第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本スポーツ理学療法学会 一般演題口述
(スポーツ)07

Sat. May 28, 2016 12:30 PM - 1:30 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:青木啓成(相澤病院 スポーツ障害予防治療センター)

[O-SP-07-4] 少年野球選手における肘・肩関節の疼痛と新体力テストとの関連について

佐藤祐一 (日高リハビリテーション病院)

Keywords:少年野球, 肘・肩関節疼痛, 新体力テスト

【はじめに,目的】

少年野球は,学童期に競技人口の多いスポーツの1つであるが,未熟な運動能力で投球を行うことで,肘・肩関節の疼痛経験を有していることが多いと考える。そこで,少年野球選手の肘・肩関節疼痛と文部科学省が運動能力の指標としている新体力テストを比較し,肘・肩関節の疼痛と運動能力との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】

2014年11月にT市野球連盟学童部に所属する少年野球チーム46チーム,162名に対し,新体力テスト項目の握力・上体起こし・反復横跳び・立ち幅跳びを実施。問診票により過去と現在における肘・肩関節の疼痛の状況を確認した。過去・現在における肘・肩関節の疼痛を有する者を疼痛経験あり群,疼痛を有さないものを疼痛経験なし群とし,2群間における新体力テストの各項目をMann-WhitneyのU検定を用い分析。新体力テスト各項目の中央値を抽出し,中央値以上と中央値未満で分け,肘・肩関節の疼痛経験の有無との関連性についてχ2独立性の検定を用い分析した。解析にはDr.SPSSII for windowsを用い有意水準は5%とした。

【結果】

問診表は,全回答者数162名中,有効回答者数は156名,肘関節疼痛経験者51名,肩関節疼痛経験者53名であった。

肘・肩痛経験あり中央値(四分位範囲)/肘・肩痛経験なし中央値(四分位範囲)とし,肘関節疼痛経験の有無と新体力テスト項目の群間比較では,握力19.0(17.0-23.0)kg/18.0(16.0-22.0)kg,上体起こし19.0(17.0-22.0)回/19.0(16.5-21.0)回,反復横跳び43.0(39.0-46.0)回/42.0(38.5-46.5)回,立ち幅跳び155.0(142.0-167.0)cm/151.0(141.0-167.5)cmで有意差を認めなかった。肩関節疼痛経験の有無と新体力テスト項目の群間比較では,握力19.0(16.5-22.0)kg/19.0(17.0-22.0)kg,上体起こし19.0(15.5-21.0)回/19.0(17.0-21.0)回,反復横跳び42.0(38.5-47.0)回/43.0(39.0-46.0)回,立ち幅跳び155.0(146.5-168.0)cm/149.0(140.0-167.0)cmで有意差を認めなかった。

肘関節疼痛経験の有無と新体力テスト項目の関連については,握力(χ2=0.021,p=0.884),上体起こし(χ2=0.083,p=0.773),反復横跳び(χ2=0.160,p=0.689),立ち幅跳び(χ2=0.728,p=0.393)で有意な関連を認めなかった。肩関節疼痛経験の有無と新体力テスト項目の関連については,握力(χ2=0.291,p=0.589),上体起こし(χ2=0.004,p=0.952),反復横跳び(χ2=0.922,p=0.337),立ち幅跳び(χ2=3.458,p=0.063)で有意な関連を認めなかった。

【結論】

藤竹ら(2012年)は,身体能力と肘・肩関節との関連について,疼痛群と非疼痛群で有意な差は認めなかったと報告している。本研究においても疼痛経験の有無と新体力テスト項目において有意差や関連性は認めなかった。

今回の結果より,単一的な運動能力だけではなく,投球動作特有の運動連鎖を踏まえたバランステスト等も実施し,多角的に肘・肩関節の疼痛との関連を分析する必要があると考える。