのかに関して,経験則以上の根拠は乏しい。本研究の目的は,HALⓇの有無による歩行パフォーマンスの差異を検討することで,HALⓇの有効な使用法に関する示唆を得ることである。
【方法】
対象は当院入院中の脳卒中患者のうち,歩行練習にHALⓇ単脚型を用いているものとした。取込基準はHALⓇ非装着時の歩行が補助具の使用を問わずFunctonal Ambulation Categries3以上で,HALⓇを用いた歩行練習を5日以上行ったものとした。これらの基準を満たしたものは7名(女性4名,年齢62.6±7.6歳,発症後日数64.4±25.0日,Brunnstrom Recovery StageIII:2名,IV:4名,VI:1名,Berg Balance Scale44.9±4.7点,歩行時の杖・短下肢装具の使用あり6名,なし1名)であった。HALⓇの設定は,担当理学療法士が対象者の動作を観察し,調整した。対象者の10 m Comfortable Walking Speed(以下,10mCWS),両下肢の歩幅(身長で除し正規化),cadenceおよびPhysiolosical Cost Index(以下,PCI)をHALⓇを装着しない通常の歩行条件とHALⓇ装着中の条件で測定,比較した。統計学的分析はSPSS ver.19.0にて対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定,効果量の算出を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
10mCWSは通常の歩行条件32.8±8.0→HALⓇ装着中34.8±8.5m/minで,HALⓇ装着中が有意に速かった(P=0.014)。麻痺側歩幅は25.9±3.0→29.3±4.5%で,HALⓇ装着中が有意に大きかった(P=0.043)。非麻痺側歩幅(25.1±4.2→26.0±6.8%,P=0.67),cadence(80.8±15.6→80.1±12.9steps/min,P=0.87),PCI(0.37±0.30→0.29±0.22beats/min,P=0.35)では有意差を認めなかった。効果量は麻痺側歩幅がLarge(d=0.89),10mCWS,PCIがSmall(d=0.25,0.31),非麻痺側歩幅(d=0.16),cadence(r=0.05)が効果なしだった。
【結論】
本研究の結果より,脳卒中患者がHALⓇを装着することによって,非装着時よりも麻痺側の歩幅が大きく,速度の速い歩行練習が可能になることが示唆された。これは,HALⓇに備わる下肢運動アシスト機能や自律制御モードが有効に働いた結果と考えられた。本研究の結果は,臨床におけるHALⓇの使用法に有用な示唆を与えている。今後は,対象者数の拡大が必要である。
脳卒中患者の歩行練習において,Hybrid Assistive LimbⓇ福祉用(以下,HALⓇ)の効果的な使用法は不明である。例えば,短下肢装具の装着は非装着時に比べ歩行速度やcadence,エネルギー効率を改善することが知られているが,HALⓇに関して同様の研究は少ない。結果,現状ではHALⓇを使用した場合にどのような歩行練習が可能になるのかに関して,経験則以上の根拠は乏しい。本研究の目的は,HALⓇの有無による歩行パフォーマンスの差異を検討することで,HALⓇの有効な使用法に関する示唆を得ることである。
【方法】
対象は当院入院中の脳卒中患者のうち,歩行練習にHALⓇ単脚型を用いているものとした。取込基準はHALⓇ非装着時の歩行が補助具の使用を問わずFunctonal Ambulation Categries3以上で,HALⓇを用いた歩行練習を5日以上行ったものとした。これらの基準を満たしたものは7名(女性4名,年齢62.6±7.6歳,発症後日数64.4±25.0日,Brunnstrom Recovery StageIII:2名,IV:4名,VI:1名,Berg Balance Scale44.9±4.7点,歩行時の杖・短下肢装具の使用あり6名,なし1名)であった。HALⓇの設定は,担当理学療法士が対象者の動作を観察し,調整した。対象者の10 m Comfortable Walking Speed(以下,10mCWS),両下肢の歩幅(身長で除し正規化),cadenceおよびPhysiolosical Cost Index(以下,PCI)をHALⓇを装着しない通常の歩行条件とHALⓇ装着中の条件で測定,比較した。統計学的分析はSPSS ver.19.0にて対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定,効果量の算出を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
10mCWSは通常の歩行条件32.8±8.0→HALⓇ装着中34.8±8.5m/minで,HALⓇ装着中が有意に速かった(P=0.014)。麻痺側歩幅は25.9±3.0→29.3±4.5%で,HALⓇ装着中が有意に大きかった(P=0.043)。非麻痺側歩幅(25.1±4.2→26.0±6.8%,P=0.67),cadence(80.8±15.6→80.1±12.9steps/min,P=0.87),PCI(0.37±0.30→0.29±0.22beats/min,P=0.35)では有意差を認めなかった。効果量は麻痺側歩幅がLarge(d=0.89),10mCWS,PCIがSmall(d=0.25,0.31),非麻痺側歩幅(d=0.16),cadence(r=0.05)が効果なしだった。
【結論】
本研究の結果より,脳卒中患者がHALⓇを装着することによって,非装着時よりも麻痺側の歩幅が大きく,速度の速い歩行練習が可能になることが示唆された。これは,HALⓇに備わる下肢運動アシスト機能や自律制御モードが有効に働いた結果と考えられた。本研究の結果は,臨床におけるHALⓇの使用法に有用な示唆を与えている。今後は,対象者数の拡大が必要である。