第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)02

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:佐野一成(介護老人保健施設 ローランド 訪問リハビリ)

[O-TK-02-6] 認知機能低下患者に対する疼痛強度評価スケールの有効性と影響を与える因子の探索

関塚祐1, 平賀慎一郎2, 瀧野皓哉3, 松原崇紀2, 肥田朋子4 (1.鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院理学療法科, 2.金沢大学大学院医薬保健学総合研究科機能解剖学, 3.岐阜ハートセンター心臓リハビリテーション室, 4.名古屋学院大学リハビリテーション学部)

Keywords:認知機能, 疼痛, NRS

【はじめに,目的】認知機能が低下した患者は様々な症状を訴えるが,中でも痛みを訴えて治療介入に難渋する。また,痛みの程度に矛盾するような行動を示すこともある。日々の臨床において患者の痛みの状態を把握し,治療効果を判定する上でも疼痛評価の定量化は必須と言えるが,認知機能が低下した患者の場合には更なる注意が必要である。先行研究では,認知症患者に対する疼痛強度評価スケールの有効性を検討しており,Numerical Rating Scale(NRS)とVerbal Rating Scale(VRS)に関しては使用できる可能性が示されている。しかし,先行研究では認知機能の程度による疼痛強度評価スケール使用の有効性や,使用に影響因子をMini-Mental State Examination(MMSE)の下位項目から示した報告はされていない。そこで,本研究では認知機能の程度による疼痛強度評価スケールの有効性とそれに影響を与える因子を探索することを目的とした。

【方法】対象は当院の回復期病棟に入院している65歳以上の高齢患者のうち,問診にて痛みがあると答えた23名(平均年齢83.8±8.7歳)とした。除外基準はうつ病,せん妄,意識障害を有する者とした。認知機能検査にはMMSEを使用し,認知機能が軽度低下した患者(MMSE 23-18)をmild群,中程度低下した患者(MMSE 17-10)をmoderate群,低下していなかった患者(MMSE 24以上)をN群とした。疼痛評価にはNRSとVRSを使用し,それぞれの説明を3回まで行い,回答ができなかった場合は理解不十分と判断した。対象者に各疼痛評価をランダムに行った後,30分後再度同じ評価を行い,その後3日以内にMMSEを実施した。各疼痛評価の1回目と2回目の数値が一致した割合を各群にて算出し,MMSE下位項目の点数においても割合と平均点を比較した。

【結果】本研究対象における認知機能低下患者の人数は78%(18名),そのうちmild群は43%(10名),moderate群は35%(8名)であった。1回目と2回目の疼痛評価の数値が一致した割合は,mild群でNRS 60%(6名),VRS 100%(10名),moderate群でNRS38%(3名),VRS87%(5名)であった。N群はどちらも100%であった。moderate群でNRSの数値が一致した3名の中で,MMSEの下位項目の図形模写を得点できたのは,3名(100%)であった。

【結論】認知機能低下患者では程度に関わらず,NRSよりVRSの方が一致しやすい傾向がみられた。また,認知機能低下が中程度でNRSの数値が一致した者では,MMSEの下位項目の図形模写について得点できた割合が高くなる傾向を示した。MMSEでの図形模写の課題では視空間認知だけでなくワーキングメモリーにも関連があるとされており,今後はワーキングメモリーや注意といった認知機能に焦点を合わせた検討を実施していく必要性がある。