第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本支援工学理学療法学会 一般演題口述
(支援工学)01

Fri. May 27, 2016 5:10 PM - 6:10 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:田辺茂雄(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科), 前田慶明(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 統合健康科学部門)

[O-SK-01-6] 膝関節術後症例のextension lagについて

HAL単関節タイプでの即時的改善を踏まえた一考察

小谷尚也, 吉村ゆかり, 後藤恭輔 (福岡大学病院リハビリテーション部)

Keywords:膝関節, extension lag, HAL単関節タイプ(HAL-SJ)

【はじめに,目的】

臨床上,膝関節疾患,特に膝関節術直後の症例において膝関節の自動伸展不全(extension lag)をしばしば経験する。今回,extension lagを有する膝関節術後症例に対しHAL単関節タイプ(以下,HAL-SJ)を用いた膝伸展運動を行い,その結果を踏まえ,extension lagの原因に関し若干の見解を得たため,ここに報告する。


【方法】

対象は,2014年8月~2015年8月の間に当院にて人工膝関節全置換術(以下,TKA),人工膝関節単顆置換術(以下,UKA),高位脛骨骨切り術(以下HTO),半月板縫合術(以下半月板)を施行し,術後5°以上のextension lagを有した21例21膝(平均年齢69.8±10.3歳,男性5膝,女性16膝)とした。膝伸展運動により著明な疼痛を生じる症例は除外した。対象者を無作為に,早期HAL-SJ実施群(TKA6例,UKA2例,HTO3例,半月板1例),後期HAL-SJ実施群(TKA5例,HTO3例,半月板1例)の2群に分け,早期群には通常の理学療法に加え,術後4日時点より週3回のHAL-SJを用いた自動膝伸展運動を各30回実施,後期群には通常の理学療法に加え,術後4日時点より週3回の自動介助での膝伸展運動を各30回,術後11日時点でHAL-SJを用いた自動膝伸展運動を30回実施し,各時点での運動前後のextension lagの比較を行った。また,術後4日前後,11日前後のCRP値,膝蓋骨上縁の周径を測定した。統計解析にはWilcoxonの符号付順位検定およびMann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%とした。


【結果】

両群のHAL-SJ実施前後比較にてextension lagの有意な改善を認めた(早期群P<0.01,後期群0.01<P<0.05)。自動介助運動では実施前後の有意差は認めなかった。早期群と後期群の改善率の比較では早期群に有意な改善を認めた(0.01<P<0.05)。また,術後11日時点での運動実施前のextension lagも早期群に有意な改善を認めた(0.01<P<0.05)。CRP値,周径に関しては4日時点,11日時点で両群間に有意差を認めなかった。


【結論】

今回の結果より,HAL-SJを用いた自動膝伸展運動にて,特に術後早期より開始することでextension lagの即時的な改善を得ることが示唆された。今回,水腫や腫脹の影響を考慮しCRP値,周径差を比較したが両群間に有意差は無く,また,HAL-SJ実施後に即時的な改善がみられたことからも,膝関節術後のextension lagには水腫や腫脹の影響は小さいのではないかと推測される。坂本らはTKA術後症例の膝伸展不全には縫工筋と大腿筋膜張筋の過活動が関与していることを報告している。HAL-SJを用いた運動において症例からは「楽に膝が伸ばせた」,「力の入れ方がわかった」との訴えがあり,また,HAL-SJ実施中の大腿四頭筋の活動電位の変化からも上記の過剰収縮が抑制され,適切な運動パターンを学習出来た可能性が示唆される。今後は,筋電図等を用い,HAL-SJ実施中および実施前後の各筋の筋活動を測定し,extension lagの更なる原因解明に努めたい。