第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)03

Sat. May 28, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:堀秀昭(福井医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-TK-03-4] メタボリックシンドロームの就労者に対する職域サポート型運動介入が運動セルフエフィカシーおよび身体活動,骨格筋量に与える影響

(クロスオーバー研究)

佐藤友則1,5, 高野賢一郎2, 浅田史成3, 仁田靖彦4, 根本友紀1, 内海貴子1, 佐藤克巳1, 上月正博5, 宗像正徳1 (1.東北労災病院治療就労両立支援センター, 2.関西労災病院治療就労両立支援センター, 3.大阪労災病院治療就労両立支援センター, 4.中国労災病院治療就労両立支援センター, 5.東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野)

Keywords:就労者, 身体活動, 運動セルフエフィカシー

【はじめに,目的】職場や家庭生活における機械化の進歩や交通手段の発達により,便利で快適になった反面,身体活動は著しく低下している。また,脂肪摂取量の増加による過栄養状態も加わり,これらを背景にメタボリックシンドロームが急増している。この病態は内臓脂肪蓄積を基礎とし,高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常が累積した状態で,動脈硬化性疾患や糖尿病の発症に繋がるため,医療費抑制の視点からもその対策が急務である。メタボリックシンドロームの就労者は,出張や仕事の疲労,残業により運動する時間の確保が難しく,運動に取り組めない者も多い。その一因として運動を行うことへの諦めや自信のなさが指摘されている。前回,我々は職場が運動の場所と時間を提供し,理学療法士が運動指導を行う職域サポート型運動介入により,通常指導の減量効果が強化されることを報告した。そこで本研究では,職域サポート型運動介入が運動セルフエフィカシーや身体活動,骨格筋量に与える影響を検討した。

【方法】定期健康診断にてメタボリックシンドロームと診断され,生活指導を受けたが効果がみられなかった労災病院勤務者28名(平均年齢50±11歳,男性12名)を対象とした。研究デザインは,通常指導+職域サポート型運動介入と通常指導のみの介入をそれぞれ6ヶ月ずつ交差させる無作為化クロスオーバー法で,A群は通常指導+職域サポート型運動介入から開始し,B群は通常指導のみから開始した。通常指導は保健師または管理栄養士と理学療法士が共同で,生活習慣改善のための口頭による生活指導を2ヶ月に1回の頻度で行った。職域サポート型運動介入は,職場が運動の場所と時間を提供し,週3回の頻度で理学療法士の指導のもと運動を実施した。運動内容は開始前後にストレッチ体操を10分間,自重を用いた四肢および体幹の筋力トレーニングを20分から30分間,自転車エルゴメータを用いた有酸素運動を20分から30分間である。測定項目は体組成および腹囲,血圧,脂質代謝,糖代謝からなるメタボリックシンドローム構成因子および運動セルフエフィカシー,身体活動の指標として一日あたりの平均歩数およびメッツ・時/週であり,測定時期はベースライン,6ヶ月,12ヶ月の3時点とした。

【結果】通常指導+職域サポート型運動介入では,体重,BMI,腹囲,体脂肪率が有意に減少した(それぞれp<0.01)。また,血圧の低下やHDLコレステロールの上昇がみられ,一日あたりの平均歩数や運動セルフエフィカシーが増加した(それぞれp<0.05)。一方,通常指導のみでは介入前後で一日あたりの平均歩数とメッツ・時/週が有意に減少し,骨格筋量に減少の傾向がみられた。

【結論】通常の生活指導で減量の難しい就労者に対し,職域サポート型運動介入を付加することで運動セルフエフィカシーや一日あたりの平均歩数,身体活動を増加させ,骨格筋量を低下させることなく,減量と降圧,脂質代謝の改善が得られることが示された。