[O-SK-02-1] 脳卒中片麻痺患者に歩行練習アシストを用い歩容に改善がみられた一症例
Keywords:歩行練習アシスト, 脳卒中片麻痺, 回復期
【はじめに】
近年,リハビリテーション医療におけるロボットの介入により,重症例においても歩行練習を実施することが可能となってきた。2015年よりトヨタ自動車が藤田保健衛生大学と共同で開発した歩行練習アシストGait Exercise Assist Robot(以下GEAR)が国内約20施設において運用開始されており,当院でも導入実施している。GEARは長下肢装具型ロボット,低床型トレッドミル,安全懸架装置,ロボット免荷装置,患者用モニタ,操作パネルから構成されており,麻痺側立脚期の膝伸展と遊脚期の下肢の振り出しのアシストが可能である。今回,GEARによる歩行練習を実施した症例を経験したので,ここに報告する。
【方法】
対象は右被殻出血を発症した60歳代男性。発症63日目よりGEARによる歩行練習を開始した。GEAR開始時の麻痺側下肢機能は,Stroke Impairment Assesment Set(以下SIAS)にてHip-flexion 3,Knee-extension 3,Foot-pat 3,表在感覚1,深部感覚1であった。歩行はT字杖使用して一部介助で,麻痺側遊脚時足尖の引っかかりがみられ分廻し歩行を認めた。また非麻痺側方向への重心移動が不十分で,麻痺側に重心位置が偏位する傾向にあった。GEAR練習は1回40分を週5回,計3週間実施した。練習開始前後で10m歩行スピード(km/h),重複歩距離(cm),歩行対称性を時間的対称指標(TS_index=(麻痺側遊脚時間/麻痺側立脚時間)/(非麻痺側遊脚時間/非麻痺側立脚時間))(1に近い程対称)を用い評価した。
【結果】
GEAR練習終了時の麻痺側下肢機能は,SIASにてHip-flexion 4,Knee-extension 4,Foot-pat 4と向上,表在・深部感覚は変化なかった。歩行スピードは開始前0.85km/hであったが終了時3.39km/hとなり,重複歩距離も74cmから111cmとなった。歩行対称性に関しては開始前がTS_index=1.25であったが終了時は1.00となった。歩行に関しては非麻痺側への重心移動が円滑に行えるようになり,麻痺側遊脚時の足尖の引っかかりや分廻しも消失し,独歩見守りとなった。
【結論】
本症例はGEAR練習により歩行スピードが向上し,左右対称な歩行となった。これはGEAR開始前に出現していた麻痺側遊脚期の足尖の引っかかりが消失し,遊脚時間が短縮されたためと考える。本来遊脚期は二重振子により実現されているが,本症例は麻痺側遊脚時分廻し歩行を呈し,膝関節伸展位で十分な屈曲運動はみられなかった。そこで今回GEARの振り出しアシストを使用し,遊脚期の股関節屈曲の動きに協調した膝関節屈伸を調整したことで,二重振子が学習でき,足尖の引っかかりが消失したと考えられる。従来の歩行練習では遊脚期の二重振子を実現させる練習は難しいことが多く,また遊脚側下肢を意識させてしまうことで努力的な膝屈伸となり非効率的な運動となりやすい。今回GEARを用いたことで,麻痺側遊脚期の下肢の振り出しを従来の歩行練習よりも段階的に学習出来たことが良好な結果に繋がったと推測される。
近年,リハビリテーション医療におけるロボットの介入により,重症例においても歩行練習を実施することが可能となってきた。2015年よりトヨタ自動車が藤田保健衛生大学と共同で開発した歩行練習アシストGait Exercise Assist Robot(以下GEAR)が国内約20施設において運用開始されており,当院でも導入実施している。GEARは長下肢装具型ロボット,低床型トレッドミル,安全懸架装置,ロボット免荷装置,患者用モニタ,操作パネルから構成されており,麻痺側立脚期の膝伸展と遊脚期の下肢の振り出しのアシストが可能である。今回,GEARによる歩行練習を実施した症例を経験したので,ここに報告する。
【方法】
対象は右被殻出血を発症した60歳代男性。発症63日目よりGEARによる歩行練習を開始した。GEAR開始時の麻痺側下肢機能は,Stroke Impairment Assesment Set(以下SIAS)にてHip-flexion 3,Knee-extension 3,Foot-pat 3,表在感覚1,深部感覚1であった。歩行はT字杖使用して一部介助で,麻痺側遊脚時足尖の引っかかりがみられ分廻し歩行を認めた。また非麻痺側方向への重心移動が不十分で,麻痺側に重心位置が偏位する傾向にあった。GEAR練習は1回40分を週5回,計3週間実施した。練習開始前後で10m歩行スピード(km/h),重複歩距離(cm),歩行対称性を時間的対称指標(TS_index=(麻痺側遊脚時間/麻痺側立脚時間)/(非麻痺側遊脚時間/非麻痺側立脚時間))(1に近い程対称)を用い評価した。
【結果】
GEAR練習終了時の麻痺側下肢機能は,SIASにてHip-flexion 4,Knee-extension 4,Foot-pat 4と向上,表在・深部感覚は変化なかった。歩行スピードは開始前0.85km/hであったが終了時3.39km/hとなり,重複歩距離も74cmから111cmとなった。歩行対称性に関しては開始前がTS_index=1.25であったが終了時は1.00となった。歩行に関しては非麻痺側への重心移動が円滑に行えるようになり,麻痺側遊脚時の足尖の引っかかりや分廻しも消失し,独歩見守りとなった。
【結論】
本症例はGEAR練習により歩行スピードが向上し,左右対称な歩行となった。これはGEAR開始前に出現していた麻痺側遊脚期の足尖の引っかかりが消失し,遊脚時間が短縮されたためと考える。本来遊脚期は二重振子により実現されているが,本症例は麻痺側遊脚時分廻し歩行を呈し,膝関節伸展位で十分な屈曲運動はみられなかった。そこで今回GEARの振り出しアシストを使用し,遊脚期の股関節屈曲の動きに協調した膝関節屈伸を調整したことで,二重振子が学習でき,足尖の引っかかりが消失したと考えられる。従来の歩行練習では遊脚期の二重振子を実現させる練習は難しいことが多く,また遊脚側下肢を意識させてしまうことで努力的な膝屈伸となり非効率的な運動となりやすい。今回GEARを用いたことで,麻痺側遊脚期の下肢の振り出しを従来の歩行練習よりも段階的に学習出来たことが良好な結果に繋がったと推測される。