[O-SP-01-2] ACL再建術後の動作に対する恐怖心と身体機能・パフォーマンステストとの関連性について
Keywords:恐怖回避思考, TSK-J, スポーツ復帰
【はじめに,目的】
前十字靱帯(以下ACL)再建術後のスポーツ復帰において,阻害因子がいくつも挙げられているが,その中でもスポーツ動作に対する恐怖心・不安感は再受傷の予防の観点からも注目されている。
痛みが増悪する恐怖心から動作を回避する思考はfear-avoidance beliefs(以下FAB)と言われ,FAB評価尺度は他言語表記のものがほとんどであり,本邦ではFABに関する研究があまり進められていない。今回,松平らがTampa Scale for Kinesiophobia(TSK)を日本語に翻訳し,日本語版TSK(以下TSK-J)を作成した。このTSK-Jを使用してACL再建術後の恐怖心を評価することを本研究の目的とした。また,その恐怖心と身体機能,パフォーマンスとの関連性の有無も同時に検討することとした。
【方法】
対象は,ACL再建術を施行した10名(男性3名,女性7名),平均年齢24±10.4歳とした。測定時期は,術後ジャンプが許可される5ヶ月以降とした(術後平均8.9±3.0カ月)。評価項目は,膝・足関節可動域患健側差,膝靱帯損傷治療成績評価基準(Lysholm score),立ち上がりテスト患健側差,triple hop distance test(以下3 hop test)患健側差,TSK-Jとした。Lysholm scoreは,100点満点で評価され,点数が高い方が治療成績が良いことを示す。また,立ち上がりテストは,40cm,30cm,20cm,10cmの台から片脚で立ち上がり,可否を判定した。3 hop testは,片脚ジャンプを3歩連続で行い,飛距離を測定した。TSK-Jは1つの質問に対して4段階で回答し,総スコアが11~44点となる。点数が高いと恐怖心が強い事を示す。統計学的解析には,SPSS Statistic Ver.17.を使用し,各測定項目間の相関にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
各測定項目の平均値は,膝関節屈曲角度患健側差2.3±3.9°,膝関節伸展角度患健側差1.2±2.6°,足関節底屈角度患健側差0.7±3.2°,足関節背屈角度患健側差(膝屈曲位)0.3±1.9°,足関節背屈角度患健側差(膝伸展位)0.6±3.2°,Lysholm score 94±5.1点,立ち上がりテスト患健側差9±11.0cm,3 hop test患健側差65.6±43.4cm,TSK-J 19.9±4.5点であった。
立ち上がりテスト患健側差とTSK-Jは正の相関がみられた(ρ=0.689,p<0.05)。その他の評価項目とTSK-Jとの間に相関関係はみられなかった。
【結論】
立ち上がりテストの患健側差が大きいほどTSK-Jのスコアが高く,恐怖心が強い事が示された。立ち上がりテストは,下肢筋力の簡便な評価方法としてしられており,体重支持指数(体重当たりの膝関節伸展筋力:WBI)との相関関係も認められている。下肢筋力に左右差が残存していると,動作への恐怖心につながり,円滑なスポーツ復帰をより困難なものにしている可能性が示唆された。また,この恐怖心は術後の経過期間との関連性がみられなかったため,円滑なスポーツ復帰には,下肢筋力の患健側差の軽減に積極的に努め,恐怖心を軽減させる必要があると考えられる。
前十字靱帯(以下ACL)再建術後のスポーツ復帰において,阻害因子がいくつも挙げられているが,その中でもスポーツ動作に対する恐怖心・不安感は再受傷の予防の観点からも注目されている。
痛みが増悪する恐怖心から動作を回避する思考はfear-avoidance beliefs(以下FAB)と言われ,FAB評価尺度は他言語表記のものがほとんどであり,本邦ではFABに関する研究があまり進められていない。今回,松平らがTampa Scale for Kinesiophobia(TSK)を日本語に翻訳し,日本語版TSK(以下TSK-J)を作成した。このTSK-Jを使用してACL再建術後の恐怖心を評価することを本研究の目的とした。また,その恐怖心と身体機能,パフォーマンスとの関連性の有無も同時に検討することとした。
【方法】
対象は,ACL再建術を施行した10名(男性3名,女性7名),平均年齢24±10.4歳とした。測定時期は,術後ジャンプが許可される5ヶ月以降とした(術後平均8.9±3.0カ月)。評価項目は,膝・足関節可動域患健側差,膝靱帯損傷治療成績評価基準(Lysholm score),立ち上がりテスト患健側差,triple hop distance test(以下3 hop test)患健側差,TSK-Jとした。Lysholm scoreは,100点満点で評価され,点数が高い方が治療成績が良いことを示す。また,立ち上がりテストは,40cm,30cm,20cm,10cmの台から片脚で立ち上がり,可否を判定した。3 hop testは,片脚ジャンプを3歩連続で行い,飛距離を測定した。TSK-Jは1つの質問に対して4段階で回答し,総スコアが11~44点となる。点数が高いと恐怖心が強い事を示す。統計学的解析には,SPSS Statistic Ver.17.を使用し,各測定項目間の相関にはSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
各測定項目の平均値は,膝関節屈曲角度患健側差2.3±3.9°,膝関節伸展角度患健側差1.2±2.6°,足関節底屈角度患健側差0.7±3.2°,足関節背屈角度患健側差(膝屈曲位)0.3±1.9°,足関節背屈角度患健側差(膝伸展位)0.6±3.2°,Lysholm score 94±5.1点,立ち上がりテスト患健側差9±11.0cm,3 hop test患健側差65.6±43.4cm,TSK-J 19.9±4.5点であった。
立ち上がりテスト患健側差とTSK-Jは正の相関がみられた(ρ=0.689,p<0.05)。その他の評価項目とTSK-Jとの間に相関関係はみられなかった。
【結論】
立ち上がりテストの患健側差が大きいほどTSK-Jのスコアが高く,恐怖心が強い事が示された。立ち上がりテストは,下肢筋力の簡便な評価方法としてしられており,体重支持指数(体重当たりの膝関節伸展筋力:WBI)との相関関係も認められている。下肢筋力に左右差が残存していると,動作への恐怖心につながり,円滑なスポーツ復帰をより困難なものにしている可能性が示唆された。また,この恐怖心は術後の経過期間との関連性がみられなかったため,円滑なスポーツ復帰には,下肢筋力の患健側差の軽減に積極的に努め,恐怖心を軽減させる必要があると考えられる。