[O-SN-03-1] 脳性麻痺痙直型患者の尖足変形に対する足関節選択的筋解離術と下肢随意性の関係
Keywords:脳性麻痺, 選択的筋解離術, 下肢随意性
【はじめに,目的】
脳性麻痺痙直型患者(以下:CP患者)は異常な筋緊張亢進から尖足変形をきたすことが多くある。そのような尖足変形に対し観血的療法では整形外科的手術,ボトックス注射があり,保存的療法では理学療法,装具療法などがある。本邦で多く行われている整形外科的手術に選択的筋解離術があり,尖足に対しては足関節周囲の筋解離術が行われている。臨床上,術後の理学療法を行っていると関節可動域の改善に加え下肢の随意性の改善を経験することが多くあるが,術前後での下肢随意性を評価した報告は少ない。下肢随意性を評価する方法としてSelective Control Assessment of the Lower Extremity(以下:SCALE)があり,信頼性と妥当性の確認がされている。今回,足関節選択的筋解離術とSCALEの関係について検討したので報告する。
【方法】
平成26年3月~平成27年7月に当院に入院し,足関節周囲筋解離術を受けた独歩可能なCP患者7名8肢(男性3名,女性4名)を対象とした。対象の平均年齢は17.4±12.1(平均±標準偏差)であった。術側の下肢随意性をSCALE,足関節他動背屈時の抵抗感をModified Ashworth scale(以下:MAS),足関節の可動域をDorsiflexion with the Knee Extension(以下:DKE)を用いて評価した。評価は,術前と術後4ヵ月時に行った。術後の理学療法は,疼痛の改善に合わせ,足関節ROMex,自動での足関節背屈練習,立位バランス練習,歩行練習を行った。介入内容は適宜変更し行った。
統計学的処理は,SCALEとMASの術前後の比較をWilcoxonの符号付順位和検定,DKEの術前後の変化を対応のあるT検定を用いて検討した。なお,MASは統計処理のために,0→0,1→1,1+→2,2→3,3→4,4→5の0~5の評価値に変数化した。
【結果】
術側のSCALEは4.8±1.8(術前)→6.1±2.2(術後),MASは3.4±1.1→2.0±1.1,DKE(°)は-24.4±20.3→―5.6±12.1へと変化した。
統計学的検討の結果,SCALE,MAS,DKEとも術前後の間に有意な差(p<0.05)を認めた。
【結論】
MAS,DKEの術前後での有意な改善がみられたことから,下腿三頭筋をはじめとした底屈筋群の筋長が延長され,背屈時の抵抗が減少したことが明らかとなった。SCALEの改善は,背屈時の抵抗が減少したことにより,自動での背屈運動時の過剰な努力が軽減し,代償運動が出現しにくくなったことが影響していると考えた。
下肢の随意性は,立位・歩行に対する理学療法を行う上で重要な評価項目である。術前後で変化しうることが明らかになったことからも,評価及び変化を加味したプログラムの立案が必要である。
脳性麻痺痙直型患者(以下:CP患者)は異常な筋緊張亢進から尖足変形をきたすことが多くある。そのような尖足変形に対し観血的療法では整形外科的手術,ボトックス注射があり,保存的療法では理学療法,装具療法などがある。本邦で多く行われている整形外科的手術に選択的筋解離術があり,尖足に対しては足関節周囲の筋解離術が行われている。臨床上,術後の理学療法を行っていると関節可動域の改善に加え下肢の随意性の改善を経験することが多くあるが,術前後での下肢随意性を評価した報告は少ない。下肢随意性を評価する方法としてSelective Control Assessment of the Lower Extremity(以下:SCALE)があり,信頼性と妥当性の確認がされている。今回,足関節選択的筋解離術とSCALEの関係について検討したので報告する。
【方法】
平成26年3月~平成27年7月に当院に入院し,足関節周囲筋解離術を受けた独歩可能なCP患者7名8肢(男性3名,女性4名)を対象とした。対象の平均年齢は17.4±12.1(平均±標準偏差)であった。術側の下肢随意性をSCALE,足関節他動背屈時の抵抗感をModified Ashworth scale(以下:MAS),足関節の可動域をDorsiflexion with the Knee Extension(以下:DKE)を用いて評価した。評価は,術前と術後4ヵ月時に行った。術後の理学療法は,疼痛の改善に合わせ,足関節ROMex,自動での足関節背屈練習,立位バランス練習,歩行練習を行った。介入内容は適宜変更し行った。
統計学的処理は,SCALEとMASの術前後の比較をWilcoxonの符号付順位和検定,DKEの術前後の変化を対応のあるT検定を用いて検討した。なお,MASは統計処理のために,0→0,1→1,1+→2,2→3,3→4,4→5の0~5の評価値に変数化した。
【結果】
術側のSCALEは4.8±1.8(術前)→6.1±2.2(術後),MASは3.4±1.1→2.0±1.1,DKE(°)は-24.4±20.3→―5.6±12.1へと変化した。
統計学的検討の結果,SCALE,MAS,DKEとも術前後の間に有意な差(p<0.05)を認めた。
【結論】
MAS,DKEの術前後での有意な改善がみられたことから,下腿三頭筋をはじめとした底屈筋群の筋長が延長され,背屈時の抵抗が減少したことが明らかとなった。SCALEの改善は,背屈時の抵抗が減少したことにより,自動での背屈運動時の過剰な努力が軽減し,代償運動が出現しにくくなったことが影響していると考えた。
下肢の随意性は,立位・歩行に対する理学療法を行う上で重要な評価項目である。術前後で変化しうることが明らかになったことからも,評価及び変化を加味したプログラムの立案が必要である。