第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)13

Sat. May 28, 2016 5:10 PM - 6:10 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:阿部浩明(広南病院 リハビリテーション科)

[O-NV-13-6] 歩行が嚥下障害に与える即時的影響に関する検討

左被殻出血により嚥下障害を呈した症例を対象にVFを用いた時間的解析法からの一考察

新崎直和1, 小池正樹2, 玉城慶太2, 上原未智2, 村井直人1, 与儀哲弘1, 末永正機3 (1.医療法人ちゅうざん会ちゅうざん病院リハビリテーション部理学療法課, 2.ちゅうざん病院リハビリテーション部言語聴覚課, 3.ちゅうざん病院医局)

Keywords:歩行, 嚥下障害, 嚥下造影検査

【はじめに,目的】

麻痺性嚥下障害に対して歩行が与える即時的かつ直接的な反応について報告した例は少ない中,我々は歩行が嚥下機能に好影響を与えていると思わる症例を経験した。今回は歩行直前・後の嚥下造影検査(以下VF)を用いた解析を行った結果,歩行介入が嚥下機能に与える即時的な影響について若干の知見が得られたため以下に報告する。

症例提示

74歳男性。意識障害JCSII-10にて発症。26病日後PEG造設。49病日後に当院回復期リハ病棟へ入院。入院時現症:意識障害なし,右下肢肢Brunnstrom stageII,藤島Gr4,失語あり,Functional independence Measure(;FIM)22点(FIM運動13/FIM認知9),認知障害なし。

【方法】

VF実施日は110病日が経過しており意識障害はなかった。検査肢位は60°ギャッヂ座位,VFは側面像から撮影した。検査模擬食品は希釈硫酸バリウムゼリーを用い,1回嚥下量を3mlとした。歩行開始直前に3回嚥下を行い,食塊の咽頭貯留などがないかを確認後すぐに検査室前の廊下を歩行した。歩行形態は通常の練習時と同条件とし,長下肢装具着用下にてPTによる後方からのフリーハンド歩行を約50m実施した。終了後速やかに検査肢位へ戻り,前後でのVital signの変動がない,その他の自覚症状がないことを確認後,同様に3回VFを行った。歩行直前後の画像解析の比較にはLogemannらの時間的解析法を用いた。解析項目は口腔通過時間(以下OTT),咽頭通過時間(以下PTT),咽頭遅延時間(以下PDT),咽頭反応時間(以下PRT)に喉頭拳上遅延時間(以下LEDT)を加えた各時間とし,歩行直前・後の3回嚥下平均時間の差を算出した(歩行後時間-歩行前時間=歩行介入直前後での時間的変化の差)。

【結果】

OTTは-26.39秒,PTTは-4.29秒,LEDTは-0.23秒,PDTは-14.18秒,PRTは+3.88秒であった。

【結論】

歩行が嚥下機能に与える直接的な関連性についての報告は少ないが,VFを用いた時間的解析の結果PRTを除く各相において短縮する傾向にあった。嚥下機能における神経生理学的側面では大脳基底核から投射を受けた中脳の脚橋被蓋核が橋延髄網様体へと投射し,咽頭機能のパターンの調節作用をもつとされている。これは歩行の神経機構と類似している点も多いことから神経生理学的な作用が協調しあい,歩行が嚥下機能に直接的な影響を及していた可能性もあるように思われた。また横井らは脳血管障害患者における座位,立位保持,歩行が可否と嚥下障害の有無は有意な関連があり,身体機能・能力的な関連性に関しても報告されている。これらのことから今後症例を重ね,直接的な影響について検証していきたい。