[O-NV-14-5] 軽症脳梗塞患者におけるセルフ・モニタリングを用いた身体活動促進のための安全性と実現可能性についての検討
パイロット研究
キーワード:脳梗塞, 身体活動, セルフ・モニタリング
【はじめに,目的】
我が国における脳梗塞患者の多くは,退院時に歩行が自立している軽症例である。しかし,その再発率は約30%と高いことから,再発予防は極めて重要となる。先行研究では,脳梗塞患者に対するライフスタイル介入や身体活動の促進が再発予防に繋がることが示されている(Kono, et al., 2013, 2015)。しかし,これらは退院後の介入であることから,早期からの介入効果については不明である。また,急性期病院入院中の脳梗塞患者に対する身体活動促進に向けたアプローチの方策は,確立されていない。一方,心疾患患者に対しては,セルフ・モニタリングを用いることにより,身体活動促進が得られることが示されている(Izawa, et al., 2005, 2012)。本研究の目的は,急性期病院における軽症脳梗塞患者に対するセルフ・モニタリングを用いた身体活動促進のための安全性と実現可能性について明らかにすることである。
【方法】
対象は,平成27年5月から10月までの間に急性期病院に入院し,リハビリテーションを開始した脳梗塞患者連続131例のうち,発症1週間以内に歩行が自立した軽症例とした。除外基準は,身体活動を阻害する因子を有する,重篤な認知症,80歳以上,失語症,そして研究に同意が得られない例とした。患者属性として,年齢,性別およびNIH Stroke Scale(NIHSS)を調査した。身体活動量の指標は歩数(歩/日)とし,測定にはワイヤレス活動量計Fitbit One(Fit bit社製)を用いた。測定に際し我々は,装着開始より2日間をベースライン(T1)とし,3日目より7日目または退院前日までの期間(T2)に非監視下での身体活動促進を図るためにセルフ・モニタリングを指導した。T1では対象者には特別な指示は与えられず,歩行練習や有酸素運動等の監視下のリハビリテーションが行われた。T2でのセルフ・モニタリングの具体的内容は,①対象者に日常生活における身体活動を行動記録表に記載させる,②退院後の身体活動量に関する目標を決める,③理学療法士が前日の身体活動量をフィードバックする,等とした。なお,我々は安全性について,T2での非監視下運動時における有害事象(神経症状の増悪,転倒,バイタルサインの異常)発生率を調査した。実現可能性について,行動記録表の記載率を調査し,対応のあるt検定を用いT1とT2における身体活動量を比較した。統計学的手法には,統計解析ソフト(SPSS Statistics 20)が用いられ,有意水準は5%とした。
【結果】
最終解析対象者は14例(年齢63.1歳,男性57.1%,NIHSS 1.2点)であった。T2での有害事象発生率は0%,行動記録表の記載率は96.7%であった。また,身体活動量はT1と比べT2で増加した(2420.4 vs. 5548.5歩,p<0.0001)。
【結論】
急性期病院における軽症脳梗塞患者に対するセルフ・モニタリングを用いた身体活動促進は安全に実現可能であることが明らかとなった。今後は,対照群を設けた介入研究が必要であると考えられた。
我が国における脳梗塞患者の多くは,退院時に歩行が自立している軽症例である。しかし,その再発率は約30%と高いことから,再発予防は極めて重要となる。先行研究では,脳梗塞患者に対するライフスタイル介入や身体活動の促進が再発予防に繋がることが示されている(Kono, et al., 2013, 2015)。しかし,これらは退院後の介入であることから,早期からの介入効果については不明である。また,急性期病院入院中の脳梗塞患者に対する身体活動促進に向けたアプローチの方策は,確立されていない。一方,心疾患患者に対しては,セルフ・モニタリングを用いることにより,身体活動促進が得られることが示されている(Izawa, et al., 2005, 2012)。本研究の目的は,急性期病院における軽症脳梗塞患者に対するセルフ・モニタリングを用いた身体活動促進のための安全性と実現可能性について明らかにすることである。
【方法】
対象は,平成27年5月から10月までの間に急性期病院に入院し,リハビリテーションを開始した脳梗塞患者連続131例のうち,発症1週間以内に歩行が自立した軽症例とした。除外基準は,身体活動を阻害する因子を有する,重篤な認知症,80歳以上,失語症,そして研究に同意が得られない例とした。患者属性として,年齢,性別およびNIH Stroke Scale(NIHSS)を調査した。身体活動量の指標は歩数(歩/日)とし,測定にはワイヤレス活動量計Fitbit One(Fit bit社製)を用いた。測定に際し我々は,装着開始より2日間をベースライン(T1)とし,3日目より7日目または退院前日までの期間(T2)に非監視下での身体活動促進を図るためにセルフ・モニタリングを指導した。T1では対象者には特別な指示は与えられず,歩行練習や有酸素運動等の監視下のリハビリテーションが行われた。T2でのセルフ・モニタリングの具体的内容は,①対象者に日常生活における身体活動を行動記録表に記載させる,②退院後の身体活動量に関する目標を決める,③理学療法士が前日の身体活動量をフィードバックする,等とした。なお,我々は安全性について,T2での非監視下運動時における有害事象(神経症状の増悪,転倒,バイタルサインの異常)発生率を調査した。実現可能性について,行動記録表の記載率を調査し,対応のあるt検定を用いT1とT2における身体活動量を比較した。統計学的手法には,統計解析ソフト(SPSS Statistics 20)が用いられ,有意水準は5%とした。
【結果】
最終解析対象者は14例(年齢63.1歳,男性57.1%,NIHSS 1.2点)であった。T2での有害事象発生率は0%,行動記録表の記載率は96.7%であった。また,身体活動量はT1と比べT2で増加した(2420.4 vs. 5548.5歩,p<0.0001)。
【結論】
急性期病院における軽症脳梗塞患者に対するセルフ・モニタリングを用いた身体活動促進は安全に実現可能であることが明らかとなった。今後は,対照群を設けた介入研究が必要であると考えられた。