[O-RS-03-3] 慢性閉塞性肺疾患における運動時の心機能について
キーワード:慢性閉塞性肺疾患(COPD), 心臓超音波検査(心エコー), 心機能
【はじめに,目的】
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,心臓超音波検査(心エコー)の精度向上により,心エコーを用いた心機能評価が着目されている。COPD患者は,無症候性の右心・左心機能低下を伴い,軽症であっても右心・左心機能低下を合併している(Funk GC:2008)。COPD患者の安静時における心機能評価は散見されるが,安静時と運動時の心機能を比較した報告はない。そこで本研究は,運動がCOPD患者の心機能へ及ぼす影響に検討した。
【方法】
対象は,COPD患者15名(年齢78.1歳)とし,COPD国際ガイドライン(GOLD)の分類はI:3名,II:5名,III:5名,IV:2名であった。COPD罹患期間8.8±8.6年,喫煙指数1100±640,BMI 21.6±3.9であった。在宅酸素使用者が3名(GOLD III:1名,GOLD IV:2名)おり,安静時と運動時共に鼻腔カヌラO2 1~2.0 L/minを使用していた。服薬に関しては,全員が気管支拡張薬を吸入していた。心エコーに関して,経験豊富な1名の心臓超音波検査技師が安静時と運動時の心機能評価を行った。右心機能評価としてRV Tei index・RV E/A・RV E/e',左心機能評価としてLV Tei index・LV E/A・LV E/e'・LV EFを測定した。運動時の心エコーにおいて,運動負荷にはリカンベント式エルゴメーターを用い,COPDガイドラインに則り15wattから開始し,1分毎に5 watt増加させた。目標心拍数はカルボーネン法にて至適心拍数60%とし,目標心拍数に達した後に心エコーを行った。統計解析は,SPSSを用い有意水準5%とした。安静時と運動時の心機能の比較にはWilcoxonの符号付順位検定検定を用いた。
【結果】
安静時・運動時における心機能の比較において,RV Tei index 0.39±0.44・0.48±0.35(p<0.05),LV Tei index 0.6±0.28・0.46±0.22(p<0.01),LV E/A 0.70±0.18・0.79±0.17(p<0.01),LV E/e' 8.67±3.09・8.86±2.78(p<0.05),LV EF 68.5±10.3・71±8.2%であった。
【考察】
右室機能において,収縮と拡張機能の総合的評価であるRV Tei indexは,安静時に比して運動時に心機能低下を示した。一方,拡張機能を示すRV E/AやRV E/e'に変化はなかった。Haddad F.らより,右室壁厚は薄くコンプライアンスが高いため拡張障害は起こりにくいとされ,拡張機能より収縮機能低下が考えられた。左室機能において,LV tei indexやEFより収縮機能が改善し,E/A・E/e'より拡張機能に変化はなかった。Brønstad Eらより,COPDに対する中等度の有酸素運動は左室収縮・拡張機能ともに改善をもたらすとされ,本研究結果からも中等度運動による左心機能への悪影響はないと考えられた。
【結論】
COPDに対する中等度の運動は,左心機能に悪影響はなく,右心機能には負荷を与える可能性が考えられた。
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)において,心臓超音波検査(心エコー)の精度向上により,心エコーを用いた心機能評価が着目されている。COPD患者は,無症候性の右心・左心機能低下を伴い,軽症であっても右心・左心機能低下を合併している(Funk GC:2008)。COPD患者の安静時における心機能評価は散見されるが,安静時と運動時の心機能を比較した報告はない。そこで本研究は,運動がCOPD患者の心機能へ及ぼす影響に検討した。
【方法】
対象は,COPD患者15名(年齢78.1歳)とし,COPD国際ガイドライン(GOLD)の分類はI:3名,II:5名,III:5名,IV:2名であった。COPD罹患期間8.8±8.6年,喫煙指数1100±640,BMI 21.6±3.9であった。在宅酸素使用者が3名(GOLD III:1名,GOLD IV:2名)おり,安静時と運動時共に鼻腔カヌラO2 1~2.0 L/minを使用していた。服薬に関しては,全員が気管支拡張薬を吸入していた。心エコーに関して,経験豊富な1名の心臓超音波検査技師が安静時と運動時の心機能評価を行った。右心機能評価としてRV Tei index・RV E/A・RV E/e',左心機能評価としてLV Tei index・LV E/A・LV E/e'・LV EFを測定した。運動時の心エコーにおいて,運動負荷にはリカンベント式エルゴメーターを用い,COPDガイドラインに則り15wattから開始し,1分毎に5 watt増加させた。目標心拍数はカルボーネン法にて至適心拍数60%とし,目標心拍数に達した後に心エコーを行った。統計解析は,SPSSを用い有意水準5%とした。安静時と運動時の心機能の比較にはWilcoxonの符号付順位検定検定を用いた。
【結果】
安静時・運動時における心機能の比較において,RV Tei index 0.39±0.44・0.48±0.35(p<0.05),LV Tei index 0.6±0.28・0.46±0.22(p<0.01),LV E/A 0.70±0.18・0.79±0.17(p<0.01),LV E/e' 8.67±3.09・8.86±2.78(p<0.05),LV EF 68.5±10.3・71±8.2%であった。
【考察】
右室機能において,収縮と拡張機能の総合的評価であるRV Tei indexは,安静時に比して運動時に心機能低下を示した。一方,拡張機能を示すRV E/AやRV E/e'に変化はなかった。Haddad F.らより,右室壁厚は薄くコンプライアンスが高いため拡張障害は起こりにくいとされ,拡張機能より収縮機能低下が考えられた。左室機能において,LV tei indexやEFより収縮機能が改善し,E/A・E/e'より拡張機能に変化はなかった。Brønstad Eらより,COPDに対する中等度の有酸素運動は左室収縮・拡張機能ともに改善をもたらすとされ,本研究結果からも中等度運動による左心機能への悪影響はないと考えられた。
【結論】
COPDに対する中等度の運動は,左心機能に悪影響はなく,右心機能には負荷を与える可能性が考えられた。