第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本小児理学療法学会 一般演題口述
(小児)03

Fri. May 27, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:横井裕一郎(北海道文教大学 人間科学部 理学療法学科)

[O-SN-03-6] 学童期から成人期における運動療法を受けた脳性麻痺患者の粗大運動機能への影響因子の検討

伊藤慎吾1, 武田雄一1, 石本壮星1, 飯島あゆみ1, 山縣然太朗2 (1.石和共立病院, 2.山梨大学大学院総合研究部医学域基礎医学系社会医学講座)

Keywords:脳性麻痺, 学童成人期, 粗大運動能力変化

【はじめに,目的】学童期から成人期の脳性麻(CP)児者は一次性,二次性の運動障害により粗大運動機能が低下し易い事が示唆されている。理学療法の目的は患者の基本動作能力の維持向上にあり,運動療法による身体機能への介入の他,日常生活活動(ADL)機能への介入,介助者の指導など様々である。以上から,理学療法を受ける7歳以上のCP児者の粗大運動の変化に影響を与える要因を明らかにする事により,発達時期に応じた粗大運動機能低下予防という観点を含んだ適切な目標設定や介入に繋がる事が期待できる。


【方法】CPの定義は生後4週以内の脳病変もしくは5週以降に生じた乳幼児期の脳病変を起因とする包括的な脳性運動障害像を呈する者とした。目的変数は粗大運動能力尺度(GMFM-66)による6ヶ月間の粗大運動スコア変化量。説明変数はリハビリテーションの為の子どもの能力低下評価(PEDI)セルフケア,性別,年齢,体重,知的能力(横地分類,知能レベル),粗大運動能力分類システム(GMFCS)Level,てんかんの有無,その他のGMFMスコアに影響が予測される因子とした。選択基準は3ヶ所の病院と1ヶ所の施設で運動療法を受ける,同意を得られない場合を除いた7歳以上のCP患者。登録期間は2014年4月から2015年3月,調査の為の追跡期間は2015年3月から7月とした。


【結果】参加者47人,平均年齢18.5歳(25%値-75%値:11.0-25.5歳)であり,男女比(男性比率53%)ならびに,てんかんの有無(有病率57%)の偏りはみられなかった。CPタイプは痙直型(81%),分布は四肢麻痺(57%),GMFCS levelVの重度が多く(43%)を占めた。GMFMスコアの差は,てんかんのなしは中央値[25%値-75%値]が1.71[0.53-2.95],てんかんありは中央値が0.00[-0.27-2.06](p<0.05)と,てんかんの有無で有意差を示し,GMFMベースライン(p<0.05),PEDIセルフケア機能スコア差(p<0.05)ならびに援助スコア差(p<0.01)と有意な正の相関関係,年齢においては有意な負(p<0.05)の相関関係があった。その他の因子での有意な差や相関関係はみられなかった。説明変数間の関係性は重症度,分布,知的能力でGMFMベースラインの有意差(p<0.01)がみられ,またGMFMベースラインと理学療法頻度との有意な負の相関関係がみられた。


【結論】長期的な粗大運動能力の向上には,粗大運動能力ベースラインの他,ADLセルフケア,年齢,てんかんの有無が関連し,運動療法の他,年齢に応じたADLトレーニング,合併症の管理が重要である。一方,粗大運動能力ベースラインには重症度,分布やタイプ,知的能力,理学療法頻度が関係しており,長期的な粗大運動能力を向上させる為のリハビリテーションのあり方を検討する上では,より詳細な調査が必要である。