[O-SP-07-1] 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の病巣部位の検討
―投球時痛を生じるphaseによる比較―
Keywords:上腕骨小頭離断性骨軟骨炎, 病巣部位, 痛み
【はじめに,目的】
青少年期野球選手のみを対象として上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)の病巣部位を調査した報告は非常に少ない。また,投球時痛を生じるタイミングとOCDの病巣部位の関連性を調査した報告は見当たらない。そこで,本研究ではOCDの病巣部位を調査し,さらに投球時痛を生じるphase(以下painful phase)による比較検討を行ったので報告する。
【方法】
対象は2010年1月から2015年9月に受診しOCDと診断された青少年期野球選手42名とした。年齢(平均±標準偏差)は発症時13.2±1.3歳,受診時13.7±1.4歳で,性別は全例男性であった。ポジションは投手20名,内野手16名,捕手3名,外野手3名であった。X線分類(岩堀2006)は中央型7名,広範囲型35名であった。病巣部位の検討は,MRIのT1強調矢状断像にて,上腕骨長軸線に対して病巣部後下縁と前上縁を結んだ線の垂線が成す角度(以下病巣角)を算出した。すなわち,病巣角が大きいほど病巣がより前方に位置することを意味する。次に,問診にて聴取可能であった34名をpainful phaseによって群分けし,各群間の病巣角を比較検討した。統計処理は一元配置分散分析を行い,多重比較検定はTukey-Kramer法を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
全42名の病巣角の平均値は64.8±12.3°であった。次に,聴取可能であった34名のpainful phaseの内訳は,Late Cocking(LC)期が6名(18%),Acceleration(Acc)期が14名(41%),Deceleration(Dcl)期が8名(23%),投球中は痛くないが後で痛い(After pain)が3名(9%),痛みは全くない(No pain)が3名(9%)であった。各群の病巣角は,LC群77.6±12.0°,Acc群65.0±11.3°,Dcl群55.0±11.7°,After pain群66.9±4.2°,No pain群60.1±3.1°であった。LC群はDcl群よりも病巣角が有意に大きかった(p<0.01)。その他の各群間には有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果,病巣角は64.8±12.3°であった。これは,先行研究(室井ら2008)の報告における54.0±9.3°(n=16)と比較して約10°大きい値であり,OCDの病巣が小頭のより前方に位置することが示唆された。このことより,青少年期野球選手のOCD症例は,肘関節屈曲位を強めた投球動作を行うことで腕橈関節に特異的なストレスを生じている可能性が考えられる。また,painful phaseによる比較ではLC群がDcl群よりも有意に病巣角が大きく,LC群は小頭のより前方に,Dcl群はより後方に病巣が位置することが示唆された。これらより,投球動作時に痛みを生じる際の肘関節肢位とOCDの病巣部位に関連性がある可能性が考えられた。一方で,After pain群やNo pain群を約18%認めたことから,OCDは必ずしも投球時痛を伴うものではないという事実も考慮する必要があり,結果の解釈には注意を要する。本研究の結果はOCD発生要因検討の一助となると考える。今後は身体機能や投球フォームも含めた検討が必要である。
青少年期野球選手のみを対象として上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(以下OCD)の病巣部位を調査した報告は非常に少ない。また,投球時痛を生じるタイミングとOCDの病巣部位の関連性を調査した報告は見当たらない。そこで,本研究ではOCDの病巣部位を調査し,さらに投球時痛を生じるphase(以下painful phase)による比較検討を行ったので報告する。
【方法】
対象は2010年1月から2015年9月に受診しOCDと診断された青少年期野球選手42名とした。年齢(平均±標準偏差)は発症時13.2±1.3歳,受診時13.7±1.4歳で,性別は全例男性であった。ポジションは投手20名,内野手16名,捕手3名,外野手3名であった。X線分類(岩堀2006)は中央型7名,広範囲型35名であった。病巣部位の検討は,MRIのT1強調矢状断像にて,上腕骨長軸線に対して病巣部後下縁と前上縁を結んだ線の垂線が成す角度(以下病巣角)を算出した。すなわち,病巣角が大きいほど病巣がより前方に位置することを意味する。次に,問診にて聴取可能であった34名をpainful phaseによって群分けし,各群間の病巣角を比較検討した。統計処理は一元配置分散分析を行い,多重比較検定はTukey-Kramer法を用いた。危険率5%未満を有意とした。
【結果】
全42名の病巣角の平均値は64.8±12.3°であった。次に,聴取可能であった34名のpainful phaseの内訳は,Late Cocking(LC)期が6名(18%),Acceleration(Acc)期が14名(41%),Deceleration(Dcl)期が8名(23%),投球中は痛くないが後で痛い(After pain)が3名(9%),痛みは全くない(No pain)が3名(9%)であった。各群の病巣角は,LC群77.6±12.0°,Acc群65.0±11.3°,Dcl群55.0±11.7°,After pain群66.9±4.2°,No pain群60.1±3.1°であった。LC群はDcl群よりも病巣角が有意に大きかった(p<0.01)。その他の各群間には有意な差を認めなかった。
【結論】
本研究の結果,病巣角は64.8±12.3°であった。これは,先行研究(室井ら2008)の報告における54.0±9.3°(n=16)と比較して約10°大きい値であり,OCDの病巣が小頭のより前方に位置することが示唆された。このことより,青少年期野球選手のOCD症例は,肘関節屈曲位を強めた投球動作を行うことで腕橈関節に特異的なストレスを生じている可能性が考えられる。また,painful phaseによる比較ではLC群がDcl群よりも有意に病巣角が大きく,LC群は小頭のより前方に,Dcl群はより後方に病巣が位置することが示唆された。これらより,投球動作時に痛みを生じる際の肘関節肢位とOCDの病巣部位に関連性がある可能性が考えられた。一方で,After pain群やNo pain群を約18%認めたことから,OCDは必ずしも投球時痛を伴うものではないという事実も考慮する必要があり,結果の解釈には注意を要する。本研究の結果はOCD発生要因検討の一助となると考える。今後は身体機能や投球フォームも含めた検討が必要である。