第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)12

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:松﨑哲治(専門学校 麻生リハビリテーション大学校 理学療法学科)

[O-NV-12-6] Honda製歩行アシストが脳損傷後片麻痺者の歩行対称性を改善するメカニズム

大畑光司1, 川崎詩歩未1, 前田絢香1, 橋口優1,2, 北谷亮輔1,2, 脇田正徳1,3, 長田陽祐4 (1.京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻, 2.日本学術振興会特別研究員, 3.関西医科大学附属枚方病院, 4.株式会社本田技術研究所)

キーワード:脳損傷, 歩行, リハビリテーションロボット

【目的】近年,ロボットアシスト歩行トレーニングの歩行再建に対する効果についての報告がなされてきている。本田技研製歩行アシスト(Honda Waking Assist:以下HWA)は,股関節の運動を小型アクチュエータにより制御し,理想的な歩行を誘導することを目的に開発された機器である。我々はこれまでに健常者における歩行コストの改善や片麻痺者における歩行対称性の改善,さらに脳損傷後片麻痺患者に対する無作為対照試験の結果から,通常のトレーニングより麻痺側筋力の改善や歩行中の内的モーメントの増加が生じることを報告してきた。しかし,歩行パターンの改善が生じるメカニズムについては明確になっているとは言えない。本研究の目的は三次元歩行解析を行い,HWAによる運動変化を明確にすることを目的とした。




【方法】地域在住の慢性期脳損傷後片麻痺者16名で0.4m/s以上の歩行速度を持つ者を対象とした(男性9名,女性7名,年齢48.5±20.2歳,身長165.1±11.7cm,体重62.0±11.3kg,発症後年数5.9±4.5年,脳出血10名,脳梗塞3名,くも膜下出血2名,頭部外傷,麻痺側:右8名,左8名,下肢Brunnstrom Recovery Scale:III 2名,IV 6名,V 8名)。光学式三次元計測装置MAC3Dsystem(Motion Analysis Co., USA)を用い,5m歩行路上での快適歩行速度での歩行を4-6歩行周期,サンプリング周波数120Hzにて測定した。OrthoTrak 6.6.1を用いて,歩行速度,ストライド,歩行周期,麻痺側,非麻痺側における各歩行相(両脚立脚期,単脚立脚期)の歩行周期にしめる割合と身体重心水平移動距離のストライドに対する割合を算出した。さらに時間的対称性(Stance,SwingおよびDouble stance time symmetry),空間的対称性(Step length symmetry)を算出した。統計解析にはアシストの有無による差をWilcoxonの順位和検定にて有意水準5%で検討した。




【結果】HWAの使用により,歩行周期,歩行速度に変化は見られなかったが,ストライドが有意に増加した(p<0.05)。また,非麻痺側接地後の両脚立脚期が有意に減少し(p<0.01),Double stance time symmetryは減少した(p<0.05)。また,非麻痺側接地後の両脚立脚期と麻痺側遊脚期における重心移動距離は有意に増加した(p<0.05,p<0.01)。




【結論】HWAにより,片麻痺者の歩行の特徴的な問題である時間対称性の改善し,ストライドの改善が認められた。また,非麻痺側接地後の両脚立脚期が短縮すると同時に身体重心の水平方向移動距離が増加していることから,この時期の速度が増加したことが対称性の改善に役立ったと考えられる。HWAによる使用時の歩行改善効果については麻痺側が後方にある両脚立脚期における運動の変化が重要な役割を果たしていることが示唆された。