第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)15

2016年5月29日(日) 10:00 〜 11:00 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:柿澤雅史(札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部)

[O-NV-15-1] 筋疲労回復時間によるシャルコー・マリー・トゥース病患者の筋疲労特性(第1報)

下井俊典1, 石井雅子2 (1.国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科, 2.CMT友の会)

キーワード:シャルコー・マリー・トゥース病, 筋疲労, 筋疲労回復

【はじめに,目的】

シャルコー・マリー・トゥース(以下CMT)病は,本邦での発症率が1/5,000人といわれる末梢神経が障害される遺伝性の希少難病である。我々はCMT患者に対する安全なリハビリテーション・プログラムの作成を目的として,その筋疲労特性を筋電図学的に検討してきた。その結果,一部のCMT患者で筋疲労時の特異な筋電位応答が確認された。我々はこの特異な筋電位応答は運動単位の動員不足に起因し,CMT患者の易疲労性を示しているという仮説を立てている。そこで本研究ではこの仮説の下で,運動課題後の筋疲労時の筋電位応答と筋疲労回復特性との関係からCMT患者の易疲労性について検討することを目的とする。

【方法】

対象者は9名のCMT患者(病型:CMT1型4名,不明5名,女性4名,男性5名,年齢47.6±10.2歳)である。筋疲労課題は,右肘屈曲の最大等尺性収縮(MVCmax)の75%(MVC75%)を持続的に発揮させ,筋疲労により同50%(MVC50%)に逓減するまでの等尺性収縮課題とした。さらに筋疲労回復課題として,筋疲労課題直後,30・60・90・120・180・240・300・360・420・480秒後に5秒間のMVC50%の等尺性収縮を発揮させた。表面筋電計(DKH社製)を用いて全課題中の筋電位を対象側の上腕二頭筋から導出するとともに,筋出力を測定した。導出された筋電位および筋出力から中央パワー周波数(MdPF),平均振幅(RMS),神経筋効率(NME)を算出,全ての測定値について疲労前の値を基準値として相対値を算出しその変化様態を検討した。

【結果】

9名の対象者のうち6名について筋疲労を示す筋電位応答であるRMSの上昇によるNMEの低下が筋疲労課題中に認められた。対して残る3名では同課題中のRMSの低下によるNMEの上昇が観察された。このため一般的応答を示した6名と特異的応答を示した3名に分けて筋疲労課題後の回復過程を比較・検討したところ,一般的応答の6名は筋電位上の筋疲労回復に平均で90秒を要した。対して,特異的応答の3名は筋疲労回復に平均で420秒を要した。

【結論】

筋疲労課題中に筋電位の特異的応答を示したCMT患者は一般的応答を示した者よりもより多くの筋疲労回復時間が必要となった。この結果は筋疲労課題中の筋電位の特異的応答は運動単位の動員不足に起因し,CMT患者の易疲労性の原因となっているという我々の仮説を支持するものと考えられる。