第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本神経理学療法学会 一般演題口述
(神経)15

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第7会場 (札幌コンベンションセンター 2階 204)

座長:柿澤雅史(札幌医科大学附属病院 リハビリテーション部)

[O-NV-15-3] 進行性核上性麻痺のすくみ足に対するセルフエクセサイズの効果 第一報

―シングルケースデザインによる検討―

池上直宏 (りんどうリハビリ看護ステーション)

Keywords:進行性核上性麻痺, すくみ足, シングルケースデザイン

【はじめに,目的】

すくみ足は,パーキンソン病やその他関連疾患にしばしばみられ,日常生活における動作困難の一要因となっている。すくみ足に対するリハビリテーション介入については様々な報告があり,近年では起立板を用いた下腿三頭筋伸張刺激と前方重心移動の組み合わせが,パーキンソン病患者のすくみ足に即時効果があるとの報告が散見される。今回,進行性核上性麻痺(以下PSP)によりすくみ足を呈する症例に対し,起立板を用いず同様の効果があるかを検討する機会があり,いくつかの知見を得たのでここに報告する。


【方法】

対象は63歳,男性。PSPの罹病期間は約3年,PSPRS-Jは16点であった。すくみ足による歩行障害があり,特に座位後の動作で症状が強まる傾向にあった。訪問にて週2回の頻度でリハビリテーションを行っている。研究デザインはシングルケースデザイン(ABABデザイン)を用いた。介入は毎回の運動療法後に行い,各セッションは2回ずつとした。独立変数は大槻らや森ら,池上の研究を参考にし,1分座位を介入A(ベースライン),1分座位直後に立位踵接地・膝完全伸展位を保ちつつ前方への重心移動を5回行うことを介入B(治療介入)とした。重心移動の範囲は,対象自身が下腿三頭筋の伸張を感じるまで,とした。従属変数は5m歩行に要する時間と歩数とし,介入の直前,直後および1分座位後に測定した。その上で,介入前後の差を改善度,介入後と1分座位後の差を効果持続度とし,治療介入の効果とその持続性について検討した。


【結果】

5m歩行時間及び歩数の改善度は,各セッションの順に,介入Aが-0.24秒(-5歩),0.30秒(0歩),-0.31秒(2歩),2.71秒(7歩),介入Bが8.48秒(11歩),7.25秒(11歩),8.46秒(15歩),6.35秒(11歩)であった。効果持続度は,介入Aが-1.03秒(-2歩),-11.06秒(-13歩),-0.50秒(-2歩),-2.81秒(-7歩),介入Bが-7.38秒(-13歩),-10.85秒(-20歩),-9.32秒(-13歩),-6.69秒(-16歩)であった。


【結論】

対象において,今回の治療介入は,すくみ足に対して改善効果があることが示された。これは,先行研究と同様,下腿三頭筋の伸張刺激と前方重心移動によるものと思われる。その効果はあくまで即時的だが,歩行や移乗の直前に行うことで動作改善の一助になると思われる。また,立位にて重心移動ができる環境ならば実施可能なため,在宅における様々な場面で利用できる有効なセルフエクセサイズになると思われる。