[O-SK-01-3] 健常成人における一側の足長延長が定常歩行に及ぼす影響
Keywords:AFO-foot combination, 足長延長, 歩行
【はじめに】装具の適合判定は,装具自体の構造と患側という同側内の関係に着目したものが殆どである。だが,装具装着下肢と健側の間には装具やその上から履く靴により装具装着下肢の足長が長くなるという差が生じる。Owen(2010)らは,短下肢装具と靴のコンビネーションが下腿の動きに影響を及ぼすという報告を行っており,装具と靴との連携(AFO-Foot wear Combination,AFOFC)の重要性を示している。また,Fatone(2009)らは,足長を中足骨まで短くする事が歩行に与える影響を検証したが,足長が延長した場合の報告はない。そこで本研究の目的は,健常成人の一側下肢に対して足長延長を行い,その非対称性が歩行に与える影響を調べた。
【方法】検定力分析で必要サンプルサイズは15名となった。被験者は16名(男女各8名)で,年齢24±2.55歳,身長176.5±3.18cm,体重62.88±5.5kgであった。計測機器は三次元動作解析(VICON Nexus)と床反力計(AMTI)を用い,サンプリングは100Hzとした。計測指標は時間・空間的指標と下肢の運動学・運動力学的指標とし,矢状面のデータを用いた。同一被験者に対し,バレーシューズを履いた状態での歩行(Normal,N)と足長延長(Foot-plate length extension,FP)の2条件を設定し,ランダム化し計測した。FPはFatoneらの研究を参考に,実足長より4.5/4cm(約3cm)の延長を右下肢に行った。統計は各指標のピーク値を抜き取り,Shapiro-Wilkによる正規性の検定の後,対応のあるt検定とWilcoxon符号付順位検定を用いた。効果量はCohen's dとrを用いた。
【結果】Nに対してのFPは,歩行率と歩行速度に有意差がありFPで減少した。ステップ長とストライド長は有意差がなかった。関節角度は立脚後期の股関節と,遊脚中期の膝関節,足関節の立脚期と遊脚期の全てのピーク値に有意差があった。トルクは立脚期初期の股関節で有意差がみられ,FP群の方が高い値を示した以外有意差はなかった。パワーは,股関節の荷重応答期,膝関節の立脚後期と遊脚中期,足関節の立脚後期に有意差がありFPで減少した。
【結論】本研究は健常成人に対し,足長の非対称性が歩行に与える影響を調べた。結果,FPは歩行率と歩行速度の遅延をもたらし,かつ立脚後期の股関節伸展角度の減少と足関節背屈角度の増加,遊脚期の膝関節屈曲と足関節背屈角度の増加という代償動作を生じさせた。トルクへの大きな影響はみられなかったが,立脚後期の足関節パワーが特に減少した。同時期のトルクに有意差がみられないことから,FPは角速度に影響を及ぼしたと考える。Rquiano(2005)やMillot(2007)らは,片麻痺の歩行率や歩行速度の低下は股関節伸展筋と足関節底屈筋力の減少が影響すると報告しているが,本研究の結果より,脳卒中などの病態を呈した症例に足長を延長するような装具や靴を履かせる状況を作った場合,関節の代償動作を生じ,足関節周りで発揮する筋力等に影響を及ぼす可能性が示唆された。
【方法】検定力分析で必要サンプルサイズは15名となった。被験者は16名(男女各8名)で,年齢24±2.55歳,身長176.5±3.18cm,体重62.88±5.5kgであった。計測機器は三次元動作解析(VICON Nexus)と床反力計(AMTI)を用い,サンプリングは100Hzとした。計測指標は時間・空間的指標と下肢の運動学・運動力学的指標とし,矢状面のデータを用いた。同一被験者に対し,バレーシューズを履いた状態での歩行(Normal,N)と足長延長(Foot-plate length extension,FP)の2条件を設定し,ランダム化し計測した。FPはFatoneらの研究を参考に,実足長より4.5/4cm(約3cm)の延長を右下肢に行った。統計は各指標のピーク値を抜き取り,Shapiro-Wilkによる正規性の検定の後,対応のあるt検定とWilcoxon符号付順位検定を用いた。効果量はCohen's dとrを用いた。
【結果】Nに対してのFPは,歩行率と歩行速度に有意差がありFPで減少した。ステップ長とストライド長は有意差がなかった。関節角度は立脚後期の股関節と,遊脚中期の膝関節,足関節の立脚期と遊脚期の全てのピーク値に有意差があった。トルクは立脚期初期の股関節で有意差がみられ,FP群の方が高い値を示した以外有意差はなかった。パワーは,股関節の荷重応答期,膝関節の立脚後期と遊脚中期,足関節の立脚後期に有意差がありFPで減少した。
【結論】本研究は健常成人に対し,足長の非対称性が歩行に与える影響を調べた。結果,FPは歩行率と歩行速度の遅延をもたらし,かつ立脚後期の股関節伸展角度の減少と足関節背屈角度の増加,遊脚期の膝関節屈曲と足関節背屈角度の増加という代償動作を生じさせた。トルクへの大きな影響はみられなかったが,立脚後期の足関節パワーが特に減少した。同時期のトルクに有意差がみられないことから,FPは角速度に影響を及ぼしたと考える。Rquiano(2005)やMillot(2007)らは,片麻痺の歩行率や歩行速度の低下は股関節伸展筋と足関節底屈筋力の減少が影響すると報告しているが,本研究の結果より,脳卒中などの病態を呈した症例に足長を延長するような装具や靴を履かせる状況を作った場合,関節の代償動作を生じ,足関節周りで発揮する筋力等に影響を及ぼす可能性が示唆された。