[O-SP-05-1] Medial tibial stress syndrome症例における走行時の後・前足部kinematicsおよび内側縦アーチの動態の検討
キーワード:シンスプリント, ランニング, 動作解析
【はじめに,目的】
Medial tibial stress syndrome(MTSS)は運動時に脛骨後内側縁に疼痛が発生する症状とされ,ランニング障害の13~17%を占める下肢オーバーユース障害である。MTSSの危険因子として,荷重動作時の内側縦アーチ低下や後足部外反角度増大が報告されている。荷重動作時の内側縦アーチ低下や後足部運動は,前足部運動と関連することが知られているが,MTSS症例において前足部や内側縦アーチを含めた走行時の足部kinematicsは明らかではない。本研究の目的は,multi-segment foot modelを用いて,MTSS症例におけるトレッドミル走行時の後足部,前足部および内側縦アーチの動態の特徴を検討することとした。
【方法】
対象は,MTSS症例群11名(男性10名,女性1名,年齢:20.5±1.5歳,BMI:22.0±2.0kg/m2)および健常群11名(男性10名,女性1名,年齢:20.5±1.4歳,BMI:19.7±1.3 kg/m2)とした。MTSSの定義はYatesら(2004)の基準に従い,1)脛骨後内側縁の圧痛がある,2)圧痛部位が5cm以上である,3)X線画像上で脛骨疲労骨折の所見がない,こととした。Leardiniら(2007)のmulti-segment foot modelに準じて下腿と足部に反射マーカーを16個貼付し,赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製:200 Hz)を用いて,裸足によるトレッドミル走行(12km/h)の5ストライドを記録・解析した。解析にはVisual 3D(C-motion社製)を用いて,下腿に対する後足部内外反・内外転,後足部に対する前足部内外反・内外転・底背屈および内側縦アーチ角(第1中足骨頭,舟状骨,踵骨下部のマーカーから成る角)を算出した。立脚相を100%に正規化し,対応のないt-検定を用いて各kinematicsを群間で比較した。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
MTSS症例群は健常群に比し,立脚相3~14%の区間で有意に後足部外反が大きく,立脚相0~28%および55~100%の2つの区間で有意に後足部外転が大きかった(p<0.05)。さらに,MTSS症例群は立脚相21~35%の区間において健常群に比し,有意に前足部外転が大きかった(p<0.05)。一方で,前足部内外反・底背屈および内側縦アーチ角では群間で差は認められなかった。
【結論】
本研究結果は,走行立脚相においてMTSS症例は後足部外反・外転および前足部外転が健常者に比べ,有意に大きいことを示した。したがって,MTSS症例では,後足部外反および外転の増大により足部内返し筋がより伸長された状態で遠心性収縮を要求され,脛骨後内側縁に牽引ストレスが生じる可能性がある。加えて,前足部外転および後足部外転の増大は,下腿に対し足部をより外側に向けた状態であることを示唆し,これは走行時の荷重応答および踏み切りに伴う足部内転フリーモーメントの発生に寄与し,脛骨に回旋ストレスが加わる可能性がある。したがって,MTSS症例に対する理学療法実施の際には,後足部だけでなく前足部運動にも着目する必要があることを示唆した。
Medial tibial stress syndrome(MTSS)は運動時に脛骨後内側縁に疼痛が発生する症状とされ,ランニング障害の13~17%を占める下肢オーバーユース障害である。MTSSの危険因子として,荷重動作時の内側縦アーチ低下や後足部外反角度増大が報告されている。荷重動作時の内側縦アーチ低下や後足部運動は,前足部運動と関連することが知られているが,MTSS症例において前足部や内側縦アーチを含めた走行時の足部kinematicsは明らかではない。本研究の目的は,multi-segment foot modelを用いて,MTSS症例におけるトレッドミル走行時の後足部,前足部および内側縦アーチの動態の特徴を検討することとした。
【方法】
対象は,MTSS症例群11名(男性10名,女性1名,年齢:20.5±1.5歳,BMI:22.0±2.0kg/m2)および健常群11名(男性10名,女性1名,年齢:20.5±1.4歳,BMI:19.7±1.3 kg/m2)とした。MTSSの定義はYatesら(2004)の基準に従い,1)脛骨後内側縁の圧痛がある,2)圧痛部位が5cm以上である,3)X線画像上で脛骨疲労骨折の所見がない,こととした。Leardiniら(2007)のmulti-segment foot modelに準じて下腿と足部に反射マーカーを16個貼付し,赤外線カメラ6台(Motion Analysis社製:200 Hz)を用いて,裸足によるトレッドミル走行(12km/h)の5ストライドを記録・解析した。解析にはVisual 3D(C-motion社製)を用いて,下腿に対する後足部内外反・内外転,後足部に対する前足部内外反・内外転・底背屈および内側縦アーチ角(第1中足骨頭,舟状骨,踵骨下部のマーカーから成る角)を算出した。立脚相を100%に正規化し,対応のないt-検定を用いて各kinematicsを群間で比較した。有意水準はp<0.05とした。
【結果】
MTSS症例群は健常群に比し,立脚相3~14%の区間で有意に後足部外反が大きく,立脚相0~28%および55~100%の2つの区間で有意に後足部外転が大きかった(p<0.05)。さらに,MTSS症例群は立脚相21~35%の区間において健常群に比し,有意に前足部外転が大きかった(p<0.05)。一方で,前足部内外反・底背屈および内側縦アーチ角では群間で差は認められなかった。
【結論】
本研究結果は,走行立脚相においてMTSS症例は後足部外反・外転および前足部外転が健常者に比べ,有意に大きいことを示した。したがって,MTSS症例では,後足部外反および外転の増大により足部内返し筋がより伸長された状態で遠心性収縮を要求され,脛骨後内側縁に牽引ストレスが生じる可能性がある。加えて,前足部外転および後足部外転の増大は,下腿に対し足部をより外側に向けた状態であることを示唆し,これは走行時の荷重応答および踏み切りに伴う足部内転フリーモーメントの発生に寄与し,脛骨に回旋ストレスが加わる可能性がある。したがって,MTSS症例に対する理学療法実施の際には,後足部だけでなく前足部運動にも着目する必要があることを示唆した。