第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)01

Fri. May 27, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:吉田昌平(京都学際研究所附属病院 リハビリテーション科)

[O-SP-01-6] 膝前十字靭帯再建術後のスポーツ復帰に関連する術前因子とカットオフ値の検討

北口拓也1, 佐藤のぞみ1, 竹下真弥1, 平林伸治2, 田中美成3, 堀部秀二4 (1.大阪労災病院中央リハビリテーション部, 2.大阪労災病院リハビリテーション科, 3.大阪労災病院スポーツ整形外科, 4.大阪府立大学総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:膝前十字靭帯, 術前膝伸展筋力, スポーツ復帰

【はじめに,目的】

膝前十字靭帯(以下ACL)再建術後の治療目的は,患者を元のスポーツレベルに復帰させる事である。その為,スポーツ復帰の関連因子について調査を行なうことは重要であるが,過去の報告では術後6ヶ月以降に得られる膝機能の情報が多く,早期よりスポーツ復帰困難者の予測が行え介入可能な因子ついて報告したものは少ない。そこで今回我々は①ACL再建術後のスポーツ復帰に関連する術前因子を検討するとともに,そのカットオフ値を得る事,②スポーツ復帰に関連する術前因子と術後膝機能の関係を検討する事を目的とした。


【方法】

本研究ではスポーツ復帰を目的に当院にて初回ACL再建術(自家膝屈筋腱)を施行した症例の内,除外基準(受傷時Tegner Activity Scale(以下TAS)6以下,他の靭帯損傷合併例,卒業等の社会的要因によるスポーツ復帰断念例)に該当しない患者146名(平均年齢18.4±4.0歳。男性62名。女性84名)を対象とし,術後1年時のスポーツ復帰状況により復帰群,非復帰群に分類した。評価項目は個人特性として手術時年齢,性別,受傷時TAS,受傷から手術までの期間(以下待機期間)を問診及びカルテより収集した。膝機能の評価項目は術前日,術後6ヶ月時のCybex6000による60°/secの等速性膝伸展筋力患健比(以下伸展筋力)及び術後6ヶ月時のSingle Leg Hop患健比(以下SLH)とした。統計処理は各因子に対して復帰群,非復帰群の比較をMann-WhitneyのU検定及びχ2検定にて行い,有意差を認めた術前因子についてはReceiver Operating Characteristic Curve(以下ROC曲線)にてスポーツ復帰を判断するカットオフ値を算出した。また単変量解析により有意差を認めた術前因子と術後6ヶ月時の膝機能(伸展筋力,SLH)の関係性をPearsonの積立相関係数にて検討した。統計処理はSPSS20 for windowsを用い,有意水準は5%とした。


【結果】

術後1年時のスポーツ復帰状況は,復帰群127名(87%),非復帰群19名(13%)であった。術前因子の内,年齢,性別,受傷時TAS,待機期間については両群間に有意差を認めなかったが,術前伸展筋力は復帰群(72.3±18%)に比べ非復帰群(58.8±14.8%)が有意に低下していた(p<0.01)。ROC曲線から得られたスポーツ復帰可否における術前伸展筋力のカットオフ値は69%(感度59.2%,特異度84.2%,曲線下面積0.72;p<0.01)であった。術前伸展筋力は術後6ヶ月時の伸展筋力(r=0.36,p<0.01),SLH(r=0.24,p<0.01)と有意な相関関係を認めた。


【結論】

今回,術前伸展筋力がスポーツ復帰可否の予測因子となる事が示唆された。本結果より術前膝伸展筋力患健比が69%以下でスポーツ復帰を目標とする症例に対しては術後介入に特に注意が必要であり,今後,術前伸展筋力が低い症例に対し術後の膝機能を効果的に改善するアプローチの検討が必要であると考えられた。