第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)01

2016年5月27日(金) 10:00 〜 11:00 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:長谷川三希子(東京女子医科大学 リハビリテーション部)

[O-SN-01-5] ピエール・ロバン症候群により精神運動発達の遅れを呈した児の理学療法と発達評価

齋藤裕子 (心身障害児総合医療療育センター)

キーワード:ピエール・ロバン症候群, アルバータ乳幼児運動発達検査法, 運動発達

【はじめに,目的】ピエール・ロバン症候群は原因不明の希少疾患であり,呼吸障害,摂食障害,脳機能障害等の合併症がみられる。摂食障害や呼吸障害等に関する報告はあるが,運動発達やリハビリテーションに関する報告は散見されない。今回,精神運動発達の遅れを呈するピエール・ロバン症候群の理学療法(以下PT)評価,PT内容を報告する。

【方法】対象は3歳4ヶ月のピエール・ロバン症候群の男児。評価開始から2ヶ月,4ヶ月,8ヶ月毎に動画を撮影し,ICFシートを応用してPT評価を,アルバータ乳幼児運動発達検査法(以下AIMS)を参考に運動発達を評価した。双方より問題点を抽出し,時期毎の目標を設定し,PTを実施した。ICFシートを応用し,児の心身機能,身体構造,日々の活動への参加,児の興味等を評価した。AIMSは腹臥位,背臥位,座位,立位の姿勢別に,ウィンドウズスコア,総スコアを求め,比較した。

【結果】開始時~2ヶ月目は,臥位で多くの時間を過ごし,外界への興味が薄く,周囲環境に向けて探索していく動きが乏しかった。ウィンドウズスコアは腹臥位が7であり,他の姿勢より高値を示した。体幹の活動性の未成熟・下肢の身体図式の認識の乏しさを問題点とし,周囲環境を探索し興味の拡大を目標とした。腹臥位での上肢支持や,背臥位で下肢を挙上し足部を掴むなど,下肢を認識するように促した。2ヶ月目には四つ這い姿勢が安定し,数歩の四つ這い移動を獲得した。ウィンドウズスコアは腹臥位が11に上昇,座位・立位はともに4で大きな変化はみられなかった。2~4ヶ月目は,左右への寝返り,四つ這い移動で自由に動く範囲が増えた。抗重力活動が乏しいことを問題点とし,上方の対象物へ興味をひき,自発的に動くことを目標とした。座位・二足直立位で体幹の回旋運動を伴うリーチ動作,下肢の伸展方向への運動を促した。4ヶ月目には,不安定だがあぐら座位やつかまり立ちをする場面が増えた。ウィンドウズスコアは,腹臥位が4に低下,座位が5に上昇,立位は4で変化はみられなかった。4~8ヶ月目には,つかまり立ちの保持ができた。抗重力位での下肢の屈曲方向へのコントロールの未熟さを問題点とし,立位で自発的に移動する意欲を高めることを目標とした。空間での上肢操作,二足直立位からの側方へのステップ,下肢の屈伸のコントロールを促した。8ヶ月目には,臥位からあぐら座位への起き上がり,床からのつかまり立ち,後方支持立位を獲得した。ウィンドウズスコアは立位4で変化はないが,開始時と8ヶ月時を比較すると,各姿勢の総スコアは24から41へ上昇した。

【結論】ピエール・ロバン症候群の児に対しICFシートを応用しPT評価をし,AIMSを参考に運動発達を評価した。双方より問題点を抽出,目標を設定,PTを実施した。運動発達の向上が認められた。