[O-NV-13-4] Lateropulsion症例の姿勢動揺に対する直流前庭電気刺激の即時的効果
―シングルケースデザインrandomization検定を用いた検討―
キーワード:直流前庭電気刺激, Lateropulsion, randomization検定
【はじめに,目的】Lateropulsionとは,片側へ倒れる側方方向の姿勢制御障害であり,前庭機能障害が関与すると報告されている。姿勢制御障害は転倒のリスクを高めるが,lateropulsionに対する介入報告は少ない。今回,lateropulsionを呈した一症例に前庭機能を刺激する直流前庭電気刺激(以下,GVS)を実施し,足圧中心(以下,COP)動揺を指標とし即時的効果判定にrandomization検定を用い,客観的に効果的かを判定したため報告する。
【方法】対象は60歳代男性。診断名は左橋,右小脳梗塞。今回測定を実施した発症後38日時点は,屋内杖歩行は見守り,閉脚開眼立位はふらつきながら30秒可能であった。股関節外転筋力はMMTで左右とも3,感覚は正常であった。Burke lateropulsion scaleは5/17点で,立位姿勢で左側方向へのlateropulsionを認めた。実験方法は,閉脚開眼立位30秒をControl条件と刺激条件に分け5回ずつランダムに実施し,重心動揺計UM-BARII(ユニメック社製)でCOPを評価した。刺激条件では,立位中に直流前庭電気刺激を実施し,Control条件では電気刺激は行わないプラセボ刺激とした。直流前庭電気刺激には,Intelect advance combo(Chattanooga社製)を使用し,両側乳頭突起に電極を貼付し(右陽極,左陰極),刺激強度は0.8mAとした。解析方法は,シングルケースデザインの1つrandomization検定を用い,刺激条件とControl条件でCOP変数を比較した。解析ソフトは,randibmで検定を行い有意水準は5%未満とした。randomization検定とは,母集団に関する仮定を持たない,シングルケースデザインのデータ評価法として推奨されている方法である(山田1999,Dugard 2012)。
【結果】Control条件,刺激条件の順で平均値±標準偏差を以下に示す。左右方向の動揺平均中心変位(cm)は-1.5±0.4,0.5±0.3,動揺速度(cm/s)は4.1±0.4,3.5±0.3,実効値(cm)は3.4±0.2,2.9±0.1であり,各々に有意差を認めた(p<0.05)。前後方向の動揺平均中心変位は-0.1±0.4,0.1±0.2,実効値は1.2±0.2,1.2±0.1と有意差を認めず,動揺速度のみが2.8±0.4,2.3±0.3と有意差を認めた(p<0.05)。外周面積(cm2)は14.3±1.0,12.1±2.2で有意差を認めなかった。
【結論】今回の結果は,GVS中に左に偏倚していた重心位置がほぼ正中になり,側方方向の動揺速度や振幅,前後方向の動揺速度は軽減するが,動揺範囲や前後方向の重心位置や振幅には影響しないことを示している。GVSは主に側方方向の姿勢制御に影響を与えるとされている。今回の結果はlateropulsionに対するGVSは,刺激中に主に左右方向の姿勢制御を改善させることを示している。今までの報告では,GVSの効果を目視でしか検討されておらず,客観的に効果的か不明な点があった。今回,randomization検定を用い客観的に即時的効果を示したことは理学療法における意義ある報告である。今後は,GVS後の影響を検討する必要があると考える。
【方法】対象は60歳代男性。診断名は左橋,右小脳梗塞。今回測定を実施した発症後38日時点は,屋内杖歩行は見守り,閉脚開眼立位はふらつきながら30秒可能であった。股関節外転筋力はMMTで左右とも3,感覚は正常であった。Burke lateropulsion scaleは5/17点で,立位姿勢で左側方向へのlateropulsionを認めた。実験方法は,閉脚開眼立位30秒をControl条件と刺激条件に分け5回ずつランダムに実施し,重心動揺計UM-BARII(ユニメック社製)でCOPを評価した。刺激条件では,立位中に直流前庭電気刺激を実施し,Control条件では電気刺激は行わないプラセボ刺激とした。直流前庭電気刺激には,Intelect advance combo(Chattanooga社製)を使用し,両側乳頭突起に電極を貼付し(右陽極,左陰極),刺激強度は0.8mAとした。解析方法は,シングルケースデザインの1つrandomization検定を用い,刺激条件とControl条件でCOP変数を比較した。解析ソフトは,randibmで検定を行い有意水準は5%未満とした。randomization検定とは,母集団に関する仮定を持たない,シングルケースデザインのデータ評価法として推奨されている方法である(山田1999,Dugard 2012)。
【結果】Control条件,刺激条件の順で平均値±標準偏差を以下に示す。左右方向の動揺平均中心変位(cm)は-1.5±0.4,0.5±0.3,動揺速度(cm/s)は4.1±0.4,3.5±0.3,実効値(cm)は3.4±0.2,2.9±0.1であり,各々に有意差を認めた(p<0.05)。前後方向の動揺平均中心変位は-0.1±0.4,0.1±0.2,実効値は1.2±0.2,1.2±0.1と有意差を認めず,動揺速度のみが2.8±0.4,2.3±0.3と有意差を認めた(p<0.05)。外周面積(cm2)は14.3±1.0,12.1±2.2で有意差を認めなかった。
【結論】今回の結果は,GVS中に左に偏倚していた重心位置がほぼ正中になり,側方方向の動揺速度や振幅,前後方向の動揺速度は軽減するが,動揺範囲や前後方向の重心位置や振幅には影響しないことを示している。GVSは主に側方方向の姿勢制御に影響を与えるとされている。今回の結果はlateropulsionに対するGVSは,刺激中に主に左右方向の姿勢制御を改善させることを示している。今までの報告では,GVSの効果を目視でしか検討されておらず,客観的に効果的か不明な点があった。今回,randomization検定を用い客観的に即時的効果を示したことは理学療法における意義ある報告である。今後は,GVS後の影響を検討する必要があると考える。