第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)02

Fri. May 27, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:日浦伸祐(社会医療法人 大道会 森之宮病院 リハビリテーション部)

[O-SN-02-1] 脳性麻痺児に対する上り勾配歩行トレーニング導入の影響について

関山文理1, 吉田可苗1, 市川淳一2, 村田淳2 (1.医療法人宏和会あさい病院, 2.医療法人宏和会リハビリテーション部門)

Keywords:脳性麻痺児, 上り勾配歩行, 腓腹筋

【はじめに,目的】

脳性麻痺児・者の足関節筋力は健常者に比べ低下しており,麻痺の程度に関係なく推進力を股関節で生成し,足関節は歩行中の推進力に十分関与していないといわれている。先行文献によるとトレッドミルを利用した上り勾配歩行は健常者で平地よりも立脚後期の足関節底屈筋群の筋活動増加を認めている。一方トレッドミルトレーニングは脳性麻痺児・者において粗大運動能力,歩行機能向上などの効果が報告されているが,上り勾配での効果についてみられた文献はない。今回上り勾配が筋力や歩行機能向上へ及ぼす影響について筋厚,筋力,10m歩行時間,歩行率の推移を調査し,上り勾配歩行トレーニングの介入効果について検討した。

【方法】

対象は,脳性麻痺児の10歳女児1名。GMFCSレベルIIIを対象者とした。調査は平地(以下:A期)3週間,上り勾配(以下:B期)3週間に分けて行った。調査中は個別療法を週1回行い,トレッドミル(セノー社製)を使用し,A期は歩行速度0.6km/hで3分間,B期は傾斜1%,0.6km/hで2分間行った。計測項目は腓腹筋内側頭筋厚,腓腹筋筋力,10m歩行時間,歩行率の4項目とし,筋厚計測には超音波画像装置(東芝メディカルシステムズ社製)を用い,その操作に慣れた1名を検者とした。測定は安静腹臥位で,膝関節裂隙から外果を結ぶ線の近位30%の最大筋厚を計測し,筋力計測には徒手筋力計(アニマ社製)を用いて3回の測定し,平均値を計測値とした。10m歩行時間は2回測定し,最大値を測定値とした。その計測値をもとに歩行率を算出した。

【結果】

トレッドミルトレーニング時の各項目を(A期初期,終期/B期初期,終期)の順に示す。腓腹筋筋厚(mm)は(右:9.7左:12.6,右:10.4左:12.0/右:11.7左:13,右:12.7,左:12.9)であり,腓腹筋筋力(N)は,(右:21.7左:32.3,右:18,左:26.3/右:21.7左:25.3,右:25.3,左:37)であった。歩行時間(秒)は(69.59,60.64/45.33,32.77)であり,歩行率は(歩数/秒)(0.71,0.82/0.88,1.01)であった。

【結論】

結果より歩行機能,右筋厚,右筋力で向上がみられた。歩行機能は上り勾配で下肢の筋活動が増加し,トレッドミルで効率よく立脚後期の蹴り出しをくり返し経験したことが,歩行時の推進力を生み,歩行機能へ影響を及ぼしたと推察される。筋厚・筋力は,開始時は左下肢で優位であったが,トレーニングにより右下肢の活動量が増えた。Moritaniらによるとトレーニング初期では神経的要因の効果により筋力が増大し,運動単位の動員や発火頻度の増加があると推察している。今回の結果でも同様に増加したためではないかと推測される。今回,脳性麻痺児において,トレッドミルを利用した上り勾配歩行は歩行機能改善や筋力に影響を及ぼす可能性があると推察された。しかし,筋厚,筋力は継続した調査が必要であることが今後の課題となった。