[O-SK-01-5] ホンダ製歩行アシストを脊髄損傷不全麻痺者に使用した経験
Keywords:ロボットリハビリテーション, 歩行, 脊髄不全麻痺
【はじめに,目的】
ホンダ製歩行アシスト(以下,歩行アシスト)は,骨盤部に装着した本体にあるアクチュエータにより,大腿部のフレームを通じて,股関節の屈曲,伸展運動をアシストする歩行補助装置である。アクチュエータに取り付けた関節角度センサから装着者の股関節運動を計測し,最大伸展と接地時の関節角度により歩幅を制御し,一歩あたりの所要時間の増減により歩調を制御するよう開発されている。歩行アシストは歩幅[m]と歩調[歩/分]の双方の制御によって,目標とした歩行比に誘導することが可能である。このように,股関節の運動を補助することは,脊髄損傷不全麻痺者の歩行の改善に影響する可能性があると考えられるが,それについての報告は未だ少ない現状である。
今回,歩行アシストを用いた歩行練習を行うことで脊髄損傷不全麻痺者の歩行能力の向上が見られたため報告する。
【方法】
対象は頸髄損傷(C3-7椎弓形成術後)を受傷した40歳代の男性である。受傷後日数88日,四肢不全麻痺を呈し,ASIA impairment scale D。歩行能力はFunctional Ambulation Category(以下,FAC)にて3点であった。
方法はABA法を採用し,最初のAは基礎水準期(以下,A1期),Bは介入期(以下,B期),2つ目のAは操作撤回期(以下,A2期)とし,各期はそれぞれ1週間とした。プラセボ効果を除外するため,期間中歩行アシストを用いて歩行練習を行うが,A1期およびA2期ではアシストを行わず,B期ではアシストを行い練習を行った。股関節の屈伸運動に対するアシスト強度の設定は,患者の歩きやすさと理学療法士の観察をもとに調節した。
歩行に関する評価指標は,歩行速度(m/min),歩行率(steps/min),歩幅(m)とし,最大歩行速度にて10m歩行テストを2回行い,平均値を求めて算出した。また歩行時の歩行筋電図解析も同時に調べた。測定時期は,開始時,A1期終了時(以下,A1期後),B期終了時(以下,B期後),A2期終了時(以下,A2期後)の計4回測定した。
【結果】
歩行速度は,開始時46.2,A1期後46.8,B期後54.9,A2期後61.6。歩行率は,開始時99.4,A1期後100.6,B期後107.0,A2期後107.9。歩幅は,開始時0.47,A1期後0.47,B期後0.51,A2期後0.57。
歩行筋電図においては,B期後に開始時,A1期後に見られなかった立脚後期~遊脚初期にかけての下腿三頭筋の筋活動が見られるようになった。
歩行能力はB期後にロフストランド杖自立となり,FACにて4点と向上が見られた。
【結論】
今回,脊髄損傷不全麻痺者に対して通常の理学療法に加え歩行アシストを用いた歩行練習を一定期間行うことで,歩行速度,歩行率,歩幅において増大が見られ,歩行能力の向上に繋げることができた。
歩行アシストを用いた歩行練習を行うことで,患者の治療的学習を促進するのに効果的であると考えられる。
ホンダ製歩行アシスト(以下,歩行アシスト)は,骨盤部に装着した本体にあるアクチュエータにより,大腿部のフレームを通じて,股関節の屈曲,伸展運動をアシストする歩行補助装置である。アクチュエータに取り付けた関節角度センサから装着者の股関節運動を計測し,最大伸展と接地時の関節角度により歩幅を制御し,一歩あたりの所要時間の増減により歩調を制御するよう開発されている。歩行アシストは歩幅[m]と歩調[歩/分]の双方の制御によって,目標とした歩行比に誘導することが可能である。このように,股関節の運動を補助することは,脊髄損傷不全麻痺者の歩行の改善に影響する可能性があると考えられるが,それについての報告は未だ少ない現状である。
今回,歩行アシストを用いた歩行練習を行うことで脊髄損傷不全麻痺者の歩行能力の向上が見られたため報告する。
【方法】
対象は頸髄損傷(C3-7椎弓形成術後)を受傷した40歳代の男性である。受傷後日数88日,四肢不全麻痺を呈し,ASIA impairment scale D。歩行能力はFunctional Ambulation Category(以下,FAC)にて3点であった。
方法はABA法を採用し,最初のAは基礎水準期(以下,A1期),Bは介入期(以下,B期),2つ目のAは操作撤回期(以下,A2期)とし,各期はそれぞれ1週間とした。プラセボ効果を除外するため,期間中歩行アシストを用いて歩行練習を行うが,A1期およびA2期ではアシストを行わず,B期ではアシストを行い練習を行った。股関節の屈伸運動に対するアシスト強度の設定は,患者の歩きやすさと理学療法士の観察をもとに調節した。
歩行に関する評価指標は,歩行速度(m/min),歩行率(steps/min),歩幅(m)とし,最大歩行速度にて10m歩行テストを2回行い,平均値を求めて算出した。また歩行時の歩行筋電図解析も同時に調べた。測定時期は,開始時,A1期終了時(以下,A1期後),B期終了時(以下,B期後),A2期終了時(以下,A2期後)の計4回測定した。
【結果】
歩行速度は,開始時46.2,A1期後46.8,B期後54.9,A2期後61.6。歩行率は,開始時99.4,A1期後100.6,B期後107.0,A2期後107.9。歩幅は,開始時0.47,A1期後0.47,B期後0.51,A2期後0.57。
歩行筋電図においては,B期後に開始時,A1期後に見られなかった立脚後期~遊脚初期にかけての下腿三頭筋の筋活動が見られるようになった。
歩行能力はB期後にロフストランド杖自立となり,FACにて4点と向上が見られた。
【結論】
今回,脊髄損傷不全麻痺者に対して通常の理学療法に加え歩行アシストを用いた歩行練習を一定期間行うことで,歩行速度,歩行率,歩幅において増大が見られ,歩行能力の向上に繋げることができた。
歩行アシストを用いた歩行練習を行うことで,患者の治療的学習を促進するのに効果的であると考えられる。