[O-SP-01-4] 前十字靭帯再建術後患者におけるスタンディングスタートの運動学・運動力学的特徴
キーワード:前十字靭帯再建術後患者, スタンディングスタート, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
スタートダッシュとは,静止の状態から素早く動き出すことが必要とされる動作であり,様々なスポーツ競技において必要不可欠である。また,始動後に速く走る重要なポイントは,重心の素早い水平方向への加速であるとの報告もある。本研究の目的は,前十字靭帯(以下,ACL)再建術後患者と健常者におけるスタンディングスタート(以下,SS)の運動学,運動力学的特徴を比較することである。
【方法】
対象は,膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者10名の術側(以下,ACL群,男性5名,女性5名,年齢21.8±6.1歳,身長166.0±8.0cm,体重63.4±5.8kg,再建術から測定までの期間15.8±5.7ヵ月)と下肢に既往のない健常者10名の利き足側(以下,健常群,男性5名,女性5名,年齢23.2±2.0歳,身長164.0±8.1cm,体重57.0±10.3kg)とした。動作課題はSSとし,健側を前にした静止立位から用意の体勢となり,LED発光を号砲とし,素早く前方に始動する動作とした。動作条件は規定せず,LED発光後素早く前方に始動することのみ指示した。動作解析は,被験者に反射マーカーを41点貼付し,三次元動作解析装置VICON MX(VICON Motion Systems社)と床反力計(AMTI社)を用いて行った。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社)を用いて,SS姿勢の後脚を解析した。そして,床反力前方成分の最大値,この時点の床反力鉛直成分,重心の前後加速度,矢状面上における下肢関節角度,下肢関節モーメント,骨盤前後傾角度,体幹前後屈角度をそれぞれ算出した。なお,床反力・下肢関節モーメントは正規化するため体重で除した値を用いた。統計処理は,統計処理ソフトR-2.8.1を用いて,各項目のACL群と健常群の差を比較するためt検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
床反力前方成分の最大値はACL群6.4N/kg,健常群8.3N/kgであり,ACL群が有意に小さかった(p=0.048)。また,この時点の床反力鉛直成分に有意差は認めなかった。重心の前方加速度はACL群6.6±2.0m/s2,健常群8.9±2.3m/s2,膝関節屈曲角度はACL群27.0±15.6度,健常群42.1±11.6度,膝関節伸展モーメントはACL群0.42±0.67 Nm/kg,健常群1.14±0.56 Nm/kgであり,それぞれACL群が有意に小さかった(p=0.031,p=0.018,p=0.018)。骨盤前傾角度はACL群26.6±8.5度,健常群18.1±7.1度,体幹前傾角度はACL群32.3±9.8度,健常群20.1±9.7度であり,それぞれACL群が有意に大きかった(p=0.028,p=0.012)。矢状面上におけるその他の項目に有意差を認めなかった。
【結論】
ACL群は床反力前方成分・膝関節伸展モーメントが低下していた。これは,ACL群の膝関節屈曲角度が小さく,骨盤前傾・体幹前屈角度が大きいという特徴的な姿勢により,膝関節伸展筋を十分に使用しない蹴り出し方を行っていると考える。その結果,重心の加速度を十分に増加できていないと考えた。これらは,術後理学療法の重要な視点を提示していることが示唆された。
スタートダッシュとは,静止の状態から素早く動き出すことが必要とされる動作であり,様々なスポーツ競技において必要不可欠である。また,始動後に速く走る重要なポイントは,重心の素早い水平方向への加速であるとの報告もある。本研究の目的は,前十字靭帯(以下,ACL)再建術後患者と健常者におけるスタンディングスタート(以下,SS)の運動学,運動力学的特徴を比較することである。
【方法】
対象は,膝屈筋腱を用いたACL再建術後患者10名の術側(以下,ACL群,男性5名,女性5名,年齢21.8±6.1歳,身長166.0±8.0cm,体重63.4±5.8kg,再建術から測定までの期間15.8±5.7ヵ月)と下肢に既往のない健常者10名の利き足側(以下,健常群,男性5名,女性5名,年齢23.2±2.0歳,身長164.0±8.1cm,体重57.0±10.3kg)とした。動作課題はSSとし,健側を前にした静止立位から用意の体勢となり,LED発光を号砲とし,素早く前方に始動する動作とした。動作条件は規定せず,LED発光後素早く前方に始動することのみ指示した。動作解析は,被験者に反射マーカーを41点貼付し,三次元動作解析装置VICON MX(VICON Motion Systems社)と床反力計(AMTI社)を用いて行った。解析ソフトVISUAL3D(C-Motion社)を用いて,SS姿勢の後脚を解析した。そして,床反力前方成分の最大値,この時点の床反力鉛直成分,重心の前後加速度,矢状面上における下肢関節角度,下肢関節モーメント,骨盤前後傾角度,体幹前後屈角度をそれぞれ算出した。なお,床反力・下肢関節モーメントは正規化するため体重で除した値を用いた。統計処理は,統計処理ソフトR-2.8.1を用いて,各項目のACL群と健常群の差を比較するためt検定を行った。有意水準は5%とした。
【結果】
床反力前方成分の最大値はACL群6.4N/kg,健常群8.3N/kgであり,ACL群が有意に小さかった(p=0.048)。また,この時点の床反力鉛直成分に有意差は認めなかった。重心の前方加速度はACL群6.6±2.0m/s2,健常群8.9±2.3m/s2,膝関節屈曲角度はACL群27.0±15.6度,健常群42.1±11.6度,膝関節伸展モーメントはACL群0.42±0.67 Nm/kg,健常群1.14±0.56 Nm/kgであり,それぞれACL群が有意に小さかった(p=0.031,p=0.018,p=0.018)。骨盤前傾角度はACL群26.6±8.5度,健常群18.1±7.1度,体幹前傾角度はACL群32.3±9.8度,健常群20.1±9.7度であり,それぞれACL群が有意に大きかった(p=0.028,p=0.012)。矢状面上におけるその他の項目に有意差を認めなかった。
【結論】
ACL群は床反力前方成分・膝関節伸展モーメントが低下していた。これは,ACL群の膝関節屈曲角度が小さく,骨盤前傾・体幹前屈角度が大きいという特徴的な姿勢により,膝関節伸展筋を十分に使用しない蹴り出し方を行っていると考える。その結果,重心の加速度を十分に増加できていないと考えた。これらは,術後理学療法の重要な視点を提示していることが示唆された。