第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本呼吸理学療法学会 一般演題口述
(呼吸)05

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:山下康次(市立函館病院 中央医療技術部リハビリ技術科)

[O-RS-05-1] 術後に誤嚥性肺炎を発症した大腿骨近位部骨折患者の特徴とその要因

宮脇直人1, 山田真弓1, 小縣優1, 吉本大志1, 大西純二2 (1.医療法人きたじま倚山会きたじま田岡病院リハビリテーション科, 2.医療法人きたじま倚山会きたじま田岡病院整形外科)

Keywords:大腿骨近位部骨折, 誤嚥性肺炎, 周術期管理

【はじめに,目的】大腿骨近位部骨折は,今後増加が予想される重要な骨折である。術前後よりPTが介入しているが,術後に誤嚥性肺炎を発症する患者は少なからず存在し,予後にも大きな影響を与えている。しかし運動器疾患であるため,通常STの介入は無い。そこでPTの介入であっても早期発見・予防のできる対策を講じるため,大腿骨近位部骨折の術後に誤嚥性肺炎を発症する患者の特徴と要因を把握することを研究の目的とした。

【方法】2014年1月~2015年4月の間に,大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折,大腿骨転子部骨折)のため,当院に入院・手術を受けた90例を対象とした。当院電子カルテより後方視的にデータを収集し,血液データ(TP,WBC,Hb,Alb),年齢,受傷~手術までの日数,手術~離床までの日数,手術~歩行訓練開始までの日数を対応のないt検定で誤嚥性肺炎発症群と非発症群で比較した。また性別,入院初日の食事介助量,術前リハビリの有無,受傷前の屋内歩行手段,認知機能低下の有無,神経筋疾患の並存,呼吸器疾患の並存・既往,脳卒中の既往の有無をχ2検定で誤嚥性肺炎の有無と各要因との関係を調べた。更に誤嚥性肺炎発症の独立した危険因子を推定するため,ロジスティック回帰分析(変数増加法)を対応のないt検定やχ2検定で有意差のあった項目を優先的に投入して行った。統計解析ソフトはJSTATを使用し,統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】術後に誤嚥性肺炎を発症した者は5例であり,全体の5.5%であった。対応のないt検定の結果,TPとHbに有意な差が認められた。またχ2検定の結果,受傷前の屋内歩行手段,入院初日の食事介助量,呼吸器疾患の並存・既往,神経筋疾患の並存で有意な差が認められた。更にロジスティック回帰分析の結果,TP,Hb,手術~離床までの日数が選択され,手術~離床までの日数が有意に独立した因子であると示された。

【結論】術後に誤嚥性肺炎を発症する患者の特徴として,低栄養(TP・Hbの低下),低活動や低ADL(屋内歩行に上肢支持が必要・歩行困難,食事の介助量が多い),基礎疾患(呼吸器疾患・神経筋疾患)による嚥下機能の低下が示された。また術後に離床が遅延する症例において,誤嚥性肺炎発症のリスクが高いことが示された。以上の結果から,受傷前から低活動や低栄養,また基礎疾患を並存する者が骨折や術後の安静の影響により,廃用が進行し,嚥下機能・免疫力の低下を招き,更に全身状態が不良となり離床が遅延することで,誤嚥性肺炎発症のリスクが高まると考える。術後の誤嚥性肺炎を予防するためには,まず入院直後から発症高リスク患者を選別する必要がある。そしてPTは他職種と情報を共有し,各々の専門性を活かしながら,チームで術後の誤嚥性肺炎の早期発見・予防に繋げる必要があると考える。今後,当院のPTは更に知識や技術を習得し,チームの一員として積極的に関われるよう,取り組んでいきたい。