[O-SN-02-2] 痙性両麻痺型脳性麻痺児での歩容分類と歩行効率の差異
キーワード:脳性麻痺, 3次元動作解析, 歩行効率
【はじめに,目的】
脳性麻痺(cerebral palsy:以下,CP)児は痙縮,同時収縮,拘縮,筋力低下などの影響により異常な歩容を呈するとされている。正常から逸脱した歩容は単位歩行距離当りのエネルギー消費が大きく,つまり歩行効率が悪く,移動が制限されることにつながる。しかし,自然経過や整形外科および理学療法などのアプローチにより,CP児であっても正常に近い歩容を獲得する場合もあり,その場合には歩行効率が良好である可能性がある。そこで本研究では,正常に近い歩容とそれ以外の歩容において歩行効率に差があるかどうかを検討することとした。
【方法】
対象は秋田県立医療療育センターで理学療法を受けている5~18歳の痙性両麻痺型CP児のうち,Gross Motor Function Classification SystemレベルIまたはレベルIIに分類される15名とした。平均年齢は10歳9ヵ月±3歳3ヵ月,男性12名・女性3名であった。
歩行効率の指標はtotal heart beat index(以下,THBI)とし,1周20mの往復路を10分間歩行したときの歩行距離と心拍数を計測し,10分間歩行中の総計心拍数を歩行距離で除すことにより算出した。
歩容を分類するために,8台の赤外線カメラを用いた3次元動作解析装置VICON MX(Vicon社製)を用いて快適速度での歩行を計測した。マーカー位置はHelen Heyesマーカーセットに準じた位置とし,膝関節屈曲・伸展角度および足関節背屈・底屈角度を算出した。Morganらの方法に準じて左右下肢における歩容を正常範囲内歩容とそれ以外(true equinus,jump gait,apparent equinus,crouch gait,その他)に分類した。左右下肢のいずれかの歩容が正常範囲内歩容であった場合は正常範囲群,それ以外を異常群とした。
統計解析は正常範囲群と異常群の10分間歩行における総計心拍数,歩行距離,THBIを比較するために,Welchの検定による2標本t検定,Mann-Whiteney検定,および2標本t検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
正常範囲内群は5名で,うち2名は両側肢とも正常範囲内歩容,他3名は片側肢が正常範囲内歩容,対側肢が異常歩容(crouch gait,1肢;その他,2肢)であった。異常群は10名(true equinus,9肢;jump gait,4肢;apparent equinus,2肢;crouch gait,2肢;その他,3肢)であった。正常範囲群と異常群の10分間歩行での歩行距離に有意差は認められなかった(546±74 m vs. 567±91 m,p=0.371)。一方,総計心拍数(1090±136 beats vs. 1452±250 beats,p=0.010)とTHBI(2.02±0.35 beats/m vs. 2.66±0.77 beats/m,p=0.048)はいずれも正常範囲群が有意に低値であった。
【結論】
THBIが低いということは単位歩行距離当りのエネルギー消費が小さいことを示す。本研究では正常範囲群のTHBIが有意に低かったため,片側肢の歩容が正常範囲内である場合,単位歩行距離あたりのエネルギー消費は小さいと考えられた。つまり,CP児でも片側肢の歩容が正常範囲内であれば歩行効率は良いことが示された。
脳性麻痺(cerebral palsy:以下,CP)児は痙縮,同時収縮,拘縮,筋力低下などの影響により異常な歩容を呈するとされている。正常から逸脱した歩容は単位歩行距離当りのエネルギー消費が大きく,つまり歩行効率が悪く,移動が制限されることにつながる。しかし,自然経過や整形外科および理学療法などのアプローチにより,CP児であっても正常に近い歩容を獲得する場合もあり,その場合には歩行効率が良好である可能性がある。そこで本研究では,正常に近い歩容とそれ以外の歩容において歩行効率に差があるかどうかを検討することとした。
【方法】
対象は秋田県立医療療育センターで理学療法を受けている5~18歳の痙性両麻痺型CP児のうち,Gross Motor Function Classification SystemレベルIまたはレベルIIに分類される15名とした。平均年齢は10歳9ヵ月±3歳3ヵ月,男性12名・女性3名であった。
歩行効率の指標はtotal heart beat index(以下,THBI)とし,1周20mの往復路を10分間歩行したときの歩行距離と心拍数を計測し,10分間歩行中の総計心拍数を歩行距離で除すことにより算出した。
歩容を分類するために,8台の赤外線カメラを用いた3次元動作解析装置VICON MX(Vicon社製)を用いて快適速度での歩行を計測した。マーカー位置はHelen Heyesマーカーセットに準じた位置とし,膝関節屈曲・伸展角度および足関節背屈・底屈角度を算出した。Morganらの方法に準じて左右下肢における歩容を正常範囲内歩容とそれ以外(true equinus,jump gait,apparent equinus,crouch gait,その他)に分類した。左右下肢のいずれかの歩容が正常範囲内歩容であった場合は正常範囲群,それ以外を異常群とした。
統計解析は正常範囲群と異常群の10分間歩行における総計心拍数,歩行距離,THBIを比較するために,Welchの検定による2標本t検定,Mann-Whiteney検定,および2標本t検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
正常範囲内群は5名で,うち2名は両側肢とも正常範囲内歩容,他3名は片側肢が正常範囲内歩容,対側肢が異常歩容(crouch gait,1肢;その他,2肢)であった。異常群は10名(true equinus,9肢;jump gait,4肢;apparent equinus,2肢;crouch gait,2肢;その他,3肢)であった。正常範囲群と異常群の10分間歩行での歩行距離に有意差は認められなかった(546±74 m vs. 567±91 m,p=0.371)。一方,総計心拍数(1090±136 beats vs. 1452±250 beats,p=0.010)とTHBI(2.02±0.35 beats/m vs. 2.66±0.77 beats/m,p=0.048)はいずれも正常範囲群が有意に低値であった。
【結論】
THBIが低いということは単位歩行距離当りのエネルギー消費が小さいことを示す。本研究では正常範囲群のTHBIが有意に低かったため,片側肢の歩容が正常範囲内である場合,単位歩行距離あたりのエネルギー消費は小さいと考えられた。つまり,CP児でも片側肢の歩容が正常範囲内であれば歩行効率は良いことが示された。