[O-RS-05-2] 高齢肺炎患者の退院時の歩行自立度に影響を与える因子
キーワード:高齢肺炎患者, CS-30, 栄養
【目的】
高齢肺炎患者は入院を機にADLが制限され,在宅生活の維持が困難となり,転機先が変更となる症例を多く経験する。また,在宅復帰のための要因としては様々な報告があるが,中でも歩行の自立は重要な因子である。これらのことから,歩行自立の成否を早期にスクリーニングし,介入することは重要である。本研究では高齢肺炎患者の退院時の歩行自立度に影響を与える因子について調査することを目的とした。
【方法】
対象は平成26年9月から平成27年9月まで当院に入院加療を要し,ADL向上目的に理学療法介入があり,十分に評価可能であった肺炎患者31例(男性:17名,女性14名,平均年齢81.2±6.7歳,平均治療期間23.6±19.9日)とした。除外基準は重度の認知症等により以下に示す調査項目が測定不可能であった症例,死亡退院とした。調査項目は診療録より後方視的に収集した。測定項目は基本情報(年齢,性別,Body Mass Index:以下BMI),採血データ(入院時のCRP・WBC・eGFR・Alb)とした。下肢筋力評価は介入時の30-sec Chair stand test(以下CS-30)を用いた。退院時の歩行能力自立基準はFunctional Independence Measure(以下FIM)で6点以上,かつtimed up and go test(以下TUG)が13.5秒以下とし,自立群(10人)と非自立群(21人)に分類した。
統計学的解析方法は,各調査項目の群間比較に対応のないt検定,χ2検定を用いた。また単変量解析の結果,統計学的に有意であった因子を独立変数,歩行自立の成否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行い,退院時の歩行能力に影響を及ぼす因子を検討した。さらに,有意な因子が抽出された場合,Receiver Operation Characteristic Curve(以下ROC曲線)によって曲線下面積,カットオフ値,感度,特異度を検討した。なお,統計処理はStatMate ver 4.01を用い,危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
Alb(自立群3.3±0.4g/dl,非自立群2.8±0.5g/dl,p=0.011),CS-30(自立群12.1±2.8回,非自立群1.4±2.9回,p<0.001)はいずれも自立群の方が有意に高かった。その他の項目には有意差は認めなかった。次に,単変量解析の結果から有意差が認められたAlb,CS-30を独立変数,歩行自立の成否を従属変数とするロジスティック回帰分析では,CS-30(オッズ比1.583,p=0.003,95%信頼区間1.162-2.155)が独立した因子として抽出された。CS-30のROC曲線の曲線下面積は0.972,カットオフ値は9.5回と算出され,感度95.0%,特異度90.0%であった。
【結論】
低栄養の高齢者では,骨格筋の筋肉量や筋力の低下を認めやすいとされており,これらがADL低下を招くことが知られている。本研究の結果からも歩行自立度には下肢筋力,栄養状態が関連しており,先行研究を支持する結果であった。また,退院時の歩行自立度には介入時のCS-30が独立した因子として抽出され,歩行自立には介入時のCS-30が9~10回以上必要であることが示唆された。
高齢肺炎患者は入院を機にADLが制限され,在宅生活の維持が困難となり,転機先が変更となる症例を多く経験する。また,在宅復帰のための要因としては様々な報告があるが,中でも歩行の自立は重要な因子である。これらのことから,歩行自立の成否を早期にスクリーニングし,介入することは重要である。本研究では高齢肺炎患者の退院時の歩行自立度に影響を与える因子について調査することを目的とした。
【方法】
対象は平成26年9月から平成27年9月まで当院に入院加療を要し,ADL向上目的に理学療法介入があり,十分に評価可能であった肺炎患者31例(男性:17名,女性14名,平均年齢81.2±6.7歳,平均治療期間23.6±19.9日)とした。除外基準は重度の認知症等により以下に示す調査項目が測定不可能であった症例,死亡退院とした。調査項目は診療録より後方視的に収集した。測定項目は基本情報(年齢,性別,Body Mass Index:以下BMI),採血データ(入院時のCRP・WBC・eGFR・Alb)とした。下肢筋力評価は介入時の30-sec Chair stand test(以下CS-30)を用いた。退院時の歩行能力自立基準はFunctional Independence Measure(以下FIM)で6点以上,かつtimed up and go test(以下TUG)が13.5秒以下とし,自立群(10人)と非自立群(21人)に分類した。
統計学的解析方法は,各調査項目の群間比較に対応のないt検定,χ2検定を用いた。また単変量解析の結果,統計学的に有意であった因子を独立変数,歩行自立の成否を従属変数としたロジスティック回帰分析を行い,退院時の歩行能力に影響を及ぼす因子を検討した。さらに,有意な因子が抽出された場合,Receiver Operation Characteristic Curve(以下ROC曲線)によって曲線下面積,カットオフ値,感度,特異度を検討した。なお,統計処理はStatMate ver 4.01を用い,危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
Alb(自立群3.3±0.4g/dl,非自立群2.8±0.5g/dl,p=0.011),CS-30(自立群12.1±2.8回,非自立群1.4±2.9回,p<0.001)はいずれも自立群の方が有意に高かった。その他の項目には有意差は認めなかった。次に,単変量解析の結果から有意差が認められたAlb,CS-30を独立変数,歩行自立の成否を従属変数とするロジスティック回帰分析では,CS-30(オッズ比1.583,p=0.003,95%信頼区間1.162-2.155)が独立した因子として抽出された。CS-30のROC曲線の曲線下面積は0.972,カットオフ値は9.5回と算出され,感度95.0%,特異度90.0%であった。
【結論】
低栄養の高齢者では,骨格筋の筋肉量や筋力の低下を認めやすいとされており,これらがADL低下を招くことが知られている。本研究の結果からも歩行自立度には下肢筋力,栄養状態が関連しており,先行研究を支持する結果であった。また,退院時の歩行自立度には介入時のCS-30が独立した因子として抽出され,歩行自立には介入時のCS-30が9~10回以上必要であることが示唆された。