[O-SK-01-2] 中足指節関節の背屈運動を再現できる短下肢装具が痙直型片麻痺児1症例の歩行動作に及ぼす影響
キーワード:短下肢装具, 歩行, 痙直型片麻痺
【はじめに】
ヒトの歩行において,中足指節関節は立脚終期から前遊脚期に背屈し,下肢を前進させるトウロッカーとして働く。しかし,既存の短下肢装具(Ankle Foot Orthosis:以下AFO)は,足底部分が硬質素材で構成され,この部分の可動性が阻害される。そこで,柔軟性と曲げ耐性を兼ね備えた炭素繊維強化プラスチックを用いて,中足指節関節の背屈運動を再現できるAFOを試作した(特許出願中)。本研究の目的は,試作したAFOが歩行に及ぼす影響を把握することである。
【方法】
対象は,7歳8か月の痙直型右片麻痺を呈する脳性麻痺男児1名である。
対象児には,試作AFO以外に,既存AFO,および裸足の3条件で速度を規定せず歩行を実施してもらった。なお,使用するAFOの関節角度は足関節底背屈0度,背屈フリーに設定している。そして,10mの歩行路の中央部に1枚の床反力計(100Hz)と動作解析システムに付属するデジタルカメラ2台(30Hz)を右側方に設置した。そして,右下肢の前脛骨筋と腓腹筋(外側)に表面筋電計(1000Hz),膝関節・外果・踵骨・第5中足骨にマーカーを貼付した。そして,各条件で右足が床反力計に接地した歩行を,5回ずつ記録した。
これらの記録から周期時間,関節角度,下肢の垂直分力および下肢対象筋の活動を算出した。関節角度は,足関節の踵接地,足趾離地,および立脚期と遊脚期の最大背屈を示す角度を求めた。垂直分力は,荷重応答期と立脚終期のピーク値を体重で除した値(%)を算出した。筋活動は,Root Mean Squareにより平滑化し,周期中の最大振幅値で正規化した値(%EMG)を算出し,筋活動の傾向を把握した。統計処理は,一元配置の分散分析を実施し,有意差を認めた場合は既存AFOを参照カテゴリーとしDunnettの多重比較法を行った。有意確率は5%未満とした。
【結果】
周期時間に関しては,比較した3条件で有意差を認めなかった。
足関節背屈角度は,既存AFOは裸足より足趾離地時に有意に増加した(P<0.01)が,試作AFOは既存AFOよりすべての地点で有意な増加を示した(P<0.01)。
下肢の垂直分力は,既存AFOは裸足より荷重応答期のピーク値が有意に増加したが(P<0.01),試作AFOは既存AFOより有意に減少した(P<0.05)。一方,立脚終期のピーク値においては既存AFOと裸足の条件で有意差を認めなかったが,試作AFOは既存AFOより有意に増加した(P<0.01)。
最後に筋活動は,試作AFOは遊脚初期から中期にかけて前脛骨筋の筋活動が増大している傾向を示した。
【結論】
我々が試作したAFOは,歩行において足関節を背屈位に保持しやすく,下肢が床面に接触する際の衝撃緩衝および蹴り出し力の改善が期待できる。今後は,脳性麻痺のみならず脳卒中片麻痺者を対象に,より大きなサンプルで実証的研究が求められる。
【謝辞】
本AFOの実用化に向け,科学技術振興機構平成27年度マッチングプランナー「探索試験」の助成を受け,実施している。
ヒトの歩行において,中足指節関節は立脚終期から前遊脚期に背屈し,下肢を前進させるトウロッカーとして働く。しかし,既存の短下肢装具(Ankle Foot Orthosis:以下AFO)は,足底部分が硬質素材で構成され,この部分の可動性が阻害される。そこで,柔軟性と曲げ耐性を兼ね備えた炭素繊維強化プラスチックを用いて,中足指節関節の背屈運動を再現できるAFOを試作した(特許出願中)。本研究の目的は,試作したAFOが歩行に及ぼす影響を把握することである。
【方法】
対象は,7歳8か月の痙直型右片麻痺を呈する脳性麻痺男児1名である。
対象児には,試作AFO以外に,既存AFO,および裸足の3条件で速度を規定せず歩行を実施してもらった。なお,使用するAFOの関節角度は足関節底背屈0度,背屈フリーに設定している。そして,10mの歩行路の中央部に1枚の床反力計(100Hz)と動作解析システムに付属するデジタルカメラ2台(30Hz)を右側方に設置した。そして,右下肢の前脛骨筋と腓腹筋(外側)に表面筋電計(1000Hz),膝関節・外果・踵骨・第5中足骨にマーカーを貼付した。そして,各条件で右足が床反力計に接地した歩行を,5回ずつ記録した。
これらの記録から周期時間,関節角度,下肢の垂直分力および下肢対象筋の活動を算出した。関節角度は,足関節の踵接地,足趾離地,および立脚期と遊脚期の最大背屈を示す角度を求めた。垂直分力は,荷重応答期と立脚終期のピーク値を体重で除した値(%)を算出した。筋活動は,Root Mean Squareにより平滑化し,周期中の最大振幅値で正規化した値(%EMG)を算出し,筋活動の傾向を把握した。統計処理は,一元配置の分散分析を実施し,有意差を認めた場合は既存AFOを参照カテゴリーとしDunnettの多重比較法を行った。有意確率は5%未満とした。
【結果】
周期時間に関しては,比較した3条件で有意差を認めなかった。
足関節背屈角度は,既存AFOは裸足より足趾離地時に有意に増加した(P<0.01)が,試作AFOは既存AFOよりすべての地点で有意な増加を示した(P<0.01)。
下肢の垂直分力は,既存AFOは裸足より荷重応答期のピーク値が有意に増加したが(P<0.01),試作AFOは既存AFOより有意に減少した(P<0.05)。一方,立脚終期のピーク値においては既存AFOと裸足の条件で有意差を認めなかったが,試作AFOは既存AFOより有意に増加した(P<0.01)。
最後に筋活動は,試作AFOは遊脚初期から中期にかけて前脛骨筋の筋活動が増大している傾向を示した。
【結論】
我々が試作したAFOは,歩行において足関節を背屈位に保持しやすく,下肢が床面に接触する際の衝撃緩衝および蹴り出し力の改善が期待できる。今後は,脳性麻痺のみならず脳卒中片麻痺者を対象に,より大きなサンプルで実証的研究が求められる。
【謝辞】
本AFOの実用化に向け,科学技術振興機構平成27年度マッチングプランナー「探索試験」の助成を受け,実施している。