[O-SN-02-3] 経頭蓋直流電気刺激を用いたソーシャルスキルに関する神経基盤の調査
模倣抑制課題,視点取得課題,自閉症スペクトラム指数による検討
Keywords:経頭蓋直流電気刺激, ソーシャルスキル, 自閉症スペクトラム障害
【目的】自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因として,下前頭皮質(IFC)を中心としたミラーシステムの障害仮説と右側頭頭頂接合部(TPJ)を中心としたミラーシステムを調整するシステムの障害仮説が存在している。そこで本研究では,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を使用して,各脳領域が,ソーシャルスキルにおける自他区別能力を反映する模倣抑制課題,自他同一能力を反映する視点取得課題,グローバルな社会性を評定する自閉症スペクトラム指数(AQ)に与える影響について調査した。
【方法】対象は健常成人28名(平均21.4歳±1.3,男性15名,女性13名)とし,右TPJにtDCS(neuro Conn社製)陽極刺激を実施するTPJ群9名と右IFCにtDCS陽極刺激を実施するIFC群9名,tDCS偽刺激を実施するSham群10名に無作為に割付を行った。tDCS刺激時間は各群ともに20分とし,刺激強度は1mAとした。tDCS刺激部位の同定は,国際10-20法に基づいて行った。tDCS実施後に,模倣抑制課題,視点取得課題,AQによる評価を実施した。模倣抑制課題は,Super Labバージョン5(Cedrus社製)を使用して作成し,模倣抑制能力の指標として,その正答率と正反応時間を抽出した。視点取得課題は,LabVIEW(NATIONAL INSTRUMENTS社製)を使用して作成し,視点取得能力の指標として,その正答率と正反応時間を抽出した。AQは,全50問からなる質問紙であり,先行研究(若林,2003)に基づき,各項目の配点を算出した。統計学的検討には,各評価結果について,3群間での一元配置分散分析を実施し,事後検定としてTukey-Kramer法による多重比較を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】模倣抑制課題の正反応時間について,Sham群と比較して,IFC群において,有意な短縮を認めた(p<0.01)。視点取得課題の正反応時間について,Sham群と比較して,TPJ群において,有意な短縮を認めた(p<0.01)。AQについては,全ての下位項目および総合得点においても,3群間に有意差は認めなかった(p>0.05)。
【結論】本研究により,右IFCが模倣抑制に有意に関与し,右TPJが視点取得に有意に関与していることが判明した。一方,AQには有意差を認めなかったことから,AQが反映するグローバルな社会性においては,単一脳領域ではなく,広範な神経ネットワークが関与することが示唆された。またAQは社会性の自己評定尺度であることから,単一脳領域の変調では,社会性に関するメタ認知にまでは影響を与えないことが示唆された。子供に対する脳イメージング研究は測定自体が困難であることが多いが,本研究で使用した模倣抑制課題や視点取得課題は,自他区別や自他同一といったソーシャルスキルについて,客観的かつ定量的に測定でき,臨床における有用性が高い。今後,ASDに合併しやすい発達性協調運動障害とソーシャルスキルとの関連性を調査していくうえでも,有用であると考える。
【方法】対象は健常成人28名(平均21.4歳±1.3,男性15名,女性13名)とし,右TPJにtDCS(neuro Conn社製)陽極刺激を実施するTPJ群9名と右IFCにtDCS陽極刺激を実施するIFC群9名,tDCS偽刺激を実施するSham群10名に無作為に割付を行った。tDCS刺激時間は各群ともに20分とし,刺激強度は1mAとした。tDCS刺激部位の同定は,国際10-20法に基づいて行った。tDCS実施後に,模倣抑制課題,視点取得課題,AQによる評価を実施した。模倣抑制課題は,Super Labバージョン5(Cedrus社製)を使用して作成し,模倣抑制能力の指標として,その正答率と正反応時間を抽出した。視点取得課題は,LabVIEW(NATIONAL INSTRUMENTS社製)を使用して作成し,視点取得能力の指標として,その正答率と正反応時間を抽出した。AQは,全50問からなる質問紙であり,先行研究(若林,2003)に基づき,各項目の配点を算出した。統計学的検討には,各評価結果について,3群間での一元配置分散分析を実施し,事後検定としてTukey-Kramer法による多重比較を実施した。有意水準は5%未満とした。
【結果】模倣抑制課題の正反応時間について,Sham群と比較して,IFC群において,有意な短縮を認めた(p<0.01)。視点取得課題の正反応時間について,Sham群と比較して,TPJ群において,有意な短縮を認めた(p<0.01)。AQについては,全ての下位項目および総合得点においても,3群間に有意差は認めなかった(p>0.05)。
【結論】本研究により,右IFCが模倣抑制に有意に関与し,右TPJが視点取得に有意に関与していることが判明した。一方,AQには有意差を認めなかったことから,AQが反映するグローバルな社会性においては,単一脳領域ではなく,広範な神経ネットワークが関与することが示唆された。またAQは社会性の自己評定尺度であることから,単一脳領域の変調では,社会性に関するメタ認知にまでは影響を与えないことが示唆された。子供に対する脳イメージング研究は測定自体が困難であることが多いが,本研究で使用した模倣抑制課題や視点取得課題は,自他区別や自他同一といったソーシャルスキルについて,客観的かつ定量的に測定でき,臨床における有用性が高い。今後,ASDに合併しやすい発達性協調運動障害とソーシャルスキルとの関連性を調査していくうえでも,有用であると考える。