第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)02

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:佐野一成(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハビリ)

[O-TK-02-5] 通所リハビリテーション利用者の主観的幸福感と身体的・心理的・社会的要因との関連

新岡大和 (さいたま記念病院リハビリテーションセンター)

キーワード:主観的幸福感, 通所リハビリテーション, 生活満足度

【はじめに,目的】通所リハビリテーション(以下,通所リハ)では利用者である障がい高齢者の主観的幸福感(以下,SWB)を向上させるような支援が求められているが,障がい高齢者は身体的・心理的・社会的背景が多様であることから,その具体的な支援方法は明らかではない。よって,本研究は通所リハ利用者のSWBに影響を及ぼす要因を身体的・心理的・社会的側面から包括的に捉えて明らかにすることを目的とした。

【方法】埼玉県にある6つの介護老人保健施設の通所リハ利用者の中で本研究への参加同意が得られた152名の対象者うち,Mini Mental State Examinationが21点以上の者,測定方法が理解可能な者,年齢が65歳以上である者127名を分析対象者とした(男性40名,女性87名,年齢:78±8歳,要支援1:16名,要支援2:23名,要介護1:40名,要介護2:27名,要介護3:18名,要介護4:3名)。測定・調査項目はSWBの評価に生活満足度K(以下,LSIK),身体的要因の評価に最大5m移動時間,機能的自立度評価法運動項目,心理的要因の評価に老年期うつ病評価尺度(以下,GDS-15),社会的要因の評価にソーシャルネットワークとして日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(以下,LSNS-6),ソーシャルスキルとしてKikuchi's Social Skill Scale・18項目版(以下,KISS-18)を用いた。これらは理学・作業療法士によって測定・調査された。分析はLSIKと身体的・心理的・社会的要因間でSpearmanの相関分析を実施した。その後,LSIKを従属変数,LSIKと相関のあった要因を独立変数とし,多重共線性の問題を考慮した上で重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。有意水準は5%未満とした。

【結果】LSIKと相関関係が認められた要因は,GDS-15(r=-.576,p<.01),LSNS-6(r=.187,p<.05),KISS-18(r=-.504,p<.01)であった。LSIKを従属変数とした重回帰分析の結果,LSIKに影響を及ぼす要因はGDS-15(β=-.450,p<.01),次いでKISS-18(β=-.294,p<.01)であった。得られた回帰式はLSIK=7.977-0.250×GDS-15-0.052×KISS-18で,決定係数(R2)は0.641であった。

【結論】通所リハ利用者のSWBには心理的要因の抑うつ,社会的要因のソーシャルスキルが影響を及ぼしていたことから,通所リハでは安定した生活を継続・展開する上で身体機能への介入も重要であるが,それのみに偏重せずに身体的・心理的・社会的要因に包括的に介入することが重要であることが示唆された。そのためには抑うつなどの心理状態の縦断的な評価,ソーシャルスキルを発揮しやすいような環境構築支援が重要と考えられた。