第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)14

Sat. May 28, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第8会場 (札幌コンベンションセンター 2階 206)

座長:諸橋勇(いわてリハビリテーションセンター 機能回復療法部)

[O-NV-14-1] 脳卒中片麻痺者に対する体幹部回旋他動運動が歩行動作に及ぼす影響

―麻痺側swing動作の変化から―

谷内幸喜1, 河﨑由美子2, 河﨑政治2, 杉村雅人2, 木原幸太2 (1.大阪河﨑リハビリテーション大学, 2.総合リハビリテーション伊予病院)

Keywords:脳卒中片麻痺者, 体幹部回旋他動運動, 麻痺側swing動作

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者における姿勢制御能力低下が歩行能力に及ぼす影響は大きい。脳卒中片麻痺者の歩行能力と歩行時の骨盤前傾角度との関連性(大田尾ら,上條ら)を述べた報告などからも伺われるように,歩行時の姿勢制御能力において骨盤前傾を伴う前方移動能力は重要と考える。我々は第50回本大会において,脳卒中片麻痺者に対して骨盤麻痺側回旋・胸郭非麻痺側回旋・頸部麻痺側回旋(以下,体幹部回旋他動運動)を実施後,麻痺側立脚期後期から遊脚期における股関節・膝関節屈曲運動の増加に伴うステップ長・ストライド長・歩行スピードの向上を認めたことを報告した。しかし,歩行時の姿勢制御能力として重要な骨盤の動きに関しては未解明である。そこで今回,脳卒中片麻痺者に対する体幹部回旋他動運動の効果が,骨盤前傾を伴う前方移動能力(麻痺側下肢)にどのように繋がっているのかを検証するために,麻痺側swing動作の変化を解析したので文献的考察を加えて報告する。


【方法】被験者は下肢装具なしにて15m以上の独歩可能な脳卒中片麻痺者14名とした。被験者に対してまず,インターリハ社製ゼブリス高機能型圧分布計測システム(以下,Win FDM)上で出来るだけ早く歩く(早歩)よう指示。その後体幹部回旋他動運動を実施。数秒後に被験者自身のタイミングにてWin FDM上での早歩を行った。体幹部回旋他動運動前後における歩行動作はWin FDMにて連続測定し,インターリハ社製解析用FDM Gaitソフトウェアにより麻痺側ステップ長,歩行速度を求めた。また,マーカーを麻痺側の肩峰,上前腸骨棘,大転子,膝関節外側関節裂隙の4箇所に貼付し,CASIO社製ビデオカメラ(HS EX-FH100)にて麻痺側swing動作時におけるマーカーの位置を撮影し,体幹前傾角度・骨盤前傾角度および肩峰と上前腸骨棘との位置関係から体幹に対する骨盤の推進性を測定し分析項目とした。体幹部回旋他動運動前後における麻痺側swing動作に差があるかを調べるために,データの正規性を確認してからt検定による分析を用い有意水準を5%未満として解析を行った。なお統計学的解析には,Microsoft社製表計算等ソフトウェア(Microsoft Excel 2010)の分析ツールを使用した。


【結果】体幹部回旋他動運動実施後の歩行動作では,麻痺側ステップ長(P<0.05)の有意な増加および歩行速度(P<0.01)の有意な減少と同時に,麻痺側swing動作時における骨盤前傾角度(P<0.01)と骨盤の推進性(P<0.05)の有意な増加が認められた。体幹前傾角度とは有意な差は認められなかった。


【結論】体幹部回旋他動運動実施後の麻痺側swing動作の変化から,麻痺側ステップ長の増加や歩行スピードの向上は,麻痺側骨盤前傾角度の向上による身体の前方移動(骨盤の推進性向上)を伴っており,脳卒中片麻痺者に対する体幹部回旋他動運動は,運動量戦略による姿勢制御を伴ったswing動作に繋がっている可能性が示唆された。