[O-TK-01-6] 自律神経活動を用いたポジショニング評価の可能性
Keywords:ポジショニング, 自律神経活動, リラクセーション
【はじめに,目的】
高齢化や認知症患者の増加に伴い,医療・福祉現場では要介護高齢者の重度化が目立つ。経口摂取が困難な終末期を迎えると,生活の大半を静的姿勢が占めることになる。このような状況において,ポジショニングは,重要な介入方法の一つとなる。ポジショニングの目的として褥瘡予防や拘縮予防はもちろん,重度要介護高齢者では積極的な姿勢ケアによるリラクセーションは特に重要であると考える。しかし,終末期を迎えると言語機能も損なわれ,自身の要望や苦痛を訴えることができないため,そのケアは支援者の能動的なものに移行する。それゆえに,ポジショニングによる主観的満足感を確認,評価することが困難となる。そこで我々は,ポジショニングの有無による心拍数と自律神経活動を測定し,安楽の状況を評価できるか検証した。
【方法】
研究に同意を得られたポジショニングケアを必要とする症例3名(障害高齢者の日常生活の自立度B2:1名,C2:2名)。ポジショニングなし(背臥位)とポジショニングあり,それぞれの状況で体圧分布〈ニッタ社,BPMS〉,および5分間,自律神経活動と心拍数を測定した。ポジショニングの設定は①接地面積を広くする,②体圧をできるだけ分散する(除圧),③肩甲帯,骨盤帯,体幹での回旋(捻じれ)の改善を基本とし肢位の決定を行った。自律神経活動は,MemCalc Bonaly Light(GMS社)を用い,スペクトル解析から低周波成分(LF:Low frequency,0.04~0.15Hz)と高周波成分(HF:High frequency,0.15~0.40Hz)を計算し,HFを副交感神経活動指標に,LF/HFを交感神経活動指標にした。
【結果】
A氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,30.8±6.3から43.2±11.2に上昇,交感神経活動の変化は0.4±0.3から0.6±0.6に低下した。心拍数の変化は,60.9±0.8拍/分から58.1±0.3拍/分に低下した。
B氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,296.2±197.2から373.4±508.4に上昇,交感神経活動の変化は8.2±14.7から0.8±0.6に低下した。心拍数の変化は,96.7±7.8拍/分から95.2±1.4拍/分に低下した。
C氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,2732.4±1949.7から985.7±735.2に低下,交感神経活動の変化は,2.1±2.7から0.5±0.3に低下した。ポジショニングなしのときの副交感神経活動および交感神経活動の変動は激しく,安定しなかった。
【結論】
リラックス状態と副交感神経活動には,密な関係があるといわれている。今回の研究においても同様の傾向がみられ,重度要介護高齢者においてポジショニングの有無によって心拍数と自律神経活動に変化が生じた。この変化は,リラックス状態を反映していると考えられ,安楽の状況を評価できる可能性が示唆された。そして,自律神経活動として可視化することで尊厳あるケアにつなげることが可能となると考えられる。
高齢化や認知症患者の増加に伴い,医療・福祉現場では要介護高齢者の重度化が目立つ。経口摂取が困難な終末期を迎えると,生活の大半を静的姿勢が占めることになる。このような状況において,ポジショニングは,重要な介入方法の一つとなる。ポジショニングの目的として褥瘡予防や拘縮予防はもちろん,重度要介護高齢者では積極的な姿勢ケアによるリラクセーションは特に重要であると考える。しかし,終末期を迎えると言語機能も損なわれ,自身の要望や苦痛を訴えることができないため,そのケアは支援者の能動的なものに移行する。それゆえに,ポジショニングによる主観的満足感を確認,評価することが困難となる。そこで我々は,ポジショニングの有無による心拍数と自律神経活動を測定し,安楽の状況を評価できるか検証した。
【方法】
研究に同意を得られたポジショニングケアを必要とする症例3名(障害高齢者の日常生活の自立度B2:1名,C2:2名)。ポジショニングなし(背臥位)とポジショニングあり,それぞれの状況で体圧分布〈ニッタ社,BPMS〉,および5分間,自律神経活動と心拍数を測定した。ポジショニングの設定は①接地面積を広くする,②体圧をできるだけ分散する(除圧),③肩甲帯,骨盤帯,体幹での回旋(捻じれ)の改善を基本とし肢位の決定を行った。自律神経活動は,MemCalc Bonaly Light(GMS社)を用い,スペクトル解析から低周波成分(LF:Low frequency,0.04~0.15Hz)と高周波成分(HF:High frequency,0.15~0.40Hz)を計算し,HFを副交感神経活動指標に,LF/HFを交感神経活動指標にした。
【結果】
A氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,30.8±6.3から43.2±11.2に上昇,交感神経活動の変化は0.4±0.3から0.6±0.6に低下した。心拍数の変化は,60.9±0.8拍/分から58.1±0.3拍/分に低下した。
B氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,296.2±197.2から373.4±508.4に上昇,交感神経活動の変化は8.2±14.7から0.8±0.6に低下した。心拍数の変化は,96.7±7.8拍/分から95.2±1.4拍/分に低下した。
C氏:ポジショニングなしからありへの副交感神経活動の変化は,2732.4±1949.7から985.7±735.2に低下,交感神経活動の変化は,2.1±2.7から0.5±0.3に低下した。ポジショニングなしのときの副交感神経活動および交感神経活動の変動は激しく,安定しなかった。
【結論】
リラックス状態と副交感神経活動には,密な関係があるといわれている。今回の研究においても同様の傾向がみられ,重度要介護高齢者においてポジショニングの有無によって心拍数と自律神経活動に変化が生じた。この変化は,リラックス状態を反映していると考えられ,安楽の状況を評価できる可能性が示唆された。そして,自律神経活動として可視化することで尊厳あるケアにつなげることが可能となると考えられる。