第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)02

2016年5月27日(金) 11:10 〜 12:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:相澤純也(東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター)

[O-SP-02-1] プロサッカークラブ下部組織における7年間の障害調査~発生時期に着目して~

椎木孝道, 佐藤謙次 (船橋整形外科病院スポーツリハビリテーション部)

キーワード:サッカー, 障害予防, 高校生

【はじめに,目的】サッカーの傷害調査は数多くあるが,大会帯同時など短期間のものや,長期間でも外傷を対象としていることが多く,長期間にわたり障害について調査されたものは少ない。成長期のサッカーは障害の発生頻度が高いことが特徴であると言われているため,予防策を講じるために傾向を知ることは重要と考える。本研究の目的は,プロサッカークラブ下部組織サッカー選手における障害発生時期の特徴を明らかにすることである。

【方法】2005年~2011年の7年間にプロサッカークラブ下部組織に所属した高校1年生から高校3年生の男子サッカー選手89名(2005年28名,2006年33名,2007年26名,2008年25名,2009年24名,2010年27名,2011年32名,平均年齢16.0歳)を対象とした。

傷害の定義は,サッカーの練習および試合中に発生した傷害で,1日以上の練習および試合を休まなければならなかったものとした。一度の外力で発生したものを外傷,多数回の外力や受傷機転の明らかでないものを障害として,対象期間内に記録された報告書から障害によるものを抜粋した。そこから月別に発生件数を集計し,さらに発生部位別・受傷疾患別に発生件数を集計した。それぞれを田中らの方法に準じて上半期群(1~6月)と下半期群(7~12月)に分けて比較を行った。統計学的解析は,これら3つの検討項目についてMann-whitneyのU検定を行い,危険率5%未満を有意差ありとした。

【結果】月別発生件数は,1月8件,2月8件,3月17件,4月17件,5月17件,6月10件,7月7件,8月11件,9月7件,10月10件,11月7件,12月3件であった。上半期群/下半期群では,77/45件で上半期群が有意に多かった。

発生部位別では,上半期群/下半期群で,大腿23/11件,腰14/9件,膝12/11件,臀部・鼠蹊部8/7件となり,大腿において上半期群が有意に多かった。

受傷疾患別では,上半期群/下半期群で,筋損傷40/19件,腱損傷21/17件,疲労骨折等5/2件となり,筋損傷において上半期群が有意に多かった。

【結論】開業医による症例調査報告では,1月から徐々に患者数が増加し6月に最も多くなり,8月には減少し9~12月にかけて漸減することや,ジュニアユースを対象とした調査報告では休み明けに障害が多くなること,またプロチームを対象とした傷害調査報告ではスタッフ変更は傷害発生に影響することが述べられている。

本研究において,上半期に障害発生が多くなり,部位別にみると大腿が,受傷疾患別にみると筋損傷が上半期に多くなる傾向がみられた。上半期は年末年始の休み明けや新チームの開始時期であり,障害が発生しやすい要素が重なったことが増加につながったのではないかと考えられる。これらのことから上半期には特に大腿および筋損傷の予防対策が重要であると思われる。