[O-RS-03-5] 慢性閉塞性肺疾患患者における肺動脈拡張のCTによる計量評価と労作時低酸素血症について
Keywords:慢性閉塞性肺疾患, PA/A ratio, 労作時低酸素
【はじめに,目的】
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)は,身体機能やQOL低下に影響を与えるとされ,本邦でも増加傾向にある。COPDの増悪は,肺機能およびQOL低下を加速させると報告されている。CTによって検出される肺動脈径(pulmonary artery:PA)の大動脈(ascending aorta:A)に対する比(PA/A ratio)が,COPD増悪に関連することが明らかにされている。また,COPD増悪の一因として,労作時低酸素(Excised induced desaturation:EID)が挙げられ,EIDは6分間歩行試験(six-minutes walking test:6MWT)により簡便に検出することが可能であり,様々な予測因子が報告されている。しかし,EIDとPA/A ratioとの関連についての報告は見受けられない。本研究では,“EIDとPA/A ratioが関連する”という仮説を立てることで,PA/A ratioがEIDに与える影響を明らかにし,6MWTによるPA/A ratioの予測因子について検討することを目的とした。
【方法】
外来通院されるCOPD患者70名を対象とし,後方視的に検討した。本研究の適合基準として,①在宅酸素療法を使用していない,②6MWT,肺機能検査,CT検査を受けた患者を設定した。除外基準は,①外来受診3ヶ月以内に増悪入院歴がある,②貧血を有する,③肺性心を有する場合を設定した。解析項目は,対象者特性,肺機能,6MWT結果,CT所見からPA/A ratioおよび気腫化の程度(LAA%)を後方視的に情報収集した。また,臨床定義は,SpO2≦88%をEIDあり,PA/A ratio>1を肺動脈拡張ありと定義した。統計解析は,①肺動脈拡張の有無で2群に分類し,変数特性に応じχ2検定およびMann-Whitney U検定,②PA/A ratioとの相関関係についてPearsonの積率相関係数,③PA/A ratio>1に対するROC曲線を算出した。統計解析ソフトには,EZR(for Mac)を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
本研究の包含基準を満たした対象者は,56名(男性:40名,女性:16名,年齢:71.5±8.9歳)で,PA/A ratio>1(23名:41.1%),PA/A ratio≦1(33名:58.9%)であった。2群間では,肺拡散能(%DLCO),LAA%,6分間歩行距離(6MWD),安静時SpO2(Baseline SpO2),6MWT中のSpO2最低値(Lowest SpO2),PAで有意差を認めた(p<0.01)。PA/A ratioとの相関関係は,Lowest SpO2(r=-0.70),%DLCO(r=-0.64),6MWD(r=-0.45),Baseline SpO2(r=-0.40),LAA%(r=0.33)で有意差を認めた(p<0.01)。PA/A ratio>1に対するROC曲線は,Lowest SpO2(cut off値:89.0,AUC:0.94,感度:95.7%,特異度:84.4%,陽性的中率:78.3%,陰性的中率:93.8%,陽性尤度比:6.30,陰性尤度比:0.12)で最も精度が高かった。
【結論】
本研究の結果より,6MWT中におけるEIDとPA/A ratioが関連することが明らかになった。理学療法場面で6MWTを実施し,肺動脈拡張の有無をスクリーニングすることで,COPD患者の増悪を早期発見および予防に寄与できる可能性が示唆された。
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)は,身体機能やQOL低下に影響を与えるとされ,本邦でも増加傾向にある。COPDの増悪は,肺機能およびQOL低下を加速させると報告されている。CTによって検出される肺動脈径(pulmonary artery:PA)の大動脈(ascending aorta:A)に対する比(PA/A ratio)が,COPD増悪に関連することが明らかにされている。また,COPD増悪の一因として,労作時低酸素(Excised induced desaturation:EID)が挙げられ,EIDは6分間歩行試験(six-minutes walking test:6MWT)により簡便に検出することが可能であり,様々な予測因子が報告されている。しかし,EIDとPA/A ratioとの関連についての報告は見受けられない。本研究では,“EIDとPA/A ratioが関連する”という仮説を立てることで,PA/A ratioがEIDに与える影響を明らかにし,6MWTによるPA/A ratioの予測因子について検討することを目的とした。
【方法】
外来通院されるCOPD患者70名を対象とし,後方視的に検討した。本研究の適合基準として,①在宅酸素療法を使用していない,②6MWT,肺機能検査,CT検査を受けた患者を設定した。除外基準は,①外来受診3ヶ月以内に増悪入院歴がある,②貧血を有する,③肺性心を有する場合を設定した。解析項目は,対象者特性,肺機能,6MWT結果,CT所見からPA/A ratioおよび気腫化の程度(LAA%)を後方視的に情報収集した。また,臨床定義は,SpO2≦88%をEIDあり,PA/A ratio>1を肺動脈拡張ありと定義した。統計解析は,①肺動脈拡張の有無で2群に分類し,変数特性に応じχ2検定およびMann-Whitney U検定,②PA/A ratioとの相関関係についてPearsonの積率相関係数,③PA/A ratio>1に対するROC曲線を算出した。統計解析ソフトには,EZR(for Mac)を使用し,有意水準5%未満とした。
【結果】
本研究の包含基準を満たした対象者は,56名(男性:40名,女性:16名,年齢:71.5±8.9歳)で,PA/A ratio>1(23名:41.1%),PA/A ratio≦1(33名:58.9%)であった。2群間では,肺拡散能(%DLCO),LAA%,6分間歩行距離(6MWD),安静時SpO2(Baseline SpO2),6MWT中のSpO2最低値(Lowest SpO2),PAで有意差を認めた(p<0.01)。PA/A ratioとの相関関係は,Lowest SpO2(r=-0.70),%DLCO(r=-0.64),6MWD(r=-0.45),Baseline SpO2(r=-0.40),LAA%(r=0.33)で有意差を認めた(p<0.01)。PA/A ratio>1に対するROC曲線は,Lowest SpO2(cut off値:89.0,AUC:0.94,感度:95.7%,特異度:84.4%,陽性的中率:78.3%,陰性的中率:93.8%,陽性尤度比:6.30,陰性尤度比:0.12)で最も精度が高かった。
【結論】
本研究の結果より,6MWT中におけるEIDとPA/A ratioが関連することが明らかになった。理学療法場面で6MWTを実施し,肺動脈拡張の有無をスクリーニングすることで,COPD患者の増悪を早期発見および予防に寄与できる可能性が示唆された。