[O-RS-03-1] 重症COPD患者の動的バランス能力に関連する因子
キーワード:COPD, バランス能力, 重症
【はじめに,目的】
COPD患者は呼吸困難感が増強し,身体活動量の低下が認められ,全身の筋力低下とともにバランス能力が低下する。病期の進行によりバランス能力が低下することが報告されている。今回,増悪リスクが高く症状の多いCOPD患者のバランス能力に関連する因子を検討した。
【方法】
当院に呼吸リハビリテーション入院した安定期COPD患者29名(GOLD区分:Group D,男性:25名,女性4名,年齢:73.0±7.1歳,BMI:21.0±9.1,%FEV1:31.9±18.4%,%VC:64.6±17.5%,酸素使用:19名)を対象とした。除外基準は歩行とバランス能力に影響する他疾患をもつもの,認知症と診断を受けたもの,MMSE24点未満のものとした。対象者に動的バランス能力の評価(Time Up and Go Test;TUG,Berg Balance Scale;BBS)を行った。TUGは椅子座位の状態から3m前方にある目印を周り,元の椅子に戻るまでの所要時間を測定する評価法である。BBSはバランス能力に関連する14項目の動作課題を56点満点で測定する評価法である。その他の評価として喫煙歴と呼吸困難感(modifend Medical Research Council;mMRC),ADL(長崎大学ADL評価表;NRADL),握力,大腿四頭筋筋力(weight bearing index;WBI),運動耐容能(6分間歩行距離と最低酸素飽和度,最高脈拍数,運動前後の自覚症状),健康関連QOL(COPD assessment test;CAT),抑うつ・不安尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)を使用した。動的バランス能力とその他の評価との相関関係について検討を行った。
【結果】
Group DのCOPD患者における動的バランス能力とその他の評価の関連性は,TUGと%FVC(r=-0.507,p=0.005),%VC(r=-0.501,p=0.007),WBI(r=-0.477,p=0.01),6分間歩行距離(r=-0.756,p<0.001),最高脈拍数(r=-0.405,p=0.029),歩行後の胸部症状(r=0.543,p=0.002)に相関がみられた。またBBSとFEV1(r=0.473,p=0.01),FVC(r=-0.443,p=0.016),6分間歩行距離(r=0.417,p=0.025)に相関がみられた。喫煙歴とmMRC,最低酸素飽和度,NRADL,CAT,HADSとは関連性がみられない,もしくは弱い相関であった。
【結論】
Group DのCOPD患者は,病態の進行により胸郭コンプライアンス低下と心肺機能低下,運動耐容能低下,下肢筋力低下が生じ動的バランス能力に影響を及ぼしていることが考えられる。進行した身体機能と心肺機能の低下はバランス能力と関連があるため,早期の段階からバランス評価と転倒予防にむけた介入を行う必要がある。Group DのCOPD患者は増悪リスクが高く症状が多いため,急性増悪の予防と低負荷から段階的に実施が可能な転倒予防プログラムを立案することが重要である。
COPD患者は呼吸困難感が増強し,身体活動量の低下が認められ,全身の筋力低下とともにバランス能力が低下する。病期の進行によりバランス能力が低下することが報告されている。今回,増悪リスクが高く症状の多いCOPD患者のバランス能力に関連する因子を検討した。
【方法】
当院に呼吸リハビリテーション入院した安定期COPD患者29名(GOLD区分:Group D,男性:25名,女性4名,年齢:73.0±7.1歳,BMI:21.0±9.1,%FEV1:31.9±18.4%,%VC:64.6±17.5%,酸素使用:19名)を対象とした。除外基準は歩行とバランス能力に影響する他疾患をもつもの,認知症と診断を受けたもの,MMSE24点未満のものとした。対象者に動的バランス能力の評価(Time Up and Go Test;TUG,Berg Balance Scale;BBS)を行った。TUGは椅子座位の状態から3m前方にある目印を周り,元の椅子に戻るまでの所要時間を測定する評価法である。BBSはバランス能力に関連する14項目の動作課題を56点満点で測定する評価法である。その他の評価として喫煙歴と呼吸困難感(modifend Medical Research Council;mMRC),ADL(長崎大学ADL評価表;NRADL),握力,大腿四頭筋筋力(weight bearing index;WBI),運動耐容能(6分間歩行距離と最低酸素飽和度,最高脈拍数,運動前後の自覚症状),健康関連QOL(COPD assessment test;CAT),抑うつ・不安尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale;HADS)を使用した。動的バランス能力とその他の評価との相関関係について検討を行った。
【結果】
Group DのCOPD患者における動的バランス能力とその他の評価の関連性は,TUGと%FVC(r=-0.507,p=0.005),%VC(r=-0.501,p=0.007),WBI(r=-0.477,p=0.01),6分間歩行距離(r=-0.756,p<0.001),最高脈拍数(r=-0.405,p=0.029),歩行後の胸部症状(r=0.543,p=0.002)に相関がみられた。またBBSとFEV1(r=0.473,p=0.01),FVC(r=-0.443,p=0.016),6分間歩行距離(r=0.417,p=0.025)に相関がみられた。喫煙歴とmMRC,最低酸素飽和度,NRADL,CAT,HADSとは関連性がみられない,もしくは弱い相関であった。
【結論】
Group DのCOPD患者は,病態の進行により胸郭コンプライアンス低下と心肺機能低下,運動耐容能低下,下肢筋力低下が生じ動的バランス能力に影響を及ぼしていることが考えられる。進行した身体機能と心肺機能の低下はバランス能力と関連があるため,早期の段階からバランス評価と転倒予防にむけた介入を行う必要がある。Group DのCOPD患者は増悪リスクが高く症状が多いため,急性増悪の予防と低負荷から段階的に実施が可能な転倒予防プログラムを立案することが重要である。