第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)03

Sat. May 28, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:堀秀昭(福井医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-TK-03-2] 地域在住高齢者における,転倒恐怖感と運動機能の関連

田實裕嗣1, 河口誠也2, 福元喜啓3, 浅井剛3, 岡智大4, 久保宏紀4, 糟谷明彦4, 門條宏宣4, 大島賢典4 (1.姫路中央病院, 2.訪問看護ステーションリハ・リハ, 3.神戸学院大学総合リハビリテーション学部, 4.神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科)

Keywords:転倒恐怖感, 運動機能, 高齢者

【はじめに,目的】

近年,高齢者の転倒恐怖感が問題となっている。転倒恐怖感は日常生活における活動量の低下を引き起こし,二次的な廃用性変化をもたらす。転倒恐怖感を減少させるには,その要因に対する直接的な介入が有効である。特に,運動機能に関わる要因への介入はより有効だと考えられる。しかし,転倒恐怖感に結びつく運動機能低下については不明な点が多く,その詳細は不明である。そこで,本研究では,地域在住高齢者に対して運動機能を多面的に測定し,日常生活での転倒恐怖感を把握する尺度であるFall Efficacy Scale(以下FES)を使用して,転倒恐怖感と関連の強い運動機能を明らかにすることとした。

【方法】

対象は屋外歩行が自立している地域在住高齢者とした。検査項目は転倒恐怖感の検査としてFES,運動機能検査としてTimed up and Go test(以下TUG),5Chair Stand test(以下5CS),段昇降テスト,10m歩行テスト(快適歩行速度と最大歩行速度)を計測した。統計解析では,まずピアソンの積率相関分析を用いて,FESと各運動機能検査の関連を求めた。続いて,ステップワイズ法を用いてFESを説明する最適な運動機能検査の組み合わせを抽出し,重回帰モデルを作成した。この際,選択する独立変数には運動機能検査項目を投入し,調整変数には年齢,性,身長,体重を投入した。なお統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

対象は103名(男/女:38/65,年齢:72.0±8.2歳)であった。FESは全ての運動機能検査項目と中等度の相関を示した(TUG:r=-0.55,p<0.01,5CS:r=-0.42,p<0.01,段昇降テスト:r=0.35,p<0.01,10m快適歩行速度:r=-0.45,p<0.01,10m最大歩行速度:r=-0.50,p<0.01)。FESに影響を及ぼす因子としてTUGが抽出された(標準β係数:-0.51,p<0.01)。

【結論】

本研究の結果より,地域在住高齢者においてFESは全ての運動機能検査との関連が認められた。さらに運動機能検査項目の中では,転倒恐怖感を反映する最適な検査としてTUGが抽出された。TUGは他の運動機能検査に比べ,起立・着座,方向転換,歩行を含む複合的な運動能力が評価される検査である。これらのことから転倒恐怖感の減少に対してのアプローチとしては,単独の運動よりも複合的な運動能力の評価とその維持・向上を目的とした理学療法プログラムが重要であることが示唆された。