[O-NV-16-3] 脳卒中患者を対象とした体幹加速度による歩行の左右対称性の評価の検討
Keywords:脳卒中, 加速度計, 歩行
【はじめに,目的】
歩行中の左右対称性の評価は歩容の評価として重要といわれており,小型3軸加速度計を用いたLissajous Index(以下,LI)が開発された。LIは3軸加速度計で測定した仮想重心の加速度の変化を散布図に描いたLissajous図形を作成した後,Lissajous図形を左右に分けて面積を算出し面積の左右差を求めたものである。LIが小さいほど左右対称となる。LIにより簡便かつ客観的に歩行時の体幹加速度から求めた動的な左右対称性を評価できる。しかし,脳卒中患者においてLIを使用した研究は少ない。本研究はLIの脳卒中患者と健常者の比較及び脳卒中患者での経時的変化からLIの有用性を検討し,脳卒中患者のLIに影響を与える身体機能を検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常者21名(平均年齢63.4歳,男性11名,女性10名),脳卒中患者27名(平均年齢54.1歳,男性22名,女性5名,下肢Brunnstrom recovery stage(以下,Brs)III5名,IV9名,V7名,VI6名)とした。3軸加速度計はLSIメディエンス製歩行分析計MG-M1110™を使用し,背部の第3腰椎の高さに装着した。脳卒中患者は杖を使用せず独歩または装具装着下での歩行とし,快適歩行速度で10mを歩行させ得られた左右と上下の加速度からLIを算出した。脳卒中患者の身体機能評価としてBrs,下肢・体幹運動年齢検査,徒手筋力検査法の腹直筋力,Cybexによる両下肢の膝関節伸展筋力・屈曲筋力,Stroke Impairment Assessment Setの下肢筋緊張・深部感覚,快適歩行速度を測定した。統計学的検討は健常者と脳卒中患者のLIをMann-WhitneyのU検定,脳卒中患者の1回目と1カ月後の測定のLIを対応のあるt検定,装具不使用の患者(20名)のLIと各種身体機能との関連をPearsonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
健常者のLIは平均30.43±26.52,脳卒中患者のLIは平均64.05±45.45であり,健常者よりも脳卒中患者の方が有意にLIが大きかった(p=0.006)。脳卒中患者の1カ月後のLIは平均43.49±44.09であり,1回目測定よりも有意に小さかった(p=0.036)。脳卒中患者1回目測定のLIと快適歩行速度(r=-0.520)と深部感覚(r=-0.631)の間に有意な負の相関が認められた(p<0.05)。
【結論】
LIの脳卒中患者と健常者の差,及び経時的変化を評価できたことから,脳卒中患者において3軸加速度計によるLIは杖を使用しない歩行の左右対称性の経時的変化を評価する指標として有用であると考えられた。さらにLIは快適歩行速度と深部感覚障害と有意な相関が認められた。快適歩行速度は脳卒中患者の股関節周囲の筋力やバランスを反映しているといわれており,体幹加速度により測定された左右対称性は歩行安定性と関連している可能性があると考えられた。また,深部感覚鈍麻が下肢荷重量を減少させるという報告があり,深部感覚鈍麻が重度であるほど麻痺側下肢に十分に荷重できず左右非対称性が増加したと考えられた。
歩行中の左右対称性の評価は歩容の評価として重要といわれており,小型3軸加速度計を用いたLissajous Index(以下,LI)が開発された。LIは3軸加速度計で測定した仮想重心の加速度の変化を散布図に描いたLissajous図形を作成した後,Lissajous図形を左右に分けて面積を算出し面積の左右差を求めたものである。LIが小さいほど左右対称となる。LIにより簡便かつ客観的に歩行時の体幹加速度から求めた動的な左右対称性を評価できる。しかし,脳卒中患者においてLIを使用した研究は少ない。本研究はLIの脳卒中患者と健常者の比較及び脳卒中患者での経時的変化からLIの有用性を検討し,脳卒中患者のLIに影響を与える身体機能を検証することを目的とした。
【方法】
対象は健常者21名(平均年齢63.4歳,男性11名,女性10名),脳卒中患者27名(平均年齢54.1歳,男性22名,女性5名,下肢Brunnstrom recovery stage(以下,Brs)III5名,IV9名,V7名,VI6名)とした。3軸加速度計はLSIメディエンス製歩行分析計MG-M1110™を使用し,背部の第3腰椎の高さに装着した。脳卒中患者は杖を使用せず独歩または装具装着下での歩行とし,快適歩行速度で10mを歩行させ得られた左右と上下の加速度からLIを算出した。脳卒中患者の身体機能評価としてBrs,下肢・体幹運動年齢検査,徒手筋力検査法の腹直筋力,Cybexによる両下肢の膝関節伸展筋力・屈曲筋力,Stroke Impairment Assessment Setの下肢筋緊張・深部感覚,快適歩行速度を測定した。統計学的検討は健常者と脳卒中患者のLIをMann-WhitneyのU検定,脳卒中患者の1回目と1カ月後の測定のLIを対応のあるt検定,装具不使用の患者(20名)のLIと各種身体機能との関連をPearsonの積率相関係数またはSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。
【結果】
健常者のLIは平均30.43±26.52,脳卒中患者のLIは平均64.05±45.45であり,健常者よりも脳卒中患者の方が有意にLIが大きかった(p=0.006)。脳卒中患者の1カ月後のLIは平均43.49±44.09であり,1回目測定よりも有意に小さかった(p=0.036)。脳卒中患者1回目測定のLIと快適歩行速度(r=-0.520)と深部感覚(r=-0.631)の間に有意な負の相関が認められた(p<0.05)。
【結論】
LIの脳卒中患者と健常者の差,及び経時的変化を評価できたことから,脳卒中患者において3軸加速度計によるLIは杖を使用しない歩行の左右対称性の経時的変化を評価する指標として有用であると考えられた。さらにLIは快適歩行速度と深部感覚障害と有意な相関が認められた。快適歩行速度は脳卒中患者の股関節周囲の筋力やバランスを反映しているといわれており,体幹加速度により測定された左右対称性は歩行安定性と関連している可能性があると考えられた。また,深部感覚鈍麻が下肢荷重量を減少させるという報告があり,深部感覚鈍麻が重度であるほど麻痺側下肢に十分に荷重できず左右非対称性が増加したと考えられた。