第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)01

Fri. May 27, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:長谷川三希子(東京女子医科大学 リハビリテーション部)

[O-SN-01-4] 乳幼児健診で運動発達の遅れを指摘され理学療法が処方された児のコホート調査

杉浦さやか1, 宮本健2, 大城昌平3 (1.浜松医療センターリハビリテーション技術科, 2.浜松医療センター小児科, 3.聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部)

Keywords:乳幼児健診, 運動発達の遅れ, 発達障害

【はじめに,目的】

当院では乳幼児健診で運動発達の遅れを指摘された児が紹介され,理学療法が依頼されることが多いが,その中には理学療法は終了となっても療育的な支援を必要とする児が少なからず存在する。理学療法の処方が出された児を対象にして臨床経過を検討することによってその現状を明らかにし,運動発達遅滞で紹介された児のフォローにおける注意点と理学療法士の役割について考察を行ったので報告する。

【方法】

対象は2011年1月から2014年6月の間に当院の小児科医から理学療法が処方された満期産児51名(男児27名,女児24名)。対象の最終的な診断名,理学療法開始時月齢,発達暦,歩行獲得後の新版K式発達検査による発達指数,就園年齢における療育状況について調査した。

【結果】

理学療法開始時月齢は12.1か月で,10か月健診での紹介が最も多かった。到達目標であるスムーズな歩行を獲得し,理学療法を終了した児は51名中34名(66.7%),筋緊張の亢進または低下や可動域制限など,継続的な理学療法が必要と考えられた児は10名(19.6%),転居などでフォローから脱落した児が7名(13.7%)であった。

理学療法が終了となった34名(男児22名,女児12名)は小児科医によって発達の追跡が継続された。その結果,このグループの就園年齢における最終的な診断名は,定型発達12名(23.5%),精神運動発達遅滞6名(11.8%),言語発達遅滞3名(5.9%),発達障害(自閉症スペクトラム症,注意欠如・多動症など)11名(21.6%),運動発達遅滞2名(3.9%)であった。また,34名の新版K式発達検査による発達指数の中央値(最小-最大)は,定型発達が99(85-108),精神運動発達遅滞児が68.5(63-77),発達障害児が76.5(59-89)で,療育状況は,定型発達と判断された12名は幼稚園または保育園に通園,その他の児は療育センターや児童発達支援センターでの療育,または幼稚園や保育園との併行通園が開始されていた。

【結論】

歩行を獲得し,理学療法が終了できたグループの約65%に精神運動発達遅滞や発達障害など,療育的な支援が必要な児が含まれることが分かった。運動発達の遅れが主訴であっても,運動発達のキャッチアップが必ずしも療育のゴールとはならないことには注意が必要である。また,近年早期療育の有効性が数多く報告されていることを考えると,理学療法においても運動発達の促進とともに児の遊び方,対人面,ADL面などにも注目しながら主治医と連携をはかり,歩行獲得後には児やご家族にあった療育環境への切れ目のない支援をつなげていくことが重要だと思われる。また,理学療法士が早期からご家族の不安に寄り添い,児の発達を一緒に見守っていくことで母子関係の確立,療育への参加へも援助が出来るのではないかと考える。