第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本地域理学療法学会 一般演題口述
(地域)03

2016年5月28日(土) 10:00 〜 11:00 第5会場 (札幌コンベンションセンター 2階 201+202)

座長:堀秀昭(福井医療短期大学 リハビリテーション学科理学療法学専攻)

[O-TK-03-5] 応急仮設住宅居住高齢者の身体活動量と運動機能およびQOLに関する調査

只木正和1, 小野田修一1, 森山信彰2, 浦辺幸夫2, 大和田宏美3 (1.南相馬市立総合病院, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究科, 3.仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科)

キーワード:応急仮設住宅居住高齢者, 身体活動量, QOL

【はじめに,目的】

東日本大震災が発生して4年以上が経過したが,福島県南相馬市では平成27年4月現在で,4,974人の市民が応急仮設住宅(以下,仮設住宅)に避難している。そのうち2,093人(約42%)が65歳以上の高齢者となっている。長期化する避難生活において高齢者の閉じこもりや生活不活発病が問題視されている。本研究の目的は,仮設住宅居住高齢者の活動量を1日の平均歩数により計測する身体活動量と運動機能およびQOLについて調査することである。

【方法】

南相馬市の仮設住宅居住者62名(年齢76.9±7.2歳)を対象とした。調査は平成26年12月から平成27年1月に実施した。身体活動量は,3軸センサー活動量計e-style2(スズケン社製)を用い対象者の7日間の1日平均歩数を測定した。運動機能評価は,膝関節伸展筋力,握力,Timed Up and Go test(TUG)を測定し,QOL評価は,健康関連QOLの指標であるSF-36を用いて評価した。活動量計から,対象者を1日平均歩数が4,000歩以上と4,000歩未満の2群に分け比較検討した。統計学的解析は,SPSS ver.21。(IBM)を用い,2標本t検定,Mann-Whitney検定を行い有意水準は5%とした。

【結果】

対象者の1日平均歩数は4,370±2,960歩だった。4,000歩以上の群は29名(男性9名,女性20名,歩数6746.8±2495.6歩,年齢74.8±5.99歳),4,000歩未満の群は33名(男性10名,女性23名,歩数2133.5±937.3歩,年齢78.6±7.9歳)であった。4,000歩未満群と4,000歩以上群を比較し,年齢,BMI,TUG,膝伸展筋力で有意差が認められた(p<0.05)。また,QOL評価では,SF-36のサブカテゴリの身体機能,日常役割機能(身体)・(精神),活力において有意差が認められた(p<0.05)。

【結論】

仮設住宅は,震災前の地域のコミュ二ティを配慮し,集会所などの機能も集約するコンパクトシティである。そのため,加齢による遠方への外出の機会の減少とともに,近隣への移動に歩数を要さず,日常的な移動手段である自家用車や巡回バス利用なども身体活動量の減少に寄与している可能性が示唆された。さらに,仮設居住高齢者では,震災から4年経過した現在も生活再建に踏み切れない方々も多く,今回の調査結果からも,今後の生活再建に対する不安が活力やQOLの日常役割機能の低下を招き,身体活動量減少にも影響していることが考えられた。近年では運動機能などの個人要因だけでなく,周辺地区の環境が身体活動量に影響を与えていることも報告されており,今後は生活環境と身体活動量を合わせた評価が必要であると考えられる。