第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)03

Fri. May 27, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:横井裕一郎(北海道文教大学 人間科学部 理学療法学科)

[O-SN-03-3] 成人脳性麻痺者の痛みと身体知覚異常の関連性

山下浩史1, 西上智彦2,3, 壬生彰4, 田中克宜4 (1.スカイ整形外科クリニック, 2.甲南女子大学看護リハビリテーション学部, 3.Sansom Institute for Health Research, University of South Australia, 4.田辺整形外科上本町クリニック)

Keywords:脳性麻痺, 成人, 痛み

【はじめに,目的】

成人脳性麻痺者は健常者に比べて疼痛の発生頻度が高い。しかし,成人脳性麻痺者の粗大運動能力,姿勢の非対称性及び痙性は疼痛に関与しないことが報告されており,成人脳性麻痺の疼痛関連因子は未だ明らかでない。近年,身体知覚異常が慢性痛に深く関与し,身体知覚異常を標的とした理学療法が慢性痛を改善することが明らかになっている。慢性腰痛患者の身体知覚異常の評価としてFremantle Back Awareness Questionnaire(FreBAQ)が開発されており,さらに,頸部,膝関節にも適応できるFreBAQも開発されている。今回,成人脳性麻痺者及び慢性痛患者に対して身体知覚異常,破局的思考,不安恐怖思考を評価し,疼痛を有する成人脳性麻痺患者にどの疼痛関連因子が高く認められるか検討した。


【方法】

対象は20歳以上とし,疼痛が6ヶ月以上持続する脳性麻痺者10名(男性7名,女性3名,平均年齢45.4±17.6歳)をCP_Pain群,疼痛がない脳性麻痺者6名(男性2名,女性4名,平均年齢44.0±17.2歳)をCP_noPain群,疼痛が6ヶ月以上持続し,年齢,性別,疼痛部位をCP_Pain群とマッチングさせた慢性痛患者10名(男性6名,女性4名,平均年齢45.9±16.6歳)をPain群とした。脳性麻痺患者群における除外基準は6ヶ月以内に外科手術及びボツリヌス療法を行った者,質問紙の理解が困難である者とした。評価項目は疼痛強度(Numeric Rating Scale;NRS),身体知覚異常(FreBAQ),破局的思考(Pain Catastrophizing Scale;PCS),不安恐怖思考(Tampa Scale for Kinesiophobia;TSK)とした。粗大運動能力分類システム(GMFCS)はCP_pain群でIが1名,IIが0名,IIIが3名,IVが2名,Vが4名,CP_noPain群でIが1名,IIが1名,IIIが1名,IVが1名,Vが2名であった。CP_pain群の疼痛部位は頚部4名,腰部4名,膝2名であった。CP_noPain群の評価部位は頚部,腰部,膝をランダムに振り分けて各2名とした。統計処理は多重比較検定を用いて3群間を比較した。なお,有意水準は5%未満とした。


【結果】

FreBAQ,PCS,TSKにおいて,CP_Pain群(FreBAQ:15.0±7.7,PCS:30.6±8.6,TSK:39.9±5.7)がCP_noPain群(FreBAQ:2.1±1.8,PCS:7.5±6.6,TSK:30.0±6)より有意に高値(p<0.01)であったが,CP_Pain群とPain群(FreBAQ:9.3±5.4,PCS:20.8±10.0,TSK:39.9±5.1)に有意な差は認められなかった。


【結論】

CP_Pain群はCP_noPain群よりFreBAQ,PCS及びTSKにおいて有意に高値であったが,CP_Pain群とPain群には有意な差が認められなかったことから,成人脳性麻痺者において,これまでに明らかになっている慢性痛に対しての評価やアプローチが適応になる可能性がある。脳性麻痺者両群にはあらゆる重症度の対象者が含まれており,両群間は同等の運動能力を有しているが,身体知覚異常がCP_Pain群のみに認められたことから,身体知覚異常へのアプローチが慢性痛の改善に関与する可能性が示唆された。