第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)01

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:井口茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 保健学専攻)

[O-TK-01-1] 男女別にみた要支援・軽度要介護高齢者の重度化に対する運動機能評価の有用性

大規模集団における3年間の追跡調査による検討

小林修1, 林悠太1, 波戸真之介1, 今田樹志1, 島田裕之2 (1.株式会社ツクイ, 2.国立長寿医療研究センター)

Keywords:要支援・要介護高齢者, 運動機能, 重度化

【はじめに,目的】

高齢者において身体的虚弱は生活機能を低下させる要因であり,要介護度の重度化予防のためにアプローチが必要とされている。しかし,どのような運動機能が要介護度の重度化に陥る原因として重要であるかは十分明らかになっていない点が多く,運動機能は性別により差がある可能性が高い。そこで本研究の目的は3年間の追跡調査によって要介護度の重度化に影響を与える運動機能とCut-off pointを男女別に明らかにすることとした。

【方法】

対象は通所介護を3年以上継続して利用していた要支援1から要介護2までの要支援・軽度要介護高齢者6876名(年齢81.2±6.5歳,男性2450名,女性4426名)であった。測定項目は握力,chair stand test(CST),開眼片足立ち,6m歩行,timed up & go test(TUG)を用い,要支援・要介護高齢者それぞれに関して,ベースライン時から3年間で維持または改善した者を維持・改善群,要介護が重度化した者を悪化群とし,性別で分けた。

男女別で維持・改善群と悪化群の各変数の比較をするために単変量分析を行い,有意な関連が認められた項目はROC曲線を描き,Youden indexよりcut-off値を求めた。算出したcut-off値より測定結果がcut-off値未満の群と以上の群の2群に分類した。年齢,Mental Status Questionnaireを調整要因とし,これらの項目にcut-off値分類を加えた項目を独立変数,維持・改善群または悪化群を従属変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】

単変量分析にて維持・改善群が有意に高い成績を示したのは,要支援男性で握力,要支援女性で握力,片足立ち,CST,TUG,軽度要介護男性で握力,片足立ち,CST,6m歩行,TUG,軽度要介護女性で握力,CST,6m歩行,TUGであった。

cut-off値は,要支援男性では握力29.5kg,女性で握力14.5kg,片足立ち5.5秒,CST11.9秒,TUG12.9秒であった。軽度要介護男性では握力28.5kg,片足立ち2.5秒,CST12.6秒,6m歩行8.9秒,TUG13.2秒,女性で握力15.5kg,CST14.7秒,6m歩行6.9秒,TUG13.5秒であった。

ロジスティック回帰分析の結果,要支援男性で握力(OR2.18,95%CI 1.49-3.20,P<0.01),要支援女性で握力(OR1.27,95%CI 1.02-1.58,P<0.05),片足立ち(OR1.38,95%CI 1.10-1.72,P<0.01)が,軽度要介護男性でCST(OR1.32,95%CI 1.05-1.66,P<0.05),TUG(OR1.35,95%CI 1.05-1.74,P<0.01)が,軽度要介護女性で握力(OR1.34,95%CI 1.11-1.63,P<0.01),6m歩行(OR1.32,95%CI 1.07-1.65,P<0.05),TUG(OR1.57,95%CI 1.27-1.93,P<0.01)が重度化に影響を与える要因として抽出された。

【結論】

要介護度の重度化に影響を及ぼす要因として,男女共に要支援では握力,要介護では下肢機能が重要になることが示唆された。女性でのみ要支援では片足立ち,要介護では握力が抽出されており,女性ではより多様面な運動機能検査が重要であることが示唆された。今後はさらに他の要因も踏まえ調査していくことが課題である。