第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)02

2016年5月27日(金) 11:10 〜 12:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:相澤純也(東京医科歯科大学 スポーツ医歯学診療センター)

[O-SP-02-5] 中高年テニス愛好家における練習前後の関節可動域の変化

髙松敬三, 高原一洋 (タカハラ整形外科クリニック)

キーワード:テニス, 中高年者, 傷害予防

【はじめに,目的】近年,テニス活動における傷害発生部位において,若年者では上下肢や体幹に分散しているが,中高年者では下肢に多く,足関節捻挫や肉離れが増加傾向といわれている。関節可動域のメディカルチェックにおいて,成人トップレベル・ジュニア選手に関する報告は散見されるが,中高年選手について検討したものは少ない。本研究の目的は,テニスクラブ所属中高年者の上下肢・体幹の関節可動域(以下,ROM)を練習前後で比較し,中高年テニス愛好家におけるコンディショニングの方向性について検討することである。


【方法】市町民テニスクラブに所属し,上下肢と体幹に整形外科的疾患の既往がない健常成人25名(男性13名,女性12名,平均年齢62歳)を対象とした。練習前後のROM評価には,6関節(肩・肘・手・股・膝・足関節)と胸腰部に対して関節角度計を用いて計測し,測定値は検者が読み取り,第三者が測定用紙に記載した。なお,対象者には練習開始後30分毎に1回の休憩を導入し,練習後は開始90分後にROM計測を行い,聞き取り調査(疼痛・疲労部位)を実施した。統計処理は,練習前後の比較には対応のあるt検定,男女間の比較には対応のないt検定を用い,有意水準は5%とした。


【結果】練習後において,胸腰部回旋ROMは男女とも有意に小さく(p<0.05),男性では股関節内外旋ROMの左右差(男性15~20°,女性5~10°)が有意に認められたが,その他に差異はなかった。男女間の比較において,性差が認められたのは股関節内外旋・胸腰部回旋ROMで,女性よりも男性の方が有意に小さかった(p<0.05)が,その他に差異はなかった。練習後の疼痛・疲労部位は肩関節3名,肘関節1名,手関節1名,胸腰部6名,股・膝関節5名,足関節9名であり,足関節9名のうち6名は練習後に胸腰部回旋ROMが有意に小さかった(p<0.05)。


【結論】女性では胸腰部回旋を除いてROMの変化は少なかったが,男性では練習後において股関節内外旋ROMの左右差が大きいほど,胸腰部回旋ROMが減少しやすい傾向であった。先行研究において,股関節内外旋ROMの左右差が大きいと足関節捻挫を生じやすいことが報告されており,中高年者がテニスを行う際,股関節や胸腰部回旋の動きが制限されると若年者に比べてフットワークへの影響が推測されるため,足部の外傷発生や運動制御能低下が懸念される。また,練習後の聞き取り調査において,15名は胸腰部・足関節に疼痛や疲労を認めており,そのうち7名は練習前後における股関節内外旋ROMの左右差が有意に大きく,胸腰部回旋ROMの減少が示された。これらのことから,胸腰部回旋ROMの減少と傷害発生の因果関係は明らかにされていないが,テニス練習前後における股関節内外旋ROMの左右差と胸腰部回旋ROMを評価することは,中高年テニス愛好家のコンディショニングの方向性を検討する一助になるのではないかと考える。